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アイディアを出したものマルコには、
それを実現させるだけの実務能力など
皆無に等しかった。
そしてそれを相談する相手も皆無であった。
オリガとの関係は、彼女が戻ってきて以来、
冷え切っていた。
ドルチを前にすると萎縮してしまい、
協力を求めるどこではなかった。
マルコは、リサとの昼の情事を終えた後に
ダメもとで相談した。
無論、リサから具体的な案は出て来なかった。
「勇樹様は、この国の英雄でございます。
誰に遠慮をなさっているのですか!
思うままに行動すれば皆がついてまいります」
リサがマルコにしな垂れつつ、耳元で囁いた。
それはマルコにとって心地よい甘美な響きであった。
「勇樹様の望んだ平和な世界。
それは今、現実のものとなっています。
これからもこの平和を勇樹様のお力で
保って欲しいです」
上目遣いにリサに見つめられて、
マルコは本当に自分が勇樹のように
魔王と戦って勝利した錯覚に陥った。
「そっそうだね。そうだよ。
この国の平和は僕が守らないと」
「ああっなんて美しいお言葉に声。
私は勇樹様のお考えがこのように聞けて
幸せにございます。
今、この国に勇樹様のそのお声を
知っているのは私と司様、
そして、オリガ女王でございます。
もっともっと国民の知るところに
なればいいのに」
囁かれる言葉とリサの豊満な肢体が
マルコを再び興奮させた。
そして、冷静な判断を狂わせていた。
「勇樹様のお声をよく知る大逆の罪を
犯した召喚者共は、最早、この世におりません。
親友の司様は、いつまでも勇樹様を裏切りません。
勇樹様のお心をもっと勇樹様のお声で
国民に伝えるべきでしょう」
マルコに抱かれ、歓喜に震えながらも
必死に話すリサにマルコの劣情は
最高潮に達していた。
「ああああっ。分かった!
僕はもう遠慮しない!」
マルコは野獣のように叫ぶと同時に果てた。
その隣でぐったりとして、マルコに身体を
預けるリサだった。
口元にはいやらしい笑みが浮かんでいた。
その笑みに含まれた思いをマルコは
知る由もなかった。
その日からマルコは見違えるように
何事にも積極的になった。
それは司が驚くほどの変貌ぶりだった。
「おいおい、勇樹。
そんなに話して大丈夫なんか?」
「ふふふっ。
多少声が変わったくらいで
何を心配してたんだろうな。
僕は僕だろ!」
「まっまあそれならいいんだけど」
マルコの圧倒的な自信に少し圧倒される司だった。
「それより司、例の娯楽の件、進捗はどうだ?」
「あーあれか一応、着々と進んでるぞ」
「そうかそれは楽しみだ。司、頼むよ。
僕にはまだそれを実現する力はないからさ」
「ふーん、今はね」
マルコは司のつぶやきに少し引っ掛かったが、
通りかかった文官に声を出して、
挨拶をしたため、その思いはすぐにかき消された。
若干、背を丸めて、視線を床に落していた
マルコの態度は明らかに変わっていた。
背筋を伸ばし、視線は常に前を向き、
口元には常に笑みが零れていた。
声は明朗ではきはきとしていた。
騎士団とは訓練を通して交友を深めた。
よく魔王を倒した時の旅について聞かれた。
その当時、マルコは勇樹の背中を
常に追っていた。
昨日の記憶のようにその情景は、鮮明だった。
語れば語る程、マルコにとって勇樹との境界線が
あやふやになっていった。
「それにしてもみんな、冒険譚が好きだね」
「勇樹、それはそうだろ。
誰だって救国の英雄の冒険譚を
聞きたいに決まっているさ」
一人の騎士が笑いながら答えた。
「今の話を後世に残しておきたいな。
それほどの功績だしな」
そう言った騎士は真剣な表情だった。
話が予想外の方へ大きくなり、
マルコは笑ってお茶を濁した。




