謝罪
シャルビィとネミリアは街で情報収集をしていた。といっても実際はただ街を歩き回っているだけだ。街の中を歩いている人たちの会話を聞いて情報を仕入れているのだ。そのため二人の間に会話はない。
今の所たいした情報は得られていない。ほとんどが武道大会の話だ。他には辛うじて王女様の回復とバロックの街で起きたテロが聞けるくらいだ。
「他の街に行こうからしね。これ以上は大した情報も得られなさそうだし」
「そうだな。ただバロックはあれだし…」
「なら六大都市じゃない小さな街へ行きましょう。案外そういう所の方が情報があったりするし」
「そうだな。しかし近場の街だとここと大して変わらないだろうし少し離れた街に行こう」
「そうねぇー、コルク村とかどうかしら?」
「確か…ガルトの近くにある村だったな」
「ええ。途中でガルトに寄ればそこの情報も多少は仕入れられるかもしれないしね」
二人は話し合いの末、行き先をコルク村へと決定した。コルク村だと行って帰ってくるだけで一週間はかかるので出発する前に皆に許可を取ろうという話になりメンバーに<光字>を書いて送る。
すると四郎から全員返信が来た。
『コルク村に行くなら俺が送ってやるよ。それならすぐに行って来れるぞ』
わざわざ楽に行けるのに時間を掛ける必要もないと判断して四郎にコルク村への送り迎えを頼む事にした。
「うぃっす」
返信をするとすぐに二人の前に四郎が現れた。
「悪いわね、わざわざ」
「気にすんな。どうせ変なメイドに絡まれてただけだしな」
「「?」」
「まぁいい。とりあえずコルク村に転移させるぜ。あそこなら行った事あるから簡単に送れる」
するとその言葉にシャルビィが反応した。
「コルク村に行った事があるのか?」
「ああ。ガルトに来る前に少しな。んじゃ送るぜ。<転移:コルク村>」
二人の身体が淡い光に包まれてゆく。次第に光は強くなりその場を覆い尽くす。やがて光は収束する。光が無くなった後、そこには二人の姿はなかった。
「完了。さて宿に戻るかな」
四郎たちには亜空間に造った立派な家があるのだが街にいる間は普通に宿を取るようにしているのだ。その方が街の雰囲気を味わえるからという理由らしい。
光が収束した後、目に入った景色は二人にとって見覚えのないものだった。
「す、凄いわね…。転移魔法なんて。彼は本当に一体何者なのかしら?」
ネミリアの驚きにシャルビィは同意するように頷く。その表情は苦笑いだ。
「確かにな。それよりもここがコルク村か…」
思ったよりも地味だな、という言葉をシャルビィは辛うじて飲み込んだ。よく知りもしない場所を勝手に主観だけで判断するのは愚かだと思ったからだ。
「さっさと情報を集めちゃいましょ」
そう言って村へと入ろうとするネミリアをシャルビィが止める。
「ま、待ってくれ!」
「どうしたの?」
「ネミリアに言わなくてはならない事がある…」
シャルビィの苦しそうな、それでも踏み切ったかのような表情を見てネミリアも真剣に聞きに入る。
「何かしら?」
「……ネミリアの里を襲った黒い炎の女についてだ…。あ、あれは私の姉なんだ」
シャルビィの告白にネミリアは思わず息を呑む。
「本当にすまないと思っている。いくら身内とはいえエルフの森を燃やそうとしたんだ。覚悟は出来ている。私を殺してくれても構わない…」
頭を下げるように首を差し出すシャルビィ。姉、実際は従姉だがそれがエルフの森を燃やそうとしたのだ。これは国の首都を爆発させるのに等しい。そんなことをすれば一族全員が断頭台行き確定だ。
だからシャルビィは首をネミリアに差し出した。身内の罪に対しての償いとして。それを見たネミリアは思わず笑ってしまった。
「ふふっ」
「な、何が可笑しい!?」
「いえ、あまりにも貴女が真剣だから。でもね、貴女が姉の罪を被る必要はないのよ?」
思わなぬ言葉に動揺すりシャルビィ。
「だが本来そんな事をしたら一族皆殺しのはずだ」
「それは人間の話でしょ?私たちはエルフ。エルフにはエルフの掟があるわ。成人を越えた者の罪は自身が全て背負うっていうね。だから貴女が罰される事はないわ。だから頭を上げて」
ネミリアは諭すようにゆっくりと語りかける。
「だ、だが…」
「反論は受け付けないわ。それに貴女に責任を追及しないだけで貴女の姉にはしっかりとけじめをつけてもらうつもりだもの」
ネミリアの眼が厳しいものとなる。シャルビィはそれに対して何も言えないし、言ってはならないと思った。シャルビィの責任を追及しないという事は彼女は完全に部外者であるという事に他ならないのだから。
「ありがとうネミリア」
シャルビィはそう言って顔を上げる。そこには先ほどまでのような苦渋に満ちた表情でなく、清々しい顔をしたシャルビィがいた。もちろん自分が姉と慕っていたジェアナについて想う所は色々ある。
それでも今はネミリアと話し合えた事にシャルビィは何より満足していた。コルク村を前にして少しだけ距離が近づいた二人であった。




