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「面白くない話だ」


「どうかしましたか?ドルチさん」


「地方に不穏な噂が広がっている。

人為的に噂を広めている痕跡がある。

しかも看過できない噂もある」


昔のマルコだったら、ドルチを前にして、

まともに会話が成立していなかった。

しかし、今はドルチを前にしても

臆することがなかった。


「それはどんな噂で

どう対応して貰えるんですか?」


「少しはお前で考えろ。

俺はお前のお守りじぇねえんだよ。

まあいい話を続けるぞ」


マルコは軽く頷いた。


「一つはオリガの宿した子が

勇樹の子でないことだ」


「そうですね。その通りだと思います」

マルコは普段と変わらない声と態度で答えた。


「そんなことは先刻承知だ。

それが醜聞として広がっているのが

まずいんだよ」


マルコは両手を挙げて、

さてどうしたものかというゼスチャーをした。


「まあそちらは婚姻で落ち着くとみている」

「それは良かった」


「もう一つがヤバイな。

今の勇樹はその名を騙る偽物だ。

この噂には作為的なものを感じているが、

どうも噂の出所が掴めない。

多分だが、諜報に長けた連中が関与している」


マルコは再び両手を挙げて、さてどうしたものか

というゼスチャーをした。


「てめえ、舐めてんのか。

地方を行幸でもして、適当に魔物でも狩って回れば、

勇者勇樹健在を深く印象付けられるな。

そうすれば、こんな噂は自然に淘汰されるだろう」


「それに加えて、ドルチさんが

部下を使って噂を誘導するんでしょ」


「カカカッ、分かってきたようだな。

婚姻後、おまえは一人で行幸の旅に

出すことになるだろう。

まあ、この件の対策だけが

理由ではないけどな

それには俺も同行する。司は同行させない」


「分かりました。

リサと幾人かの侍女を帯同させて

貰いたいですが、お願いします」


「まあ、その程度は

身の周りの世話役ってことでいいだろう」


マルコには行幸の詳細を

決めるような知識も経験もなかった。

実務全般をドルチが行う。

彼の計画に則り、マルコはそれに沿って

動くだけが彼に課せられた仕事だった。


オリガとマルコの結婚式は盛大に催された。

急であったが、三日三晩、贅を尽くした催しが

行われた。


近隣諸国だけでなく遠方の国々からも

使者が続々と集まり、2人に祝辞を述べた。


名実ともにマルコとオリガが

この世界の頂点であり強大な国家であることを

集まった諸国の使者に印象付けた。


各国の使者は無論、王朝の街道沿いの街や村を

当然の如く観察していた。

村々に山のように積まれた祝賀の酒や食料を

目の当りにしていた。

それはこの国の隅々まで行き渡っている様だった。

見栄でここでのことは不可能だったと多くは

判断した。

そしてそれは、レガリアス聖王朝の

財力の一端を示していると錯覚した。

その上、城下で使者を迎え入れた騎士団と

魔術師団の精強さが彼らを等しく圧倒した。

財力と武力、一国で王朝に抗することの無謀さを

十分に理解させていた。


玉座に座るマルコは終始、口元に笑みを浮かべ、

各国の使者の言上を聞いていた。

しかし、その大半は上の空であった。

諸国の使者は、言葉を変え、手を変え品を変えていたが、

結局のところ、どれもが本質は同じであった。

オリガも笑みを湛えて、彼等に答えていた。

しかし、彼女は部下を潜ませて、使者の言葉を

全て記録に残していた。

それどころか会場の隅々まで部下を多数、

潜入さえて、監視していた。

事細かに誰と誰が接触し、どんな話をしたかを記録した。


マルコの知らぬ間に王が亡くなり、

空位となっていた王の座にこの結婚式をもって

オリガが戴冠した。

その時、宴に参加していた者たちの祝福は、

最高潮に達した。


宴が終わりを向え、マルコはやっと解放された。

女を抱く気にもならず、ベッドに転げ込み、

そのまま眠りについた。


その夜、オリガは寝室に現れなかった。


翌日から逐次、帰国につく各国の使者だが、

明日から使者が祝辞以外に持ち込んできた交渉ごとの

最終的な確認を夜通しで行っていた。

マルコは明日、早々に行幸へ向かうことになっていた。

外聞として甚だ悪いが、海千山千の各国の

一線級の使者を前にマルコがへまをすることを

オリガは恐れ、接触を避けさせるための

措置であった。


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