ランド大橋
「ようこそ……『男の世界』へ………」
ランド大橋を目にして四郎は思わずそう呟いてしまった。
この橋を造るのにどれだけの期間が、どれだけの男たちが汗を流したか。それを考えるとそう言わざるを得なかった。
「師匠いきなり何言ってんのよ?」
ティカがジト目で四郎を見つめてくる。
「言わずにはいられなかったんだ。俺の好きな本の好きな台詞さ」
本当は本というより漫画なのだが、まだ四郎の描いた漫画も出回っていない以上漫画と言っても通じないだろうと考えたのだ。
「も、もしかしてアッチ系の艶本ですか?」勘違いしたミリーが引いた顔をしながら尋ねてくる。
「ちげーよっ!俺はノーマルだ!!」
あらぬ誤解をされそうになり慌ててツッコミを入れる四郎。
「こんにちは、あなた達も武道大会観戦ですかな?」
ランド大橋の入り口にある国境越えの関所で警備兵に声を掛けられる。
「はい、そうです」
「ならカードをここに入れて下さい」
そう言って警備兵が指差したのはアレだった。口に手を入れて真偽を確かめる的なアレだ。
四郎たちは言われた通りに口にカードを入れる。やり方はギルドの泉にカードを入れる時と同じだ。
『モンダイナイヲ。ゼンインオッケーダヲ』
と許可を貰った。アレが喋るとはさすがファンタジー。とか下らない事を四郎は考えていた。
「はいありがとうございました。今ので許可証がカードの中に入りましたのでこのまま橋を渡っていただいて結構ですよ」
警備兵にそう言われ四郎は真っ先に関所を通り橋へと入る。浮かれているのが丸分かりだ。ティカも四郎を追うように橋へと駆けていく。
「はしゃいでるな」
「はしゃいでますねぇ」
「はしゃいでるわね」
残された三人はその光景を微笑ましそうに眺めていた。
「てか河でかっ!?」
四郎が橋から河を見て驚いている。四郎が知っている川というのはもっと狭くて急な流れのものだ。
「すごいわね!こんな大きな河は初めて見たわ」
隣から覗き込んでいるティカも感嘆の声を上げている。ティカもあまりガルトから出ないので河とかには馴染みがないのだ。
「まさに大河だなぁ」
うんうんと頷きながら四郎は満足そうな顔をしている。
「いつ見てもすごいな」
いつの間にか追い付いていたシャルビィたちも各々感想を述べていく。
広大な河。それ自体が一つの大きな流れであることを主張しながらもゆったりと流れるその様はまさに壮観だった。水も澄み切っているとは言い難いがそれが逆に年季を感じさせる。
しばらく河を楽しんだ四郎たちは今は普通に橋の上を歩いている。
「いや~すごかったなぁ。どうせ世界を回ってくなら他にも色々見てみたいなぁ」
「私の故郷にも雲の柱っていう名所がありますよ」
四郎の呟きにミリーが少しだけ自慢気に答えた。
「良かったら今度見に行きませんか?両親にもシロー様の事を紹介したいですし」
「紹介って…友人としてだよな?」
ミリーの有無を言わさない笑顔にビビりつつも四郎は勇気を出して確かめてみる。
「友人?いいえ未来の旦那様です」
「断定!?」
四郎はミリーの故郷に行く事がありせんようにとその場でこっそりと祈る。
「私たちエルフの森にも中央に世界樹っていう凄い大樹があるわよ」
「おぉ。すげーな」
四郎は眼をキラキラと輝かせている。もちろんティカもだ。
「そ、そんなシロー様が私の話の時より輝いているなんて!?やっぱりネミリアと私だとお姉さんキャラが被ってるから……」
とミリーは一人うなだれていた。そんなミリーの肩にシャルビィがそっと手を置いた。
「…ありがとうシャル…」
ミリーは仲間の優しさに思わず涙を流す。二人の友情が深まった。
「世界樹ってやっぱり大精霊とかがいるのか?」
「いや…精霊に上下はないわよ」
それを聞いて四郎は少しだけ落ち込む。四郎の事だから大精霊とかがいた方がファンタジーらしくていいとか考えていたのだろう。
「にしてもやっぱり橋デカいなぁ」
「大橋ですからね」
いつの間にか復活したミリーが自然に四郎の隣についた。
こうして<救いの手>のメンバーはランド大橋を渡り帝国へと入国したのであった。




