31
「不幸にも魔物に首を飛ばされたホニィの死体は、
レガリアス聖王朝の探索隊によって確認された。
さてさて、怜人と呼ばれた賢者、健二と呼ばれた戦士は、
どう判断されたのだろうな。
その戦いの激しさの痕跡から肉体が消滅したのだろうと
判断された。
聖女たるレイニィは、当然、あのクリスタルだ。
さてさて、ここで何の話にもあがらない荷役のマルコだ」
「ちょっと待て、ホニィの死体は、
勇樹の死体とは別に見つからないように
埋めたはずだぞ」
「フフフ、そうでしたな。
そうその場所を知っているのはあなたと私。
聖王朝の重鎮から厳しく二人の荷役の
行方について詰問されました」
変わらずの笑みを浮かべるドルチだった。
「激しい詰問の末、私は聖王朝に
情報を提供したのですよ。
ホウニィの死体を埋めた場所を。
そして、もう一人の荷役についてもね」
マルコは、呼吸が乱れ、
心臓の鼓動が早くなるのを感じていた。
マルコは続きを促した。
「無論、死体などいくら探しても
見つかることはありませんし、
探しても見つかる訳もない。
私は必死に考えたのですよ。
もう一人の臆病で狡猾な荷役の行く末をね。
マルコという男に似合う未来は、こうあるべきだと。
そして、伝えました」
マルコはごくりと唾を飲みこんだ。
「はっ早く話せ」
「勇樹様、仲間の事ととはいえ、落ち着きなさい。
そうあの男は魔神の城を前に荷物を放置して
逃げ出したと伝えました。
我々、一向は魔神の城を前にそのことを
些末なことと判断し、探しもしもせずに
放置したと説明をしたのです」
マルコの頭は真っ白になって、
ふらふらと揺れていた。
ドルチはこの上もなく愉快そうな表情をしていた。
「くくくっ聖王朝の重鎮がどう捉えたのは、
あの村の惨状を見れば明白だな。
魔神を前に逃亡。
本人は見つかる訳もなく、
その罪は、マルコの育った村が
背負ったということだな。
くくくっまあ、聖王朝の英雄たる勇樹様には、
途中で逃げ出した男の話など
気にも留める必要はないことだろう」
マルコは、ドルチに押し倒された。
マルコは、力なく地面に転がった。
「英雄様、あまり無様な姿を晒すなよ。周囲が幻滅する」
ドルチは深い闇の中へ消えていった。
闇の中にはピクリとも動かないマルコが転がっていた。
翌朝、マルコはリサによって発見された。
高熱を発しており、馬車に運び込まれた。
行幸の途中であったが、マルコの病状が優先されて、
行幸の日程が変更された。
近くの地方貴族の居城に運び込まれた。
数日、逗留するもマルコの病状は
一向に回復する兆しを見せなかった。
「僕は、ぼくは一体、誰なんだ」
マルコのうわ言に都度、リサが答えた。
「世界を救った英雄、勇樹様でございます」
マルコは、朦朧とした意識の中でリサに言葉に頷いた。
マルコの容態は回復の兆しを見せなかった。
一行は、急遽、近場の辺境領主の元で療養することにした。




