ピザじゃなくピッツァ
お互いに自己紹介を終えた三人はハルシヲンのメインストリートを歩いていた。ちなみにティカからはシャルビィたちと合流したと連絡が入った。
「王都よりも道がデカいなぁ」
四郎は素直に驚きの声を上げる。帝国の一都市が王国の王都よりも道端が大きいのだ。驚くのも当然だろう。
「ん?シローは帝国初めてなのか」
「ああ。だから王都よりも道端が広いのにビックリしてな」
「…馬車がたくさん通るから」
今まで黙っていたアミアが急に声を上げた。口ぶりからしてハルシヲンの通りが広い理由を説明しているのだろうと四郎は推測する。
「補足すると帝国は王国より貴族の権力がデカいんだ。だから道とかも貴族が通り安いように整備されてんのさ」
「なるほどね。てことは貴族に逆らったりしたら」
「…バッサリ」
王国にも貴族がいたがそれ程権力は強くなかった。故に貴族といってあまり威張り散らす人物も少なく平民あっての国という考えに基づいていたので平民だからどうのこうのという事件は比較的少なかったのだ。
しかし帝国は貴族の権力が強いという。今は皇帝が善政を敷いているので目立った問題はないが昔はかなり非道かったらしい。
「まぁ俺としては平民とか貴族とか本当にどーでもいいけどなっ」
「…右に同じ」
そう言ってジャンはカラカラと笑った。アミアは無表情だったが。
「てか可愛い女の子こそが正義な訳だよ。分かるか?心の友よ」
ジャンは真面目腐った顔でそう宣言する。
「分からないし心の友でもない」
「…お兄ちゃん気持ち悪い」
「ぐべらぁっ!!??」
四郎とアミアの辛辣な台詞にダメージを受けるジャン。道のど真ん中で廃人みたくなってしまって極めて迷惑な状態だ。
「おい、起きろー」
四郎はジャンを軽くつつくが反応はない。何故か彼の周りまで燃え尽きたように真っ白になっていたが四郎はギャグ補正という事で納得しておいた。
「…それじゃ起きない。お手本。…あ!あそこに可愛い女の子が…」
「へい、そこのビューティーちゃあん!!お兄さんと一緒にお茶でもどーだーい!?」
いきなり立ち上がったジャンはそのままクルクルとバレリーナのように回転しながらどこかへ消えてしまった。
「ええと…大丈夫なのか?」
「…大丈夫」
「ならいいや」
四郎もジャンの性格と奇行に慣れてきたのでアミアが大丈夫と言うなら大丈夫だろうと判断する。
「腹減ったから何か喰うかな。アミアちゃんはお腹空いてる?」
「…頭とお尻がくっつく位に」
「それを言うならお腹と背中だろ!!」
予想外のアミアのボケに相手が年下という事も忘れ素の口調でつっこむ四郎。
「…冗談。お腹ペコペコ」
「何か食べたい物でもあるか?」
「…ピッツァ」
「なんだピザか」
「…発音が違う。ピッツァ」
何だか有無を言わせぬ迫力があったので素直に従う四郎。何故かこの兄妹の前では上手くクールキャラが保てないらしい。
「ピッツァか。俺もそんな気分だったぜっ」
いつの間にか戻って来たジャンが会話に参加する。
「急に来たな…。どっかいい店あるか?」
「…この通りには美味しいピッツァのお店が4軒あります」
「なんで説明口調なのさマイシスター」
「…ピッツァのお店に対する敬意。…じゅるる」
アミアが口から涎を垂らしながら言う。恐らくすでに頭の中ではピザ…いやピッツァを食べる事でいっぱいなのだろう。
「じゃあ一番近い店にしよう」
「…わかった。ここなの」
「「はやっ!?」」
すでにお店は目と鼻の先だった。あまりの事に四郎とジャンは揃って声を上げた。
「…話しながらさりげなく誘導してたから」
「最初からピザ…ピッツァを食べるつもりだったのか」
「アミアは三度の飯よりピッツァが好きなんだ」
「三度の飯よりってか三度の飯がピッツァだな」
「ああ。しかもどんだけ食ってもあいつ太らないんだぜ。羨ましいよなぁ。まぁ身長も伸びてないけどな!ぷぷっ」
ジャンがそう言って笑った途端。神速とも言える速度でジャンの股関が蹴られた。
「きゅぺっ!!??」
「…一言余計」
ジャンは股関を押さえながら地面に沈んでいった。四郎も思わず股関を押さえる。周りにいる男たちも同じようにしている。
「…早くピッツァ食べる」
そう言ってアミアはマイペースに店の中へと入って行った。四郎も仕方なくジャンを引きずって店内へと入る。
「面白い兄妹だな」
四郎は思わずそう呟いた。




