ピッツァを食べよう
店内に入ってとりあえず空いてる席に座った三人。アミアが真剣にメニューを選んでいるのでその間、四郎とジャンは二人で下らない話に花を咲かせていた。
「やっぱりよ、こう普段クールなのにデレると破壊力がやべーよな」
「軍人が好きなのか?」
「ちっげーよ!!普段クールをイコールで軍人に結び付けんなや!」
四郎は鈍感というよりあまり恋愛というものに興味がないのでこういう話には疎い。それなのに恋愛小説を書けたのは単にベースの作品があったからに他ならない。
「んでなぁ見た目はやっぱ美人系…いや可愛い系…うむむ…四郎はどっちだ?」
「可愛い系?」
「なんで疑問形なんだよ…」
ジャンはこれ見よがしに大きく溜め息を吐く。やはり四郎ではその手の話をするには物足りないようだ。
「…すあません。コレとコレ…」
いつの間にかメニューを決めたらしいアミアは店員を呼んで注文をしていた。
「…以外全部下さい」
「「はぁっ!!??」」
あまりの爆弾発言に再び四郎とジャンの声が重なる。四郎は内心でやっぱり兄妹だけあってジャンとアミアは似てるな、とか考えていた。
「かしこまりました」
店員は驚く事なく颯爽と厨房まで戻って行った。さすがはプロだと言わざるを得ない。
「アミアさん、頼みすぎじゃないですかね…」
「…ピッツァを選ぶなんて事私には出来ない」
アミアがゆっくりと首を横に振る。まるで手術が失敗した時の医者のようだ。その表情には悲壮感が溢れている。
「お、俺の金が…」
うなだれるジャンの肩にそっと手を置く四郎。
「俺も少し出してやるよ」
「さんきゅなシロー」
お互いガッチリと握手をする。
それからしばらくすると三人のテーブルはピッツァで埋め尽くされた。
「「……」」
既に男二人は廃人になっている。正直これだけの量があると見るだけでも胃に悪い気がしてならない。
「…ピッツァ♪ピッツァ♪」
アミアはそう言ってパクパクと可愛らしく食べていく。二人はその姿を見て廃人から復活した。
「よっしゃ俺も食うか!」
「いただきます」
二人も自分の一番近くにあったピッツァにかぶりつく。
「うめぇじゃん」
「美味いな」
三人はしばらく無言でピッツァを食べ続ける。すると不意にアミアが顔を上げた。
「…もうお腹一杯」
その台詞に二人は食べかけのピッツァをボトリと落とす。
「ちょ…冗談キツいぜアミア」
アミアの皿に目を向けるとまだ一枚の半分しか食べていない。それなのにアミアはもうお腹一杯と言ったのだ。
「…私はピッツァの前では冗談を言わないの。…もう無理」
「だったらこんなに頼むなよぉっ!!」
ヤケクソ気味にジャンが次から次へと口にピッツァを詰めていく。頬がリスみたいにパンパンに膨れている。四郎もさすがにこれだけ頼んでおいて残す訳にはいかないと食べ続ける。
「…ピッツァ美味しかった」
アミアはそんな事も気にせずに感想だけ言ってそのまま眠ってしまった。
「し、死ぬ…」
のどに詰まったのを慌てて水で流すジャン。その眼にはうっすらと涙が浮かんでいる。
そこから格闘すること一時間。ようやくテーブルの上の品を全て平らげた。今は二人とも座席に寝転がって苦しそうに呻いている。周りからは「お疲れ」とか「よく頑張ったな」などと温かい言葉がかけられる。
「もう一生…」
「…ピッツァは食わねー」
最後にそれだけ言って彼らは死んだ。という訳でもなく少し休憩してから店を去った。お会計も凄まじくジャンは真っ白になっていた。四郎はギルドで稼いでいるのであまり問題はなかったが。
「わりぃな。こんな事に突き合わせちまって」
「いいよ、気にすんな。面白かったし。まぁもう二度とピッツァは食わねーけどな」
申し訳なさそうな顔をしているジャンにそう伝えると少しだけ表情が明るくなった。
「そういえばお前って連れがいんだよな?」
「ああ。そうだけどそれがどした?」
ジャンが急に質問をして来たのでそれに答える四郎。
「その連れってさ、もしかして<救いの手>のメンバーか?」
「…っ!?どこでそれを?」
「おい警戒すんなよ。ただ単にお前らが有名だから知ってただけだよ。黒眼黒髪の最速王が率いるチームってね」
それを聞いて安堵する四郎。
「何だよ、脅かすなよ」
「ははは、ビビったか?」
ジャンはカラカラと笑う。四郎は何も思わなかったが、その笑い方はどこか蛇に似ていた。




