祠
村の東の外れに小さな祠があると聞いた四郎たちはさっそくその場所の捜索に当たっていた。
「ひ、東ってどっちよ!?右!?左!?」
ここにきて方向音痴が発覚したティカは一人でギャンギャンと喚いていた。というか阿呆すぎて他のメンバーは思わず閉口してしまっていた。
「はぁ。東はこっちだよ」
「シロー様、そっちは北です」
ミリーに訂正されうなだれる四郎。
「漫才してないで早くいきましょ」
ネミリアが先頭で東の方へと歩いて行く。シャルビィは眠いのか欠伸をかみ殺しながらそれについて行く。
「にしても祠ねぇ。怪しいねぇ」
村の端っこまでくるとそこから先は林だった。林といっても草は半ば枯れかけていて、風が吹けば吹き飛びそうな程弱々しかった。
「あれじゃないかしら?」
ネミリアが指差した方向に小さな小屋らしきものが見えた。
近寄ってみると案の定それは祠だった。
「黒い祠…」
「これはいよいよきな臭いわね」
「もしかしてここは『黒の獣』をまつっていた祠なのか?」
シャルビィの意見に四郎を除く全員が息を呑む。
「邪神信仰のようなものという事ですね」
「それってヤバいじゃない!!つまりあの村の人たちは皆敵かもしれないって事でしょ!?」
しゃがんで祠を観察していたティカが勢い良く立ち上がる。ミリーがティカの手を掴んで落ち着かせる。
「大丈夫です。あの村人さんたちは関係ないですよ」
「何でそう言い切れるのよ」
「この祠の状態です。よく見てみて下さい」
黒い祠は所々色が落ち着いて白くなっている。小さな傷も多く、素人目から見てもかなり傷んでるだろうというのがうかがえる。
「ボロボロね」
「そうです。もしあの村の人たちが邪神信仰を今でも掲げているならこの祠がこんなにボロボロなのはおかしいです」
「なるほど。手入れをしてないからあの村人たちは白って訳ね!」
ティカが大きく頷いた。ネミリアとシャルビィも小さく頷いていた。
「にしても信仰してたのに何でこんなに祠が小さいのかしら?」
「信仰といっても邪神だからな。あまり大っぴらには出来なかったんじゃないか?」
「それもそうね」
ネミリアはシャルビィの意見にあっさりと納得する。
「シロー様?」
ここにきてようやくミリーが今まで沈黙を貫いていた四郎に話し掛ける。
「………」
しかし四郎はそれに答えない。無視しているというよりも考えるのに集中していて聞こえていないといった感じだ。
「何か気になることでもあるのかしら?」
そう言いながらネミリアは四郎の方に手を置く。四郎ははっとした顔をしてから返事した。
「いや本当にこれは邪神信仰の祠なのかなって思って」
「どういう事です?」
ミリーが頬を膨らませながら聞く。先ほどミリーが呼び掛けても返事しなかったのにネミリアの時には返事をしたので拗ねているのだ。
「いやもしここが邪神信仰をしていたのなら何でこの村が被害を受けるんだ?」
「そ、それは信仰を忘れた天罰のようなものではないのか?」
「確かにその可能性もある。だが俺は違うと思う」
「じゃあこの祠は何なのよ?」
ティカが少し苛立ちながら四郎に尋ねる。ティカはまどろっこしいのは嫌いなのだ。
「恐らく『黒の獣』を封印している場所だと思う」
「「「「!?」」」」
四人が一斉に驚く。
「あの村人たちは今回の天災で初めてこの祠に気付いたと言った。だけどそれっておかしくないか?いくら林があるからといっても祠が完全に見えなくなる訳じゃない。なのに村人たちが今まで気付かなかったのは…」
「何らかの力で隠蔽されていたって事ですか?」
ミリーが四郎に続けるように言って確認する。
「そうだ。つまり『黒の獣』を封印していた祠が目覚め始めた『黒の獣』の力に耐え切れなくなって現れたって訳だ。それにお前らはこの祠を黒くて所々色落ちしてるって思ってるだろうが恐らくは逆だ」
そこで四郎は一息つく。あまり長々と喋るのは得意ではないのだ。
「白い祠が『黒の獣』の力に負けて黒くなったんだ。それにここが『黒の獣』を封印していた場所ならここが『黒の獣』の影響が出るのも頷ける。それとこの祠と同じ様に『黒の獣』を封印している場所がこの世界の何処かにまだいくつかあるだろう。こんな小さい祠で完全に封印出来る訳ないしな」
四郎はそう言ってもう終わりだとばかりに立ち上がる。それを四人は驚嘆しながら見ていた。
四郎は言わなかったがここに封印されているのが邪神ではなく『黒の獣』と考えたのにも理由がある。
それはここが根幹世界だからだ。かつてホワイトシローが言っていた言葉だ。神の一柱程度なら何処にでも封印、この場合は封神出来るだろう。しかし神ですら下手に手出しが出来ない『黒の獣』をそこら辺に封印する事は出来ない。だからこそ最も大きくて深いこの根幹世界に封印したのだろうと踏んだのだ。
そしてその日、四郎たちはハラ村に一泊して、翌日ランド大橋へと向うためハラ村から出て行ったのであった。もちろん<天球儀>で雨を降らせるのも忘れなかった。一時的でも降らないよりはマシだと考えたからだ。ハラ村の人たちは突然の雨に歓喜したという。




