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大きな怪我もなくマルコの参加した討伐は終わった。

近隣住民からの熱烈な感謝が伝えられた。

マルコにとって初めての経験ばかりだった。

魔物を倒すことも感謝を伝えられることも

全てがマルコの気分を高揚させた。

そのためか首都への帰途、マルコは

いつになく饒舌になっていた。

たまにドルチからの冷たい視線を強く感じたが、

マルコは意に介せずに騎士たちと話した。


王城の廊下で二人になった時、

マルコは、ドルチに囁かれた。

「フフフ、英雄と讃えられて気分が

随分といいようですねぇ。

あまり調子に乗っていると、足下を救われますよ」


「ぼ、僕はゴブリンを倒して、村を救ったんだ。

決して勇樹の功績を盗んだわけじゃない」

マルコの声は震えていた。


「おうおう、村を出て、荷役しかしてこなかった

小僧が冒険者の端くれのようなことをして、

勘違いしてんじゃねえ。

いいな大人しく俺やオリガ様に従っていろ」


マルコはドルチに首を強く締め付けられていた。

「うううっ」


そこは、人の行き交う城の廻廊、

当然、使用人、文官や武官が行き交う場所であった。

当たり前のように通路の向こうから足音が聞えてきた。

人の気配を感じたドルチは、素早くマルコを

介抱するような素振りを始めた。


「ゴホゴホ」

マルコは俯いて、咳をした。

そのマルコへドルチが囁いた。

冷たく思い声がマルコの耳に貼り付いた。

「はい、にこやかに挨拶」


マルコは何とか笑顔を作って、文官に会釈した。


「これは勇樹様、大丈夫でしょうか?」

心配そうに尋ねられたが、青白い顔のマルコは

身振り手振りで大丈夫なことを伝えた。


「そうですか。

ドルチさまもいらっしゃるようなので、私はこれで」

文官は再び軽く会釈すると、その場を去った。


「はい、よくできました。

それではオリガ様のお待ちしている執務室に

向かいましょう」

マルコの目に映るドルチの表情には、笑みが浮かんでいたが、

目は冷ややかに自分の心を覗き込んでいる様に感じた。


執務室でマルコはドルチと同じような視線を

向けるオリガに遠征の件を伝えていた。

ちくりちくりとドルチが補足を加えるたびに

オリガの視線が冷たくなった。


「身の程を弁えて行動なさい」

話終えたマルコへ短く一言、オリガが言った。

流石にムッとしたマルコは、無論、感情を

隠す様な訓練などしておらず、感情がそのまま表情に

表れてしまった。

マルコは、慌てて、表情を取り繕ったが遅かった。


「ドルチ、少し教育が足りてないのではないのか?

それとも少し調子に乗っているのか?」


「いえいえ初めてのことを経験して、

少し興奮しているだけです。

今のところ心配無用です」


マルコは、2人の会話が聞えた。

まるでそこにマルコがいないように

マルコについての取扱いについて話をしていた。


「むっ無視をするな。

もし僕が一言でもこのことを話せば、全員、死刑だぞ」


ドルチとオリガが顔を見合わせて、

一瞬の間を置くと、ゲラゲラと笑った。


「おまえにそんな胆力はないだろう。

脅しにもならないわ」


「まあどうぞご随意に。それと覚えておくがいい。

マルコ、貴様にとって不愉快な思い出しかない村だが、

一言でも漏らせば、その村の村人は皆殺しになる。

勇者を僭称したと言う事は、最早、お前の頸だけでは

済まないことを覚えておけ」


事の重大さをさらりと伝えられて、

マルコの理解が追い付かずにポカンとしていた。


「ふん、まあいい。

躾が必要なことを良く分かったわ。

飼い主に咬みついた以上、罰が必要かしら。

それとも忠誠を示して貰おうかしら」


「オリガ様、ならば、例の件を利用しては

如何でしょうか?」


「そうね。あの馬鹿兄がしでかした間違いを

利用させて貰うとしましょうかしら」


マルコを一切相手にせずに二人は、

打ち合わせを進めた。

マルコの耳にも彼らの話が聞えたが

相変わらず全然理解できなかった。

それはマルコにとって、初めて聞く異国の言葉を

聞いているようだった。


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