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翌朝、マルコは朝早くに目覚めた。

寝覚めは最悪だった。

顔のべたつきが気持ち悪く、仮面を外して、

顔を洗いたかった。

幸いにも部屋には誰もいなかった。

ベッドの横には、手拭と水の入った盆が置いてあった。

注意深く周囲を観察して、マルコは仮面を外して、

顔を洗って、手拭で顔を拭いた。


「ふううう」


マルコは大きく息を吸って吐いた。

外した仮面を再び装着する気になれなかった。


ガチャリとドアの開く音がした。

マルコは慌てしまい、仮面を落としてしまった。

侍女が1人、入室してきた。侍女と目が合った。


「うわわわわあ」

マルコは叫びながら、両手で顔を覆った。


「勇樹様、申し訳ございません」

侍女はすぐさま頭を下げて、退室した。

マルコはすぐさま仮面を装着した。

部屋の外から、断末魔のような奇妙な声が聞えた。

マルコは恐ろしくなって、ベッドに潜り込み頭を抱えた。

何も知らないし何も聞えない。

そう何度も念じているうちに再び眠りに落ちた。


マルコの翌朝の目覚めの気分は最悪だった。

目覚めと同時にドルチの顔が目に映った。

そして、目覚めの挨拶がそれに拍車をかけた。


「おっおはようございます、ドルチさん」


「おはようって、そんな気分じゃないことは

おまえも分かっているよな。

お前のお陰で何の罪もない女が

1人、死んでるんだ。

ここの領主様も不運なことだ。

まさか英雄、勇樹様の使用人が

1人殺害されたなんて、とんだ醜聞だな。

どう責任を取らせるかな。

そうだな忠誠を示して貰う為に辺境伯の娘を

一人王都へ人質として献上して貰うか」


マルコは一瞬、ほっとした表情をした。

それを見逃すほどドルチは甘くなかった。


「くそが。それで終わると思ってるのか。

辺境伯は元々中立派だ。

我らが陣営に忠誠を誓うように

きっちりと追い込むんだよ。

いいな、場合によっては奴の娘を

利用して追い込む」


如何に勇樹と錯覚しようとも根底にあるのは、

臆病、卑屈なマルコであった。

震えながら、頷くばかりだった。


カートライト辺境伯の領地における勇者の評判は、

上々のものばかりであったが、よくよく耳を傾け、

盗み聞きすれば、それらの評判に混じって、

取り締まる程でもないが下世話な噂が混じっていた。


健康を取り戻したマルコは、

早速、魔物や野盗を倒して、

その帰還に歓声と好奇の視線を送る住民へ

馬上からにこやかに微笑み、手を振った。

しかし、飯の種の大半を持ってかれた

一部の底辺冒険者たちからは、

敵意の視線が送られていた。

彼等は冒険者ギルドに残る遠方で

割の合わない依頼票を眺めながら、

彼等はため息混じりの愚痴を零していた。


「ったく勇者様も余計な事をしてくれるわ」


「ああ確かにな。

それにしてもこれからどうする。

あまり、銭は残ってないぞ」


「下水道のどぶさらいや

ごみの処理の仕事をすることに

なるかもな」


冒険者たちは乾いた笑い声を上げていた。

しかし、それで状況が良くなることはなく、

直ぐに暗い表情になった。


「勇者様にも困ったことですね。

世情を理解せずにやりたい放題。

それも魔神を討った報酬と考えれば

仕方ありません」


「なんだよ、藪から棒に。お前誰だよ」


「ふふふっまあ、あなた方と

似たり寄ったりの者です。

勇者様のお陰でとばっちりを

受けた者ですよ」

全身をフードに包まれていたが、

声色から若い女性のようであった。


「ふん、おまえさんもか。

まあ、愚痴っても仕方ないな」

冒険者たちがどぶさらいの依頼票を取ろうと

手を伸ばした。

その手が白くほっそりとした手によって遮られた。


「今までこの辺境の地を守って来た冒険者様たちが

そのような仕事にする必要はございませんよ。

どうですか?私の依頼を受けてみませんか?

悪い話ではないですよ」


冒険者は白い手を振り払った。


「依頼があるならば、ギルドを通して貰おうか」

「そうだな。それがいい」

冒険者たちは、その申し出を拒否した。


「あらあら、同じことをしても

片や拍手喝采を受けて、片やそのとばっちりで

惨めにどぶでヘドロと異臭にまみれて

日銭を稼ぐ。どこで途を誤ったのやら」

見下したような笑い声が冒険者たちを刺激した。


「表に出ろ。世間の厳しさを教えてやる」


「ふふふっ。三流は、脅し文句もありきたりですね。

いいでしょう、ここでは話もしにくいでしょうから、

場所を変えましょう」


「逃げるんじゃねえぞ」

激怒した冒険者たちはフードに身を包んだ女性を

囲むようにして、ギルドを出た。


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