スレイターに会おう3
「さっさとスレイターを探すか」
「ちょっとなにお兄様を呼びすてにしてんのよ!」
相も変わらずティカは沸点が低い上に騒がしい。まぁこれ位騒いでいれば向こうも俺たちの存在に気付くだろうから構わないが。
「はいはい」
とりあえず返事だけはしておく。
「………」
「ミリーどした?」
森に入ってから喋らなくなったミリーに声を掛ける。やはり原因はこの不吉な違和感なのだろう。
「嫌な予感がします」
ミリーは竜だから第六感が人間より優れている。だからこそミリーのその言葉を無碍に扱う事は出来ない。
「嫌な予感?」
「ええ、恐らくは何かしらの魔物がいるのかもしれません」
「師匠とミリーがいれば大抵なんとかなるから平気でしょ」
深刻そうなミリーに対し、ティカはあくまでも楽観的だ。俺ももちろん深刻に捉えてはいるがミリー程ではない。
「もし何かヤバいならさっさと済ませた方がいいかもな。スレイターさんの所に一気に転移するか?」
「嫌よ!そんなの風情がないじゃない」
「お前なぁ、自分の兄貴が危ないかもしれないんだぜ?」
「お兄様はそう簡単にやられる程ヤワじゃないわよ」
ティカがここまで言うのだから弱くはないのだろう。しかし所詮はただの人間だ。絶対とは言い切れない。
「ティカちゃんの言う通りこのまま普通に探しましょう。下手に転移で魔力を使ったら魔物に感知されるかもしれないですし。出来る事なら彼らと合流する前に問題を片付けたい方が良いかと」
なるほど。さすがミリーだ。伊達に何百年も生きてる訳じゃないな。
「シロー様、何か失礼な事考えてないですか?」
す、鋭い。やはり女性に年齢の話をするのは地雷だったか。ミリーの笑顔が凄く恐い。眼が笑ってないし。
「考えてない…です」
ミリーの迫力に思わず敬語になってしまった。ティカがこっちを見てにやにやしてるのが非常にムカつく。
ガサガサっ
不意に俺らの後方の茂みから音がした。とっさに俺とミリーは臨戦態勢に入る。ティカは普通に驚いている。
「誰だっ!」
大声を出し威嚇する。すると茂みの中から一匹の魔物が出て来た。見た事のない魔物だ。馬のようだが頭が二つある。しかも鬣がうねうねと動いている。
「えっ!?」
しかしどうやらミリーは知っているようだ。
「知ってるのか?」
「恐らく<カプセルユニコーン>かと」
それを聞いたティカが眼を大きく見開く。よく見ると身体が震えている。さっきまであんなに強気だっというのに。それ程ヤバい魔物なのか。
「カプセルユニコーンって災害級じゃない…」
「災害級?」
「ええ。文字通り災害級の魔物の事です。現在災害級に指定されている魔物は十種しかいません。その内の一種<カプセルユニコーン>です。特徴は鬣が千切れカプセルが出て来る事です」
災害級か。初めて聞いたな。しかも十種類しかいないのか。
「そのカプセルは何が入ってるんだ?」
「分かりません。風を起こすかもしれませんし、魔物が出てくるかもしれません。最悪病原菌や殲滅魔法が出てくる可能性だってあります。とにかく何が出てくるか全く分からないんです。しかも本体もユニコーンと同じ程の速度があり非常に厄介です」
カプセルユニコーンは俺らを見てヒヒーンと鳴くとカプセルを二つ落とし、去って行ってしまった。
「……おい、どっか行っちまったぞ」
「そうですね。しかしまだカプセルが残っています。油断はしないでおいて下さい」
それを聞いてようやくティカが武器を構える。下手にカプセルを刺激すると何が起きるか分からないのでその場で待機する。
二つのカプセルにヒビが入り、中から魔物が出てきた。どうやらニ体とも同じ魔物が出て来たようだ。紫色の鎧で出来た人型の魔物だ。
「…そ、そんな!よりにもよって<ドラッグマーカー>!?なんで災害級から災害級が出てくるのよっ!!」
ティカが半ばヤケクソ気味に叫んだ。ミリーも額に汗を浮かべている。
「こいつも災害級なのか?」
硬直している二人にとりあえず尋ねる。答えたのはミリーだった。
「はい。カプセルユニコーンと同じ災害級魔物<ドラッグマーカー>。腐敗にして不敗の異形の騎士です。気をつけて下さい」
「了解。俺は右のを殺る。ミリーは左のだ。ティカは援護を頼む」
そして森での死闘は幕を開けた。




