スレイターに会おう8
「…とにかく、目には目を、歯には歯を、災害級には災害級をだ!!」
四郎は半ばヤケクソ気味に叫んでから自らの身体に<神>を纏う。すると全身が純白に染まる。後ろにいるスレイターとカトンが息を呑んでいる。
「よしやるか」
四郎は両手を広げ、目を瞑り、空を見上げた。その身体からは神々しい程の<神>が溢れ出ている。
「し、師匠何を…?」
ティカが四郎には聞こえない位小さい声で呟いた。恐らく脇にいたスレイターとカトンには聞こえていたとは思うが。
ミリーはドラッグマーカーの相手をしながら背後の四郎から感じる圧倒的な威圧感に冷や汗をかいていた。竜の中でもこれほどの威圧感を出せるのはそうそういない、と。改めて四郎の規格外さに驚かされた。しかしそれでも四郎がしようとしている事の検討はつかなかったが。
四郎がポーズを決めてから10秒、20秒と経過していくが何も起きない。スレイターやティカが内心失敗なのかと思っていると突然カトンが低い声で呟いた。
「そ、空が…」
その言葉に釣られてスレイターとティカが空を見上げると先ほどまで燦々と輝いていた太陽が姿を隠し、その代わり空は分厚い雲で覆われていた。しかもよく見ると曇っているのはこの森の上空だけであった。
「ま、まさか師匠…」
「おいおい、こりゃ何の夢だ」
「現実…か…?」
ティカは四郎の規格外さに顔を引きつらせ、スレイターは現実逃避気味に目を逸らす。カトンはさっき本当は自分が腐敗で死んだのではないかと真剣に思い始めた。
「ミリー、離れろ」
ミリーはすぐにドラッグマーカーから離れティカたちの所まで下がる。そしてやはり上空を見上げ目を大きく見開いて驚いている。
「喰らえ<天球儀>」
するとドラッグマーカーの上空にある分厚い雲から眩い光と共に轟音が響き渡る。雲から生み出された天然の雷がドラッグマーカーへと直撃する。その圧倒的な破壊力により土煙が消える頃にはドラッグマーカーは跡形も無くなっていた。ドラッグマーカーがいた場所はクレーターなみに抉れておりその凄まじさ物語っている。
四郎が使ったのは十神技のうちの一つ。下から三番目の技だ。先ほど四郎も叫んでいた通り名前は<天球儀>。天候を操る技だ。つまり雷だけでなく雪や台風、大雨などが自由に操る事が出来るのだ。威力も範囲も自由自在だ。まさに災害級という訳だ。普通の魔法に例えれば恐らく殲滅魔法よりも一ランク上のものといった感じだろう。
「ふぅ…終わったか」
四郎は<神>を解除し、その場に座り込む。いくら下から三番目の技といっても神の技なのでそれなりに消耗が激しいのだろう。
四郎が座り込んだのを見てミリーが近付いて来る。それに続くようにティカ、スレイター、カトンも四郎へと近寄ってきた。
「大丈夫ですか、シロー様?」
「少し疲れた。まぁ初めて使った技だからな。加減も分からなかったし」
四郎が苦笑しながら答える。
「ていうか師匠…ついに天気まで操るなんて…災害級以上に災害級よね…」
「本当に人なのかよ…竜とかじゃねーのかよ」
「凄まじいの一言だな」
各々勝手な事を述べ始めた。ミリーはそれを聞いて笑っているだけだ。普段はシロー様、シロー様と言っているわりには何故かこういう時四郎を庇ったりしないのだ。
「これでようやく落ち着いたな。スレイターさんにも会えたし」
「そういえば一体俺に何の用なんだ?」
四郎に言われて初めて妹がわざわざ会いに来たのを思い出し話を切り出す。
「情報のやり取りがしたいんだ。王都騎士団と」
「俺らと?」
その台詞に食い付いたのはスレイターではなくカトンだった。
「ああ。ええと…」
「王都騎士団第二部隊長カトン・ターカーだ」
「俺はチーム<救いの手>のリーダー、シロー・タチバナだ」
その後にスレイター、ティカ、ミリーと自己紹介をしていく。
「それで俺らと情報のやり取りをしたいってのはどうゆう事だ?」
「そうだな…王都騎士団は気付いてるか?最近の異常に」
「……異常というと魔物の異常発生か?」
カトンは少し考えてから答えた。他の三人は黙って二人の会話を聞いている。
「ああ。今回のコレもそうだ。本来その場所にいるはずのない魔物がそこにいる、という事件が最近多くなってきている。俺たちはそれについて調査しているんだ」
『黒の獣』の事は今は切り出さない。言っても恐らくは信じてもらえないだろうからだ。
「調査…誰かからの依頼なのか?」
「ああ。王女様からの密命だ」
さも事実かのように四郎は調査について語り出した。




