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23

その日の夕食時、マルコは眠気を

堪えるが一杯一杯であった。

「そこまで必死に訓練に興じる必要も

ございませんでしょうに」

久々に聞くオリガの言葉には棘があった。

しかし、マルコのぼんやりした頭には

それらの言葉が残ることはなかった。


「あなたが陳情に立ち会ったことが

随分と世間で噂になっているようね。

救国の英雄様に面会できたと評判がいいそうよ。

明日からもあなたは、参加なさい。

ただし、陳情の是非には、絶対に口を挟まないこと。

いいわね」


マルコはぼんやりとした頭で頷いた。

翌日、マルコは陳情者の前で

以前と同じように右手を挙げて、

下げてを繰り返した。

何故か隣のオリガがその都度、

鼻をひくつかせていた。

一日の終わりに寝室でマルコは

オリガにぶん殴られた。

ドルチは、暗い笑いを上げていた。

「おまえは国を破綻させるつもりか!

だまって挨拶だけしておけと言っただろう。

なぜ、下民の陳情を全て受け入れる。

あの場で受けてしまえば、

もうやらざるを得ないだろが」


「ゲホゲホ、すみません。

でもみんな笑顔でした」


「おまえは阿呆か!

それを実施するための予算はどこにあるんだ。

もういい、そこの端で反省しろ」


オリガはさっさとベッドで寝てしまった。

ドルチはマルコを一瞥すると、

そのまま部屋から消えた。


マルコは陳情者たちの笑顔を見て、

朗らかな気分になっていた。

お金の大切さは当然、分かっているつもりだった。

しかし、毎日、豪奢な食事を取り、

高価な衣類を着ているのを見ると

お金は溢れているように思えた。

マルコは城に住んで初めて、強く歯を噛みしめた。


「そりゃそうだよ。

勇樹、おまえだって金がなければ、

生活できないだろ」

マルコが昨晩の話をすると、司が笑った。

つられて、なぜかマルコも笑った。


「そうだな、金を稼げばいいんだろ。

手っ取り早く稼ぐ方法はあるぞ。どうする?」


マルコは司の案に飛びついた。


「心配すんな。

俺がおまえを嵌めることなんてないだろ。

まあ、失敗はあるかもだがな」


司は話を続けた。


「なーに、金持ちから金を吐き出させばいいんだよ。

それには二つある。一つはパーティ券を買わせること。

もう一つは、金持ち相手に賭け事を開催することだ」


マルコの人生において、どちらも縁のないものだった。


「俺だってないさ。

でもおれたちの元の世界には、

色々と参考になるものがあるだろ」


マルコは司の話に喰いついた。

無論、司の話し方が面白のもあったが、

なによりもその内容に興味を惹かれた。


仮面パーティとしての酒池肉林、

マルコは興味津々だった。

幻想的な場所での酒、食事、

そして女、最高のパーティだった。



賭け事としての炮烙、罪人を数人用意して、

熱い鉄の棒を抱かせて

最後まで生き残る罪人に賭ける賭博であった。

マルコは少し眉を顰めた。


「炮烙は止めたいな。

臭いと残った死体がちょっと」

マルコの言葉を聞いた司は

少し驚いたようだったが、続きを促した。


「人釣りをしよう。それの方がいい」


「なんだそれは?勇樹、説明してくれ」


マルコは説明をした。

人の両脚を縛り、逆さに釣り、

床に水槽を置いて、少しづつ水を増やしていく。

水が増えれば、人は溺れる苦しさから

逃れるために身体を九の字に曲げるだろう。

それが釣られた時の湖面を叩く魚の様に見える。

いずれ体力の限界を迎えると溺れて死ぬ。

最後まで生き残る人を賭ける。

そして、勝者には、赦免と賞金を与える。


司が心底楽しそうに笑った。

ゲラゲラと笑った。

「おまえ、最高だよ。

この世界に来て、何か変な影響を受けたか?

マジでそれいいな。

俺の伝手を使って、絶対にそれやろうぜ」


「酒池肉林はそれで資金が集まってからかな」


「くくくっお前、最高だぜ。

俺もご相伴に与らせて貰うわ」

最高の笑顔を残して、ご機嫌で去っていく司の背を

マルコは満足気に見送った。


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