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白の完全無欠  作者: 広瀬コテツ
王都編
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スレイターに会おう6



 森の中は迷路の中。ただ真っすぐ走っていく事すら難しいものだ。そんな中、スレイター・ファーフードは迷わずにただ真っすぐに走っていた。慌てているにも関わらずだ。それは才能と努力の二つが拮抗して初めて手に入れられるものだ。

 しかし今のスレイターにとってそんな事は些細な問題だった。必要なのは強い味方。すなわち王都騎士団。自らの師であるカトン・ターカーを救うために必要な力だ。

 スレイター一人ではカトンを救う事が出来ない。その事実はスレイターにとって胸が切り裂かれそうな程辛いものだった。まだ王都騎士団に入って数週間程度だ。その日数だけを見るなら大した思い入れもないように見える。事実まだ王都騎士団自体にはそれ程思い入れはない。

 思い入れがあるのはカトン・ターカー個人にだ。その思い入れの理由は単純だ。

 純粋な憧れ。

 僅か14歳で傭兵として名を挙げ、17歳には国内最強といわれる王都騎士団で第二部隊長となった憧れの人。今は25歳で美人の奥さんが出来て以来女遊びを止めた愛妻家としても有名だ。

 だからこそカトンの隣に立つ資格がない自分の事が悔しくて惨めだった。スレイターは自分に言い聞かせる。今出来る事はただ助けを求める事だけ。

 そんな様々な葛藤に身を焼かれそうになりながらも休む事なく森の中を駆ける。そしてそこで信じられないものを見た。

「……なっ!?」

そこにいたのはガルトにいるはずの大切な妹だった。





 この森の中心近くに大きな気配がある事には既に四郎、ミリー両名共に気付いていた。もちろんティカは論外である。その大きな気配のせいで他の生き物たちの気配が霞んでしまい、捜索がしにくくなってしまっている。

「おい、何か来るぞ。構えろ」

四郎の指示にミリーとティカが構える。しかし二人は得物を持っていないので構えは当然徒手空拳である。

 森の奥から一つの影が三人の目の前に現れた。

「……なっ!?」

突然目の前に現れた人物は四郎たちを見て驚いたような表情をしている。

「お兄様!?」

その膠着の中、真っ先に反応したのはティカだった。その台詞で今飛び出して来た相手がスレイターだと気付いた四郎は沈黙を保つ事を選択した。

「ティカ!?どうしてここに…!」

「どうしてってもちろんお兄様を助けに来たのよ!」

どうやらティカを含めたファーフード家の面々はティカが冒険者として旅に出た事をスレイターに伝えていなかったらしく彼ははた目で分かるほどに狼狽していた。

「…助けにって…今すぐここから離れるんだ!たった今この森で災害級の存在が確認された。もう一介の冒険者たちの解決出来る範疇じゃない。俺はこのまま王都騎士団まで応援を要請しに行く」

「要請なら今すぐ<光字>で連絡すればいいじゃない」

そう言ったティカに四郎は口を挟んだ。

「ジャミングだ。どうやらこの森は<光字>を送るのに必要な力が妨害されてるらしい」

簡単に言えば電波が通じてないという事なのだがそれをティカに説明するのも大変なので簡潔に述べた。

「その通りだ。…ええとそれで君たちは?」

「シロー・タチバナ。妹さんの所属してるチーム<救いの手>のリーダーだ」

「同じく<救いの手>所属のミリー・サウノーズンです」

「そうか。妹が世話になってるな。さっきの話を聞いていたなら分かると思うが今すぐここを離れた方がいい」

スレイターは真剣な顔をして三人に忠告する。いや忠告というよりも命令に近いものだった。それを聞いて四郎がニヤリと笑う。

「そいつは出来ないな。俺はこの奥にいる<ドラッグマーカー>を倒しに来たんだからな」

「っ!?何故君はそれを知ってるんだ。それに<ドラッグマーカー>を倒しに来たなんて冗談もほどほどにしてくれ」

呆れたように肩をすくめるスレイター。口調が慌てているからなのかいまいち一貫性がない。貴族としての口調とスレイター個人の口調が入り混じっている感じだ。

「冗談じゃないさ。とにかく俺は奥へ行く」

四郎はそれだけ言って奥へと走り出す。それに続くようにミリーも走り出す。その場に残されたのはティカとスレイターだけだった。

「な、何なんだアイツらは!!自分から死にに行くなんてバカげている!」

そう言いつつも二人が<ドラッグマーカー>の所に向かった事によりカトンの生存の確率が上がったので内心は複雑な気持ちだった。

「大丈夫よお兄様!あの二人はかなり強いし。特に師匠なんて通常時で災害級だし」

「…お前があの二人を信じてるのは分かった。俺が二人の様子を見に行くからお前は王都へ連絡に行ってくれ」

妹の仲間を見捨てる訳にはいかず苦肉の策を選択するスレイター。しかしティカはそんな事は意に介さない。

「あたしも二人の所へ行くわ」

結局その場からティカも走り去ってしまいスレイターだけが残された。

「分かったよ!分かりましたよ!!行けばいんだろクソっ!!」

スレイターは半ばヤケクソ気味に叫んで三人を追い掛けて行った。

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