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7

翌日からマルコは毎日、

繰り返し言われたことを実行した。

ぎこちない動作と態度も一週間もすれば、

慣れたもので、相手と笑顔で挨拶を

交わすようになった。


 夜になれば、マルコは毎日のように

オリガを求め、性交に溺れた。

若いマルコは簡単にオリガの身体に夢中になり、

いつのまにか英雄を志した気持ちは

心の片隅へ追いやっていた。


毎日の日課をこなしている時、

マルコは、久しぶりにドルチに話かけられた。


「勇樹様、ご機嫌いかがでございましょうか?」


「ドルチか。まあよい」


ドルチはすっと近づくとマルコに耳打ちした。

「今から寝室に戻りなさい。

次のステップを指示します」


マルコは何事もなかったように歩き、

寝室に向かった。

マルコが寝室に到着した時、既にドルチは

そこで待っていた。


「ドルチさん、今日はどうしましたしか?」


「ええ、次のステップに進もうかと思いまして。

今の行動はそのまま、続けてください。

どのみち何の仕事もないので、時間はあるでしょう」


マルコは頷いた。


「では次に適当な時間帯に訓練場で

剣を振って訓練している素振りを毎日しなさい」


「えっでも俺、剣術なんて大したことないし」


仮面生活に内心忸怩たるものは、

ほんの僅かだがあったが、

それ以上にマルコは今の生活を失う事が

恐ろしかった。

訓練で馬脚を露す事に心の底から心配した。


「心配無用です。

すでにあなたの身体はぼろぼろで

まともに戦うことも剣を振ることも

できないことになっています。

それに勇樹はこの国の剣技でなく、我流です。

一生懸命、適当に剣を振るっていればいいのですよ」


「はっはあ」

マルコはどうも気乗りしなかった。


「勇樹殿、いやいやマルコ、

あなたはここで事が露見すれば、

とんでもないことになるのはお判りでしょう。

勇者殿の偉業を掻っ攫い、

美食美酒を好き放題に喰らい、

王女の身体を赴くままに貪る。

バレれば、死んだ方がマシ

というような罰を与えらえるでしょう」


「いやでもそれは、

ドルチさん、あなたがそれを」


ドルチはマルコの発言を遮った。

「私は何の利益も享受しておりませんよ。

臣民はあなたが勇樹の受けるべき賞賛、栄華を

盗んだと思うでしょうねぇ」


マルコは暫く目を閉じていた。

「わかりました。何とかやって見ますが、

バレないようになんとかしてください」


「ふふふ、それはご心配なく。

あなたも荷役とはいえ、一端の冒険者として

数年を過ごしているんですよ。

それなりに見栄えの良い身体はしています。

そうだ!汗をかいたら、上半身裸になるのも

良いでしょう」


マルコは頷いた。


ドルチより指示されたことを

忠実にマルコは実行した。

マルコは一心不乱に闇雲に剣を振るった。

剣を振るっているときは、余計なことを

考えずに済んだ。

そして、息を切らし、訓練場の側の草むらの上に

大の字で寝転がった。

訓練場にいる騎士たちは、好奇と猜疑の目で

遠巻きにマルコを観察していた。


 訓練を開始して5日ほど過ぎた頃、

他の騎士に比べて、一際いかつく歳を重ねた騎士が

話かけてきた。

「毎日、精が出ますな」


「これしかできないから」

マルコは手を休めて、短く一言だけ

伝えると再び剣を振り始めた。


「そうですか、やはりそうでしたか」

その騎士は独り言を残して、その場を去った。


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