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白の完全無欠  作者: 広瀬コテツ
帝国編
90/105

引きこもり



 長い長い説教が終わった翌日、四郎は宿で死に体になっていた。

「…シロー様、これから街へ出るんですが一緒に行きませんか?」

「……ピッツァはやだ」

四郎の的外れの返答に眉をひそめるミリー。四郎の格好は某錬金術師の漫画の人体錬成で出て来た人みたいになっている。

「少しお説教しすぎましたかね…」

「いやあいつはあれ位しないと反省しないだろう」

何故か少しドヤ顔をしているシャルビィ。出会った当初から振り回されてばかりだったのでようやく仕返しが出来て嬉しいのだろう。

「反省ってか廃人じゃん。目が死んだ魚みたいになってるじゃない」

「あれはもう使えないわよ。さっさと行きましょ」

ネミリアが無情にも四郎をバッサリと切り捨てる。それを期に女性陣は街へと繰り出して行った。

「…………」

それを濁った瞳のまま見送った四郎は女性陣が完全にいなくなっているのを確認してから復活した。

「…あ、危なかった。もう少しで廃人になる所だったぜ。奴らは情けっちゅうもんを知らんのかね」

ブツブツと文句を垂れながら、宿に置いてある安っぽい木製の椅子に腰掛ける。机の上に書きかけの原稿用紙を置く。

「さてと、何を書きますかねー」

個人的に書い(パクッ)てみたい作品はいくつかる。なのでいくつか候補をあげてみることにした。

 まずは推理小説の続編。これは無難なので出来ればネタ切れまで残しておきたい。

 あとは逆ファンタジー物。ファンタジーとは魔法やら魔物やらの事だ。逆ファンタジーは文字通りその逆。魔物も魔物もいない世界の話を書くのだ。ただ場合によってはSFに分類されそうではあるが。

「うーむ、これがスランプってやつかな」

 他には恋愛小説。といってもラノベに近い形態のものだ。ネタなら一応自身の経験があるので書けない事もない。ただ四郎としては気が進まない。

 あとは漫画。ひとつなぎの秘宝を巡る空賊の漫画だ。他にも奇妙な冒険をさせたりもしてみたい。

「とりあえずこの二つを新しく書くか」

結局四郎が選んだのは恋愛小説と奇妙な冒険をする漫画だった。

 そうと決まれば四郎は机に向かい一気にペンを動かしていく。あっという間に原稿が埋まっていく。

 恋愛小説の概要はフォードという少年が有名貴族の息女、ヘイシアに秘密を見られ彼女の執事になるという話だ。

 もう一方の奇妙な冒険の方はジョット・ジョーカーという青年が『立ち直る者』という力を手に入れて冒険する話だ。

 それからしばらく執筆作業が続いた。その間は飲まず食わずでひたすら集中し続けた四郎。

「ふぅ。今日はこれくらいでいっかな」

ペンを机に置く。カタリと音がして部屋は静寂に包まれた。四郎は特に何をするでもなくただ腕を組んで瞳を閉じている。

「…どうやら帰って来たみたいだな」

瞑想もどきを続けていると外から賑やかな声が聞こえて来たのでミリーたちだろうと当たりをつける。椅子から立ち上がり、部屋のドアを開く。

「おかえり。何か面白いもんでもあった?」

「ただいま帰りました。シロー様復活したんですね」

「ピッツァ食べたわよっ。とろけるチーズが最高だったわ」

ティカが嬉しそうにピッツァの話をする。四郎はそれを蒼い顔をしながら聞いている。

「ついて行かなくてマジで良かったわ」

どうやら昨日のピッツァ騒動は四郎の心にかなり大きな傷を残したようだ。

「これ以上この街にいてもあれだし明日にはメサイアに向かうか」

とりあえずトラウマが刺激されないように早くハルシヲンから離れたい四郎。それらしい理由をつけて正当化している。

「そうね。別にこの街に用事もないしね。大した情報もなかったし」

ネミリアがつまらなそうに言う。両手に大きな荷物を持っているので表情と行動がちぐはぐで面白い。

「なら今日は荷物をまとめましょう」

「そんなまとめるほど荷物ないだろ」

「女の子には色々あるんですよ」

前にも似たような事を言われた四郎は「そうだったね」としか言えない。

「じゃあ明日はいよいよ帝都メサイアへ向けて出発ね!」

「どんな所だろうな。わざわざ都で武道大会を開く位なんだからかなり大きいとみたぜ」

ティカと四郎は興奮を隠し切れないようでそわそわしている。

「大会では遠慮しないからな四郎」

シャルビィはシャルビィで武道大会に想いを馳せている。

「もちろんだ」

四郎もにっかりと笑ってそれに答える。ミリーとネミリアは同じように微笑みながら三人を見ている。ミリーの懸念通り、やっぱりお姉さんキャラが被っている二人だった。

 結局この日深夜までわいわいと盛り上がり、全員昼過ぎまで起きれず出発するのが遅れたのは言うまでもない。


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