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ある夜の野営地でマルコは、
暗い森の茂みに紛れて、リサを抱いていた。
闇の中であったが、どうにもマルコは
茂みの在り様に違和感があった。
そのため、どうにもリサを抱くことに
集中できなかった。
「勇樹様、どうされました?」
「いやちょっと、ごめん。少し休もうか」
「えっあの何か粗相がありましたでしょうか?」
暗がりのため、はっきりとリサの表情を
見れなかったが、その声色からリサが
悲しんでいることをマルコは感じた。
「いやちょっとこの茂みが気になって」
「茂みがですか?」
「どうも自然な感じがしないんだよね。
何ていうか何かを隠すために
人為的に作られているというか、
見覚えがあるというか」
「それなら、勇樹様、明朝に
ご確認をしては如何でしょうか?
今は、深夜で闇が最も強い時刻でございます」
木の幹へついていた手を離して、
マルコの方へ振り返った。
そして、震える身体をマルコに預けた。
「闇が人を飲みこむようで恐ろしいです」
「大丈夫、僕がいるから」
マルコは、力強くリサを抱きしめた。
リサの吐息を耳元に感じると、
マルコはリサ以外のことを
考えられなくなってしまった。
二人の熱い吐息と二人の周囲で
擦れ合う草木の音が闇の中に響いては消えた。
翌朝、マルコは起きると直ぐにドルチに話かけた。
「ドルチ、この周辺の地図を見せて欲しい」
ドルチは無言で地図を広げて、今いる場所を示した。
「えっここは」
マルコは地図を凝視した。
「ここに確か村があったと思うけど」
マルコは恐る恐るドルチに尋ねた。
「地図にないものはございません」
ドルチの答えはにべもないものであった。
「いや絶対にあった。間違いない」
マルコは地図から視線を話さずにドルチに断言した。
マルコの視線が捉えている地図の場所には
村があることを確信していた。
マルコは自分が違える訳ないと断言できた。
なぜならそこはマルコの生まれ育った村、
そして親の住んでいる場所であった。
マルコは、ドルチとの話を中断した。
そして、大声を出した。
「待て、もう少しここに留まる。
出立の時間を延ばす」
皆の視線がマルコに集中した。
その視線の中では、ドルチには、
どうすることもできなかった。
「この周辺を少し探索したい。
ドルチと幾人かの騎士が僕に同行してくれ」
たかだか数年前の記憶だった。
偽装された木々や葉を取り覗くと、
当然、マルコは一歩一歩目的地に向かって
自信をもって踏み出した。
暫く歩くとマルコの目の前に廃村が現れた。
風化の状態からそれは10年、20年と
経っているようには感じられてなかった。
焼き焦げた数々の家屋の跡は、
村人に放置されたものでなく
何者かの襲撃を臭わせていた。
「こっこれは一体、どういうことだ」
マルコは呟くと重苦しい表情で走り始めた。
マルコは生まれ育った村に
良い思い出などこれっぽちもなかった。
苦い思い出ばかりだった。
跋扈する魔物に怯え、毎日の食事に事欠き、
更に冬場は寒さに震えていた。
マルコだけでなく村人の大半がそうであった。
家屋や荒れた道には誰とも分からない骨が
転がっていた。どの骨も所々、欠けていた。
森の獣や魔獣に貪られたのだろう。
マルコは眉を顰めつつも
自分の生まれ育った生家の前に立っていた。
そこは他と同じであった。
焼けた家屋の中に辛うじて幾つかの骨を
確認できた。
立ち尽くすマルコの真後ろにドルチが立っていた。




