姉妹
コルク村に着く頃にはすっかり日は落ちていた。
「ついに着いたぜ!」
俺はガッツポーズをする。ファンタジー世界に体一つでやってきてようやくここまで辿り着いた。少々リアクションがオーバーなのはワームの体液のせいだろう。
「ハネネ!」
突然、村の方から甲高い声が聞こえたと思ったら誰かがこちらへ駆けてくる。
「お姉ちゃん!」
その影の方へとハネネも走っていく。
二人は強く抱き合ったが俺は正直置いてけぼりだ。仲良きかな、仲良きかな。ととりあえず満足げに頷いた。
「本当にこんな遅くまで!心配したのよ?」
「ごめんなさい…。その…帰り道にジャイアントワームに襲われちゃって…」
姉の言葉にシュンとしながら答えるハネネ。ていうか、ジャイアントワームって。まんまやーん!
「ジャ、ジャイアントワーム!?」
姉の方は大分驚いているようで、声を上擦らせている。
「だ、大丈夫だったの!?怪我はない!?」
「う、うん。大丈夫。あの人が助けてくれたから」
そう言ってハネネは俺の方を指差した。姉の方はそこで初めて俺に気付いたらしい。ハネネと同じ黄金の瞳が少し見開かれたように見えた。
俺は姉妹の方へと近づく。暗くてよく分からなかったが姉もハネネに似た美人のようだった。
ただハネネと少し違うのは全体的に色素が薄く、腕や足も枝のようにやせ細っていることだった。
「妹が危ない所を助けていただきありがとうございました」
「うん、まぁ気にすんな」
俺が気さくに答えると姉は少し驚いた様な顔をした。
「黒い髪に、黒い瞳。珍しいですね…」
「そうだよ!私もびっくりしたもん」
俺の髪って珍しいのか?日本じゃ黒眼黒髪が普通だったからなぁ。
「あ、申し遅れました。ハネネの姉のミリナです」
妹と同様にお辞儀をする。ハネネの丁寧さは姉譲りか。
「俺の名前は橘四郎。少し訳あってこちらに来た」
俺も挨拶を返す。
「訳…ですか?」
少しだけ疑惑の視線を向けてくるミリナ。まぁ無理もないだろう。ここでは黒眼黒髪が珍しいらしいし、それも拍車をかけているのだろう。だけど今はその疑惑を解くよりもやらねばならない事があった。
「ああ、だけど今は体の汚れを落としたいんだが」
両手を広げて体液で汚れているのをアピールする。するとミリナは少し眉をひきつらせてから分かりました、と言って俺に着いてくるように促した。
そして俺はコルク村に足を踏み入れようと歩き始める。前方を歩いていたハネネが振り返り一言。
「ようこそ、コルク村へ!」




