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翌朝、豪奢な馬車の中でリサを
始めとして数人の使用人に囲まれて、
寝転がるマルコだった。
約100名の騎士団を率いて、地方を巡り、
ちょっとした困りごとや野盗、魔物を討伐して
巡業する予定だった。
重税にあえぐ臣民だったが、
治安はそれなりに安定しており、
危険は皆無な旅だった。
訪れる地域もオリガと繋がりのある貴族の所領が
主であった。
「ふぁあああ、もう王都は出たかな」
「まあ勇樹様、おはようございます」
マルコは頭部にリサの柔らかい太腿の感触を
感じていた。そして、徐に太腿を撫でるマルコだった。
むくりと膨張した下腹部に苦しさを感じた。
「勇樹様、お戯れが過ぎます」
マルコはちょっと意地悪をしたくなった。
長いスカートの中に右手を忍ばせて、
直接、内腿に右手を這わせた。
「いけません、勇樹様。
他の侍女が見ておりますし、
その、その外には護衛の騎士団が
並走しております」
「リサ、そういっても
随分とこの辺りは汗ばんでいるけど」
「いや、駄目です」
リサが両手でマルコの右手を強く握った。
拒否られて、マルコは余計に興奮した。
「カーテンを閉めれば大丈夫だよ」
マルコの右手は、更に奥へ進んだ。
「いや」
一瞬、リサの瞳の奥底に
荷役時代に向けられた冒険者たちの視線と
同じものを感じだ。
それはほんの一瞬だったが、確かにマルコは
侮蔑の視線を感じた。
慌ててマルコは居住まいを正した。
「あっ、ごめん。ちょっと調子に乗り過ぎたかな」
マルコはカーテンを開けると、
外の日差しを目一杯に受けた。
そして、大きく身体の節々を伸ばした。
小休止の毎にマルコは
雑念を払うように剣を振るった。
普段、あまりマルコと接点のない騎士たちは、
当初、マルコのその行動に奇異の視線を送っていた。
栄華を極めた者にありがちな驕りはそこになく、
大半の力を失って尚、愚直に剣を振り続ける勇者の姿に
旅の半ばで騎士たちは、尊敬の念を
抱くようになっていた。
「勇樹様、ご一緒してもいいでしょうか?」
一人の騎士の問いにマルコは笑って答えた。
「いや、構わないけど、無理ない程度にね。
休憩を取ることも大切だからね。
そうだね、昼食後や夜営の時なら、良いと思うけど」
「はは、ありがたきお言葉。
勇樹様とご一緒できたことは、
我が家への土産話になります」
勇樹は口元に笑みを零した。
「それは良かった。
今は力を失ってこんな感じだけど、
できれば、家族には勇者はかっこよかったと
伝えてくれると嬉しいな」
騎士たちも笑った。
「それはもちろんでございます」
マルコの態度は、謙虚であったが卑屈ではなかった。
そのことが騎士たちの尊敬と好感となっていた。
マルコは旅を通じて、騎士たちの友誼を自然と結んでいた。
勇樹殿、勇樹様、誰もマルコの名を呼ぶ者はいなかった。
立ち寄った村や町の人々は、歓声を上げて、勇樹の名を連呼した。
勇樹と呼ばれることを当たり前のように錯覚し、
マルコは、ごく自然に対応した。
まるでそれは、マルコ自身がマルコであることを
忘れているようであった。
マルコの行幸は今のところ大成功であった。
村や町の困りごとを勇者が率先して、解決していく。
暗い世に人々は一筋の希望を見た様に感じていた。
行幸のルートは、ドルチに任せきりであり、
どこを進んでいるかなどマルコは、気にも止めなかった。
事実として、やることが多過ぎてそんなことに
気を回すほどの余裕もマルコには、なかった。
昼は、騎士や民と多くの言葉を交わし、
夜は、リサを始めとした使用人を順繰りに
抱くことに忙しかった。




