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騎士との軽い立ち話、それが現実のものとなった。
マルコは数人の学者らしき者たちに囲まれていた。
そして、魔王を討伐する過程を話させられた。
マルコは身振り手振りを用いて、語った。
すぐ傍でドルチが冷ややかな視線を送りながら、
マルコの話を補填した。
この時点でマルコは、勇樹という男が
成したことを自分がしたことと
完全に錯覚していた。
何度目かの話の中で学者の一人が
レイニィについての質問をした。
「大聖女たるレイニィ様への思いは
どうでしょうか?」
マルコは、ほんの少し黙った。
右拳を心臓の辺りに当てて、
天に祈りを捧げる仕草をした。
「彼女のことは忘れないだろう。
だがそれを言葉にするのはこの一回だけだ。
今はオリガという婚約者を愛している」
「無粋な質問を申し訳ございませんでした」
質問を投げかけた学者は頭を深々と下げた。
周りの学者もそれに倣った。
「いやいいんだ」
マルコは勇樹とレイニィの野外での逢瀬を
何度も見ていた。
マルコはレイニィと行為に及んでいたと錯覚して、
勇樹とレイニィの行為を思い出していた。
自然とマルコの下腹部が熱くなった。
学者たちとの話が終わると、
マルコはすぐさま、リサを探した。
見つけると秘密の部屋へ引き込んだ。
「ああっ勇樹様」
マルコに抱かれているリサが叫んだ。
マルコは行為が終わるとリサの髪を
優しく撫でた。
しかし、その表情は悲しげだった。
「どうしたのリサ?」
「いえ、その」
「リサ、はっきりと言って」
「そのあのこのように勇樹様に
ご寵愛されてリサは幸せでございます。
ですが勇樹様のお心には常にレイニィ様が
いらっしゃると思うと、うううっ。
リサはレイニィ様の変わりで
ございますでしょうか?」
目を伏せてマルコの胸元に顔を埋めるリサだった。
マルコは興奮した。
「そんなことはないさ。
僕の心は君でいっぱいだよ」
「ああっ、リサは幸せ者でございます」
マルコは再びリサとの行為に没頭した。
人釣りゲーム、マルコはその第一回目の開催の式典に
オリガを伴って参列していた。
多くの貴族たちがこの式典に招待されていた。
誰しもが詳細を説明されておらず、
期待と不安で式典に臨んでいた。
司が司会進行を受け持っていた。
厳かに進む式典だったが、賭け事の説明を受けた時、
誰しもが思った。
死刑を執行するにしても不謹慎だ。
そんな雰囲気が場を支配していた。
「今日のゲームは、3ゲームだったね。
じゃあ僕は、まず1ゲーム目に6番に賭けよう」
マルコが高らかに宣誓し、
司より賭券を受け取った。
それに何人かの貴族が続いた。
無論、全ては司の仕込みだった。
エントリーされた死刑囚の略歴・罪の説明は
既に終わっていた。
逆さに吊られて、ゆっくりと海面付近まで
頭部が降ろされた。
そして、少しづつローブが降ろされて、
頭部が海面に沈み始めた。
ぴちゃぷちゃぷちゃと吊り下げられた死刑囚たちが
腰を曲げて頭部を海面から引き上げては、
疲れて海面へ頭部を落とした。
その繰り返しは、まさに魚が釣り上げられることに
抵抗しているような姿であった。
ロープが引き下げられるほどに海面は激しく揺れた。
しかし、時が過ぎるにつれて、次第に海面の揺れは
落ち着いて行った。
死刑囚が力尽きはじめたからであった。
どよめきが起きた。
20分が過ぎた頃、一人の死刑囚が腰を曲げて、
その体勢を維持していた。
他の死刑囚は、ピクリともせずに
頭部を海に沈めていた。
「6番の勝利です!6番です。
どうやら勇樹様が当てたようです。
6番に賭けた方はいませんね」
司の声を聞き、マルコは賭券を持った右手を
大きくあげた。
「では賭券と換金しましょう」
司より受け取った金貨を右手で一掴み握って、
再び大きく上げた。
「3回、勝ち抜いた者には、恩赦を与えよう」
死体は、そのまま海に放流された。
勝者は、休息が与えられ、2ゲーム目が
開始された。
多くの貴族たちがゲームにベットした。
そして、大いに盛り上がった。
オリガは眉をひそめて、その状況を見ていた。
2ゲーム、3ゲーム目と大いに盛り上がり、
大金が動いた。胴元は十分に利益を上げていた。
人釣りゲームは、次回の開催を期待する声で
盛り上がり、盛況のうちに終わった。
「勇樹、すげー利益が上がったな。
まっ選手を確保するのが難しいことが
難点だけどな」
「司、一つ案がある」
「どうした?相談にのるぞ」
「貴族席を設けて、一般大衆にも開放する。
それと選手に貴族を何とかして参加させたい。
皆の良いガス抜きになると思うんだ」
マルコの口元に微笑が浮かんでいた。
司との会話が一瞬、途切れた。
「司、どうした?」
「いや、気にしないでくれ。
そうだな、勇樹の言う通りだな。
だが貴族の死刑囚となると確保が難しいぞ」
「その辺りはオリガと相談するのが良いと思う。
彼女が良い生餌を見つけてくれるさ」
マルコの声は興奮していた。
そして自分のアイディアに酔っていた。
隣を歩く司の奇妙な表情に
マルコは気づくことはなかった。




