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街の片隅で一人の女性を
複数の荒くれ者たちが囲んでいた。
「おうおう、仕事は受けてやろう。
だが報酬はてめえの身体で払って貰おうか」
女性のローブを荒々しく掴み、
乱暴に引き寄せようとした。
「まあ、なんてお馬鹿なんでしょう。
こんな片隅にのこのことついてくるなんて」
女性が冷笑した。
無論、それが冒険者たちを刺激した。
「あーめんどくせー。
それにしても楽しんでじゃねえぞ。
その内、大火傷するぞ」
その声は冒険者たちの声ではなかった。
冒険者たちは奇妙な声を出して、
腹部を抑えて、その場に崩れた。
「おいおい、こいつら本当に役に立つのか?」
「さあ?委員長の指示だし、
取り敢えずやっておかないと
後々、面倒でしょ」
「くはははは、確かにそうだな。
それにしても委員長の指示とは
随分と違うが本当にいいのか?」
「知らないわよ。
あの鉄面皮、偉そうに指示して。
それよりさっさと済ましましょう」
そう言うと、その女性は冒険者たちに
視線を向けた。
「それなりの金は払うわよ。
あんたらがするのは、
大したリスクもなくちょろい仕事よ。
ただし、サポタージュしたり
裏切ったりしたら、容赦しないわよ」
「おお、怖い怖い」
相方の男はおどけて言った。
一睨されると一瞬で黙った。
「仕事の内容は何だよ?」
脂汗をかく冒険者たちは、恐る恐る尋ねた。
「簡単なことよ。
事実をそれとなく酒場で
酔っぱらっている連中に囁くだけよ。
そうあのニセ勇者様についてね」
その女性は、蠱惑的な笑みを浮かべていた。
冒険者たちはただただ頷くだけだった。
マルコはドルチと一緒にカートライト辺境伯、
そしてその娘と同席して昼食を取っていた。
その雰囲気はお世辞にも和やかな雰囲気とは
言い難かった。
「お味のほうは、如何でしょうか?
何分、辺境故に王都ほどの食材と
料理人に恵まれておらず、
お口に合えば幸いです」
辺境伯の言葉にマルコは笑みを浮かべて頷いた。
辺境伯はほっとしたような表情であった。
一方、ドルチの表情は曇りぱなしであった。
そして、カーライトの娘は、
緊張の極致のためか、カタカタと震えていた。
当たり障りのない会話を挟みながら、
会食は終わった。
一足先にカーライトの娘は退室した。
「娘は、親元を離れて過ごすにはまだまだ幼いかと。
もう少し成長して、王都で過ごすのが
娘のためになると考えております」
カーライトの言葉は、辺境伯としてでなく、
父親のそれであった。
マルコも最もだと思い、自然と頷いていた。
マルコの頷きでカーライトに笑みが浮かんだ。
「それで。それがどうした?」
マルコの隣から冷たい声が漏れた。
マルコは驚いてその声の方を見た。
「既に条件は示したはずだ。
なかなか美しい娘だな。
将来、さぞかし社交界を賑わすだろう。
その前に勇樹の側室に配されるかもな。
ただそれだけの話だ」
カーライトは、その言葉が聞えていないかのように
笑みを崩さずにマルコに話しかけた。
「勇樹様の侍女には大変な残念なことになりました。
十分に我々は対応いたす所存でございます。
それにしてもこのようなご不幸はなるべく事が
公にならないことを互いに望んでおります。
互いにでございます」
最後の言葉に幾分強い力が籠っているように
マルコは聞えた。
そして、マルコはカーライトの言葉に
自然と納得していた。
しかし、その隣に座るドルチから囁かれると、
マルコの気持ちは一変した。
「王都ではさぞかし楽しめしょうだな。
中々、器量の良さそうな娘だな。
おまえが羨ましいな。
あのような娘を王都で気のすむまで
抱けるんだからな」
マルコは下腹部に熱い鼓動を感じた。
そして、心臓の動悸が早まるの感じた。
落ち着かなく視線が左右に動き、
カーライトの娘が去った後を無遠慮に眺めていた。
マルコのその姿を見たカーライトは、
落胆と失望を感じた。
そして、カーライトは隠そうともせずに
侮蔑を含んだ視線を送った。
「性欲にまみれた禽獣が」
カーライトの呟きにマルコは気付かなかった。
無論、ドルチは気づいていたが、
冷笑を浮かべるだけであった。
カーライトの最後の抵抗と交渉は、
マルコの性欲の前にあえなく潰えた。
カーライトの娘の運命は今日ここで
最終の審判を下された。王都に人質、
そしてマルコの将来の愛人として
連れらえていくこととなった。
マルコは、侍女一人と引き替えに
辺境伯の協力と美女を得ることができた。
しかし、政治的なことは分からないマルコは、
美女を得られたことでご満悦だった。




