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白の完全無欠  作者: 広瀬コテツ
王都編
77/105

スレイターに会おう7



 戦いはえらく一方的だった。ドラッグマーカーに突撃を仕掛けたカトン。しかし剣があっという間に腐敗し捨てざるを得なくなる。

「化け物がっ…!」

近寄ってくるドラッグマーカーとの距離を取りつつ鎧の関節部分の隙間を目掛けてナイフを投擲していく。もちろん何の効果もない。幸いドラッグマーカーは移動速度が速くないので未だ致命傷になるような攻撃はもらっていない。もっともドラッグマーカーに少しでも触られたら即致命傷決定だが。

「……せいっ!!」

今ので手持ちのナイフが全て無くなったので身体に纏っていた<武>を解除する。詰み状態である。しかもドラッグマーカーを引き寄せるために<武>を多めに纏っていたので体力の消耗が激しい。

「ここまでか…」

カトンは先に逃がした弟子の顔を思い出し苦笑する。ドラッグマーカーが目の前まで来てカトンの腕に触れた。

「うぐぁっ!!」

腕が腐敗していく。このまま放っておけばすぐに全身腐敗して終わりだろう。ドラッグマーカーは追撃をかけてくる様子はなくカトンの奥を見ている。

 すると突然ドラッグマーカーが後方へと飛び退いた。そこに一迅の風が駆け抜けた。その風は腐敗していた腕を根こそぎ刈り取った。

「…っぐぅっ!!」

予想外のダメージに思わず声を上げるカトン。しかしお陰で腐敗の進行が止まった。未だ痛みに顔を歪めているカトンに後ろから声が掛かった。

「大丈夫かよ」

カトンが振り向くとそこにいたのはここらでは珍しい黒眼黒髪の美少年だった。もちろん四郎である。その後ろにはミリーが控えている。

「ミリー、奴の足止め頼む」

「はい」

ミリーは一人ドラッグマーカーへと向かう。その後ろで四郎はカトンを回復させるためにカトンの患部を調べる。

「腕だけだな。<遡及>」

<治癒>だと無駄に力を使う上、あまり人前で白い姿になるのはまずいと判断して<遡及>を選択した四郎。

「…う、腕が!?」

わずか数秒の間にカトンの腕は数分前の状態へと戻る。あまりの非常識にカトンはまともに口を開く事すら出来なくなっている。

「すぐにスレイターさんも来るからとりあえずそこで休んどけ」

四郎はそれだけ言ってミリーの方へと向き直る。

「どうだミリー?」

「…だめですね。隙をみて<渦流・流浪>で腐敗を鎧へ押し返したんですが効果はありませんでした」

「やっぱりな。どうやらこのドラッグマーカーはさっきのよりも怨念が深いらしい」

恐らくこれでは自分の鉄球も効かないだろうと四郎は判断しミリーと作戦を練る。

「シロー様の<浄化>で怨念は消せないんですか?」

「怨念は消せても腐敗を消せる訳じゃない。さっき<浄化>を使ったのはドラッグマーカーが死んだ後に残した怨念を浄化するためにだ」

解決策が出て来ない内に後ろにいたティカとスレイターたちがようやく四郎たちに追いついた。

「お前ら勝手に行きやがって!!それと隊長ご無事で何よりです…!」

「師匠足速すぎよ!台風かっ!!」

どうやらティカのやかましさは兄譲りらしい。文句を言うだけ言った二人はカトンの脇に寄りミリーと四郎の戦闘を見守る事を選ぶ。

「………」

しかし四郎はそんな二人を無視するかのように黙って思考を続ける。四郎がだんまりで動かなくなったのでミリーは再び一人でドラッグマーカーの相手をする。水や氷の矢を使って巧みに攻撃していく。もっとも効果は一切ないが。

「……よし」

不意に四郎が思考の世界から戻ってくる。

「何か思い付きましたか?」

「ああ。ミリーは少しの間足止めを頼む」

「さっきからずっと足止めしてますが?」

少し棘があるミリーに事実なので言い返す事が出来ない四郎。少しだけ眉がヒクヒクしている。

「…とにかく、目には目を、歯には歯を、災害級には災害級をだ!!」

四郎はとりあえず誤魔化すように大声で啖呵をきった。

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