説教
「おっと…そろそろ俺ら帰らねーと」
ピッツァを食べ終えてメインストリートをぶらぶらしているとジャンがそう言った。
「そうなのか?」
「ああ、仕事?なんだよ」
「なんで疑問形」
「なんとなくだぜ。つーわけでお前には世話になったな」
「…世話になったな」
アミアもジャンの口調を真似て言う。だがあまり似合っていない。
「いや楽しかったし気にすんな」
「そっか、そう言って貰えるとサンキューだな。んじゃまたいつか会えるといいな」
「そうだな」
そう言ってジャンとアミアは去って行った。別れの挨拶をしなかったのはまた会えると信じているからなのだろう。
「さてと、俺も宿に行くか」
歩いて行く二人には背を向けて反対方向へと歩き出す四郎。その心は重かった。
何故ならはぐれたティカを探しもせずに他の人たちと遊んでいたのだ。合流したら確実にシャルビィとミリーに怒られるだろう。ミリーはティカには甘々なのだ。
四郎は出来るだけゆっくりと歩いて行く。無駄な足掻きだがやらないよりはマシだと思ったのだろう。それでも歩いていればいつかは目的地に着く。
「シロー様、何か言う事はありませんか?」
「ティカは放っておいて遊んで帰って来るとはいい度胸だな」
予想通り宿に着くとそこにはニ匹の般若がいた。
「師匠ざまぁ」
「ふふふ」
ティカとネミリアを意地悪そうに笑っている。助けてくれそうな気配は皆無である。
「いや…ほら…俺も山狩り並みには捜索したんですよ?」
慌てて言い訳をする四郎。しかしこの場で言い訳が逆効果だということにテンパっている四郎は気付かない。
「うふふふ、面白い言い訳ですね~。もっと詳しく聞かせて下さい」
ガシッと首根っこを掴まれ連行される四郎。その後ろにシャルビィが付いて行く。
結局その日、説教は深夜まで続いた。
四郎と別れたジャンとアミアはメインストリートからは離れ、今は馬車に揺られていた。
「どうだったアミア?」
「…噂以上の人でした」
「へぇ。お前にそんな評価をさせるなんて本当に凄いんだなぁ。<救いの手>って」
ジャンが自身の髪をいじりながら楽しそうに言う。アミアの方は無表情を貫いているが。
「何とかしてこっちに引き込めないかねぇ」
「…恐らく難しいでしょうね。それに引き込んだとしても貴族たちが黙って見ている訳がありません。余計な火種が増えるだけです」
「いやいや。もしかしたら火種どころか無能な貴族共を焼き尽くしてくれるかもよ?」
冗談ではなく本気だという事をアピールするかのようにアミアの眼を真剣に見つめるジャン。
「…そこまでの期待は危険です」
アミアは首を横に振る。
「はぁ。せっかく美人が多いチームだって聞いたのに残念だ」
するとアミアがジト目でジャンを睨んで来る。
「…そっちが本音ですか?」
「いやいやいやいや全然だわ全然。全くそんな事はないよ」
「……まぁいいです。それで彼らの監視はどうしますか?あまり危険そうではありませんでしたが帝国領にいる以上は監視をつけた方が良いかと思いますが」
「う~ん、本来ならたかが数人のチームに監視をつける事なんて有り得ないんだけどねぇ。メンバーがメンバーだしね~」
黒眼黒髪で謎の技術でアステリ王国の王女を治した少年。種族不明な亜人。王国一の嫌われ者の裏切りの一族。王国の大貴族の三女。神出鬼没なダークエルフ。
一人でもかなり異質だというのにそれがチームを組んでいる。これは異常な事なのだ。
「監視をつけといた方がいいね。ついでに王国からの監視も監視しといてくれ」
それだけ言ってジャンは眼を閉じる。どうやら眠るつもりらしい。
「…かしこまりました。チームの監視にはメイナー、監視の監視にはリンをつけます」
アミアは懐から紙を取り出し、そこに何やら色々と書き始める。恐らく今の監視に関する書類を作っているのだろう。
「…そういえば武道大会はどうなされますか?」
するとジャンは眼を瞑ったまま答える。
「あー、俺は出るわ。お前も出るか?」
「…いえ、仕事がありますので」
「相変わらず真面目だねぇ。そんなんじゃ疲れちまうぜ?少し肩の力を抜いた方がいいぜ」
「…ジャン様は力を抜きすぎかと…」
ジャンはそれには返事をせずに眠ったふりをした。それを見てアミアは大きく溜め息を吐いた。




