王国出発
「つーわけで武道大会に出たいから帝国へ行こう」
「シロー様大会に出場するんですか?」
「それ反則じゃない?師匠人間じゃないし」
ティカの容赦のない攻撃に呻く四郎。四郎がいくら人間離れしていると言っても人外人外と呼ばれれば当然傷付くのだ。
「どうせなら出た方が良くないか?優勝すれば知名度も上がるし」
「知名度を上げたいのか?」
「いや知名度が上がれば交渉の時とかでも信用されやすいなぁと思って」
全く聞いた事もないような男と武道大会で優勝した男とではその信用度は天と地の差だろう。
「なるほどね。さすがシローちゃん。じゃあ私たちはシローちゃんが大会に出ている間に情報を集めておいた方がいいわね」
「え~!あたし観戦したいんだけど」
「私もシロー様の活躍を見逃す訳にはいきません」
「私は出場するつもりだ」
ミリーとティカは観戦、シャルビィは出場すると言い出した。ネミリアは頭を抱えている。
「はぁ。仕方ないわね。なら大会期間中は大人しくしてましょ」
「いいのか?」
「いいも何もそうする以外に選択肢はないじゃない」
<救いの手>は正直、個々の戦闘力はかなり強い。最近はティカも強くなってきている上、それぞれの戦闘タイプのバランスがいいのでこのチームに勝てるチームはほとんどないだろう。しかしその分個性も強いので団体行動というものに向かないのだ。
好奇心優先で動くティカ。四郎至上主義のミリー。情報を集めるためいつの間にかふらりと姿を消しているネミリア。軍人気質で堅いシャルビィ。最後には全てが型破りな四郎。この面子が一つのチームにまとまっている事自体がすでに奇跡なのだ。もちろん、奇跡といっても橘四郎が起こした奇跡だが。
「んじゃ、大会期間中は祭りを楽しみますかね」
「そうね。祭りは楽しむものだものね」
「よーし、決まったなら早速帝国へ行くわよー!!」
ティカが勢い良く宣言する。その一方でネミリアと四郎は暗い顔をしている。
「協調性…コレが次の私たちの課題のようね」
「そうだな」
四郎は大げさに肩をすくめて返事する。
それからお互いに王国を出るために準備をする。四郎は特に何も無かったが女の子は色々大変という事らしい。
「お待たせしました」
しばらくしてミリーたちがやって来る。四郎は短く返事をして歩き出す。
「帝国まではどのルートで行くのですか?」
「ランド大橋を通るルートだ」
「ランド大橋?サクラ大橋ではないのか?」
四郎が予定しているルートを答えるとシャルビィが疑問を挟んできた。
王国と帝国の間には大きなスズカ運河が流れている。そのため王国から帝国に渡るには船で渡るか、橋を使うしかないのだ。そして王都アステリから一番近い橋はサクラ大橋なのだが何故か四郎はランド大橋を選択したのだ。
「ランド大橋から入った方が多分混んでないから」
「なるほど」
シャルビィ、ネミリア、ミリーは四郎が言った事が理解出来たようだ。しかしティカは首を傾げている。
「何でよ?」
「武道大会で今の時期は国の出入りが激しいんだ。だから帝国に一番近いサクラ大橋は混んでるだろうって言ったのさ。そんな混んでる道を行くより情報を拾いながら遠回りした方がいいだろ?」
「確かに!」
結局サクラ大橋ではなくランド大橋を通るルートで決定した。
「帝国でのパイプ作りには何か考えでもあるの?」
アステリを出るとネミリアが尋ねてきた。あまり人には聞かせたくない話だからアステリでは尋ねなかったのだろう。
「向こうにいる皇子と宰相に接近するつもりだ」
そう言うとネミリアが疑問を浮かべる。
「皇子は分かるけど宰相に接近してどうするの?」
「金だ。帝国に金を寄付する」
「……どうして?」
「ネミリアなら分かってると思うが帝国は今金がない。それを武道大会で取り返そうとしているが恐らくは成功しない。だから俺が金をやるのさ」
「そんなにお金なんかあるの?」
「今はまだない。だが半年後にはかなりの大金が懐に転がり込んで来てるはずだ。その金をそっくりそのまま寄付してやるのさ。もちろん国の赤字を黒字に変える程ではないが個人で払った額としては破格のもんになるはずだ」
もちろん四郎が言ってる半年後のお金とは印税のことである。
「はぁー。さすがシローちゃんね」
ネミリアは呆れながらそう言った。
こうして彼らは帝国へと出発した。




