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マルコとドルチが首都の正門を
くぐると歓声が起きた。
ドルチによって既に魔王の撃破と
勇者の帰還が伝えられていた。
首都の側の小さな村で王朝の役人により
迎え入れられると、すぐさま屋根なしの
華やかな馬車に乗せられて、
王城へ向かって出発した。
道は歓声と笑顔で溢れていた。
ごく一部、マルコの付けている仮面に
疑問を呈する声も上がっていたが、
人々の興奮の渦にかき消された。
マルコはドルチに促されて、
民衆に向かってぎこちなく手を振っていた。
内心、バレること恐れて、小刻みに震えていた。
群衆からの多くの視線の中から
非常に強い視線をマルコは感じた。
マルコが視線の先を探ると、女性らしき人物が
街の奥へ姿を隠した。
「気にすることはありません。
あれは召喚された者たちの一人に違いありません。
恐らくこっそり様子を見に来たに違いありませんよ。
それより堂々たる態度を崩さないように。
何と言っても魔王を封印し、
世界に平和をもたらしたのですから」
ドルチが耳元で囁いた。
マルコはただ頷くだけだった。
王の住まう城の城壁をくぐると、
そこには民衆の代わりに下級の文官、
武官が盛大な歓声でマルコを迎え入れた。
しかし、30人ほどの一団から
強い様々な視線をマルコは受けた。
その一団から少し離れた場所で
マルコを運ぶ馬車が止まった。
内心でマルコはいらざることをと
馭者を罵った。
「勇樹、無事で何より」
「勇樹、他の仲間はどうしたんだ?」
「おいおい、その珍奇な仮面はなんのギャグだ?」
元々、ドルチとはこのような場合を想定して、
対策済みだった。
しかし、実際に異世界召喚者たちから
声をかけられたマルコは戸惑ってしまった。
「すっすまない、みんな。
喉をやられてしまって、声が上手く出せないんだ」
小さく掠れた声でマルコはそれだけを
異世界召喚者たちに伝えた。
その後は何を言われようとも頷くか首を振るだけだった。
ドルチは馭者に向かって馬車を出す様に促した。
「あの者たちとには極力近づかないように。
何人かあなたに猜疑の目を向けていました。
どうにもあなたのことを疑っているようです。
何もせずに王城に引き籠っていたごく潰しどもです。
救国の英雄に向かって失礼なことです」
「そっそうだな。
勇者たる勇樹の僕に失礼だな。
立場を弁えて貰う為に少し折檻が
必要かもしれない」
「そうそうその調子です」
ドルチは嬉しそうににやりとした。
国王の待つ大広間にマルコは、
身体を洗うことも無く、
着替えることも無く、
すぐさま向った。
国王を前にして、マルコは片膝を付き、
腰を落とした。
左右に並び立つ上級貴族たちがざわめいた。
絶対に膝を折ることなく国王と
相対していた勇樹が国王に向かって拝跪した。
そのことに驚きを隠せずにいた。
国王は満足気であった。
「よい楽にせよ、勇樹」
国王の言葉で大広間は、静まった。
本来なら外から大広間に流れ込むそよ風は、
心地よいもののはずだったが、
今日は勇樹から漂う臭いを
国王含む居並ぶ者たちへ平等に送った。
何人かはその腐臭に眉を顰めた。
国王の隣に立つ王位継承権第1位の王子は
不快な感情を露わにしていた。
それに対して王位継承権第4位の王女は
ほがらかな表情であった。
「その鎧の返り血は、魔王のものかな?」
マルコは頷いた。
「そうか他の仲間たちは如何した?」
「魔王との戦いで命を落としました」
マルコは短く答えた。
「そうかそれは残念なことであるな。
勇者勇樹よ、そなただけでも無事に
帰還できたことを嬉しく思う」
「事の顚末についてはドルチより
お聞きください」
マルコは床を見つめて、できるだけ
国王と視線を交わすことを避けた。
もしかして世間を騙そうとしてる???




