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白の完全無欠  作者: 広瀬コテツ
王都編
83/105

ハラ村



 「いやー、花とか以前に廃れてるよな」

村に入った四郎は遠慮なしに感想を言った。隣にいるティカもうんうんと頷いている。

「何かあったんでしょうか?」

「うむ、活気がないな」

「とりあえず村人に話を聞いてみるか。このまま素通りするってのもいただけないしな」

「そうですね」

少し先の方にいた村人らしき年寄りに話し掛ける。

「おや、どうなされました?お客人方」

村人はシワだらけの顔で優しく微笑んだ。純朴な笑顔だ。これだけでこの村が素晴らしいものだと分かる。枯渇している村には枯渇した人が伴うものだ。その逆も然りという訳である。

「いえ…ここはハラ村ですよね?」

「はいはい、そうですな。残念ながら美しい花たちは枯れてしまったけどねぇ。ここがハラ村ですな」

「枯れた?」

「ええ、何ヶ月か雨が降らなくってねぇ。それで村自慢の花も全部おしゃんですよ。おかげで観光客も来なくなって、食物も育たない…。いやはや…お客人方には関係ない話をしてしまいましたな」

老人が悲しそうな顔で笑う。その表情には疲れと嘆きがありありと見てとれる。四郎たちはお互いに顔を見合わせる。

「気にしないで下さい。聞いたのは俺たちの方ですから」

そう言って老人と別れる。とりあえず宿屋の方へと歩いていく。

「雨を降らせばいい訳か」

「出来るのか?」

森での一件を詳しく知らないシャルビィは四郎に尋ねる。

「ああ。出来るよ。ただ問題は俺が今ここで雨を降らしても一時的な解決にしかならないって事だ」

そうなのだ。例え今ここで雨を降らしても、それはその場しのぎにしかならない。次またすぐに雨が降るという保証にはならないのだ。もしかしたら無理矢理雨を降らせる分、更に雨が降りにくくなるかもしれない。四郎にもそこら辺の細かい事は分からないのだ。

「でもやらないよりもマシじゃない?」

「そうだな。だが勢いだけでやるというのは良くない。何で急に雨が降らなくなったかが知りたい」

「やっぱり『黒の獣』とやらなんじゃない?」

ネミリアがまず一番大きな可能性をあげる。最近世界中で起きている魔物の異常発生も『黒の獣』が原因なのだ。事情を知っている人は真っ先に『黒の獣』を疑うだろう。

「可能性は高いな。あとは魔物か人間の仕業か。陸地で水分を吸収する魔物とかいるか?」

「聞いた事ないな」

「なら人間?だけど何故水分を吸収してるんだ?」

「やっぱり人為的な仕業というよりも災害説の方が有力ですね」

ミリーが言うと全員がそれに頷く。しかし天災なのだとしたら余計に解決する糸口が見えて来なくなる。

「…………」

「どしたの師匠?何か気になることでもあった?」

皆が四郎に注目する。

「いや…何ヶ月か雨が降らなかっただけで随分と廃れたなと思って」

四郎が言いたいのは廃れる速さの事だ。本来、色とりどりの花が咲き誇る村として有名な村の周囲が砂漠にも近いものとなっている。雨が降らなかっただけにしては廃れる速さが尋常ではない。

「確かにそうね。さっきも言ったけど精霊たちの動きがここはあまり活発ではないわ」

ネミリアも精霊を感じとれるため、その異常な廃れる速さに違和感を持ったようだ。

「ですけどそれでもやはり魔物や人間の仕業と言うのは無理があるかと思います」

「ああ。分かってる。俺が言いたいのはこれがただの災害なのか『黒の獣』の影響なのかって事だ」

「なるほど。ならこれは『黒の獣』の影響ということか」

シャルビィが四郎の言いたい事に気付いたようで結論を先に言ってしまった。ミリーとネミリアはその一言で四郎が何を言いたいかを理解したがティカはいまいち分かっていないようだ。

「どーゆーこと?」

「つまりこの土地は『黒の獣』の影響で日照りが続き、急速に砂漠化していってるってことだ。普通の災害じゃこんな事は起きないからな」

「なるほどね。でも何でこの土地だけがそんな事になってんのよ?」

「さぁな。それは調べてみないと分からん」

四郎は目の前にいる宿屋に入っていく。情報収集をするつもりなのだろう。何故この土地だけが『黒の獣』の影響を受けているのか。

「いらっしゃい。久々の客だねぇ」

宿屋に入って四郎たちを出迎えたのは美人の看板娘…ではなく恰幅のいいおばちゃんだった。

「5人で一泊。全員個室で食事ありで頼む」

「はいよ。合計12000tptだね」

四郎は自分のカードから指定された額のtptを振り込む。

「おばちゃん、ここらに何か変わった言い伝えとか変わった物とかない?」

四郎が振り込みながら世間話をするかのように尋ねる。

「そうさねぇ~、花が枯れた時にそういう何か代わりになるものを村中で探したんだけどねぇ。結局見つかったのは小汚い祠だけだったよ」

「祠?」

「そうだよ。村の東の外れにある小さな祠だよ。でも見に行ってもつまらないと思うよ」

「そうですか…。残念です。何か面白いものがあればと思ったんですけど」

少しだけ残念そうな顔をしながら四郎は会話を切り上げる。そして皆の顔を確認してからゆっくり頷いた。

「どうやら祠とやらに行ってみる必要がありそうだな」

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