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翌日、マルコは再び国王に呼ばれた。
そして、褒美の話となった。
「勇者、勇樹よ。
望むものがあれば、申し伝えよ」
国王の重厚な声が大広間に響いた。
前もってドルチより説明を受けた通りの所作を
ぎこちなくこなし、マルコは望みを伝えた。
「王女オリガ様を娶りたく。
それとこの世界に召喚された仲間たち
30人を元の世界へ送還して頂きたく」
大広間が騒めいた。
国王はそれを手振りのみで黙らせた。
「よかろう。そちの望みを受け入れよう」
国王は満足気に立ち上がり、大広間を去った。
その後、大広間では、様々な話で盛り上がっていた。
「勇樹がオリガ様の噂を知らぬ筈はないのだがな」
「聖女を失って、悩乱したとしか思えん。
よりよってあのオリガ様とはな」
「流石にそれは言い過ぎだろうよ」
「いやいや流石に浮名を流し過ぎだろう」
「まあ一つ言えることは
互いに好き者だってことだな」
貴族達は、王位継承権第4四位の
王女オリガのよろしくない噂を良く知っており、
勇樹になり変わっているマルコの望みを嘲笑した。
マルコとオリガの婚約はとんとん拍子に進み、
臣民に発表された。国王の臣下に誰も反対する者は
皆無であった。
オリガを降嫁させられて、押し付けられる
リスクがなくなることで、むしろ祝福された。
しかし、王位継承権第1王子ビリブだけは、
オリガに向けて猜疑の目を向け、周辺を取り巻きに
調べさせていた。
婚約が発表されると直ぐに結婚式の運びとなった。
列強各国が参加し、国を挙げの盛大な結婚式が
催された。
祝宴は何日にも及び、2人に祝言を述べる列は
宴が終りを迎えるまで尽きることなかった。
祝宴の終わりの夜、マルコとオリガは初夜を迎えた。
しかし、2人は初夜を迎えるような雰囲気ではなかった。
マルコは椅子に座っていた。
その前に仁王立ちで、マルコをオリガが
睨みつけていた。
マルコは萎縮して、オリガの言葉を待った。
「今回はいいでしょう。
しかし、国賓を前にあの小物のような態度、
次は許しません。ドルチからしっかりと
学びなさい」
一息ついて、オリガは続けた。
「召喚者たちはあなたを観察していましたね。
元の世界に戻すことができないなら、
あれらは邪魔でしかありません。
始末しましょう。
それとあなたの身辺をビリブが探っています。
注意なさい」
マルコはとりあえず頷いた。
無論、単にオリガの癇癪を緩和させたいためだった。
実際のところ、マルコは、召喚者たちを
どのように始末すればいいのか見当が付かないし、
どのように注意するのか分からなかった。
オリガはマルコのそんな気持ちを見透かしていた。
「頷きましたね。
どうするのか方策があるのでしょう。
説明なさい」
語気が強まったオリガからマルコは
視線を床に落した。
マルコは声を震わせながら話した。
「ドルチに言って、全員、殺して貰います。
怪しい奴らに近づかないようにします」
オリガは髪を掻きむしりながら、呻いた。
「あーあっーああー。この馬鹿め。
所詮は単なる身代わりかよ」
荒げた息を落ち着かせるとオリガは、
ため息混じりに話を続けた。
「簡単に殺すと言ってもどうやって?
ただ言うだけじゃないでしょうね。
怪しい奴ら?
おまえはそれをどう判断するんだ?」
マルコはまごつくだけで
何も答えることができなかった。
「ふん、もういい。おまえは黙っていろ。
それと明日から背筋を伸ばして、
宮廷の至る所に顔を出せ。
人に会えば、立ち止まり、口元に微笑を浮かべて、
頭を軽く下げろ。それだけをやればいい」
マルコは顔を覆うマスクの方を見た。
すると別のマスクをオリガがマルコへ
向かって放り投げた。
「これを使えばいい。
一応、魔力干渉防御がかけてある」
マルコは頷いた。
「ふん、まあいい」
オリガは乱暴にマルコの首根っこを掴むと
薄い天幕に覆われたベッドに向かい、
性に耽溺した初夜を過ごした。




