おはよー王女
「おはよー王女様」
俺は未だ呆けている王女様にそう声を掛けた。
正直、王女を治す自信はあった。これから『黒の眷族』たちと戦うのには俺たち以外の力が必要だ。それだけでなくもし俺が本当に神様の言う通りに世界の破滅を防がなくてはならないなら、個人では対抗するには厳しいものがあるだろう。
だからこそ強力なパイプが必要だったのだ。特に今回、シャルビィのいたバロックの街では一般人の死者まで出ている。これを俺たちで誤魔化すのは無理だし捕まったりするのも論外だ。
そしてパイプを作るのならいずれ共闘するであろう国家が一度好都合だったのだ。パイプを作る方法は悩んだがアステリ王国には不自由王女がいると聞いてピンときた。
「それで、目が見えるようになった感想は?」
俺の質問に王女が涙する。
「嬉しい…もう一度…光が見れるなんて…嬉しいです…」
そう言って王女はワンワンと泣き出した。これで衛兵が駆け付けて来ても面倒だったので周りに<サイレント>を仕掛けておいた。
「まだそれで終わりじゃないだろ?足も治ってるんだ。こっちまで来いよ」
俺の言葉に誘導されるように王女が窓から離れる。そのまま子供のようにヨロヨロと歩きながら何とか俺の所まで辿り着く。俺は王女を倒れないように支えてやる。
「足は治したけど筋肉までは回復させてないからまぁリハビリは自分で頑張ってくれ」
王女をお姫様だっこをしてベッドへと運ぶ。まさにお姫様だっこだな。王女はあうあうと言いながら顔を赤らめて恥ずかしそうにしていた。
「あ、ありがとう…ございます…」
「ああ。んじゃFリスト交換しよーか。パイプ作るのが俺の目的だし」
「は、はい!」
王女がカードをオープンさせる。もちろんだが王女様なのでギルドには登録していない。
名前:ヒュアリス・アステリ・サンドライン
年齢:15
出身:アステリ
所属:アステリ
tpt:500万
Fリスト:80
15歳なのか。もう少し年下かと思ってた。まぁ動いたり出来ないんだから華奢なのは当然なことだろうけどな。
「んじゃ、俺のも」
俺もギルドカードをオープンさせて王女、ヒュアリスに見せる。すると彼女の表情がみるみる驚きに染まっていく。
「い、異世界って!?どこなんですか!?」
「異世界は異世界」
「しかも神の希望って…何者なんですか貴方は!?」
「シロー・タチバナ」
ヒュアリスはパニックに陥っている。まぁ仕方ないだろう。突然現れた人間が自分の病を治し、その人物は異世界人でした、なんて。今どき御伽噺でも流行らない。
「最後にこれだけは言っておこう」
俺は真剣にヒュアリスを見つめる。心なしか彼女の顔は赤い。俺に惚れたのかもしれないな。だがそれは俺が彼女を治したことによる恩義からくる勘違いな感情だ。そのうち彼女もそれに気付くだろう。
「な、何ですか?」
「…………バロックのことヨロシク!」
それだけ言って俺は闇に消えた。これで完全に隠蔽はしてくれなくても多少の配慮はしてもらえるだろう。
これでとりあえず安心…かな。
「…………バロックのことヨロシク!」
と彼はそれだけ言って突然消えてしまいました。
「え?ええ!?バロックって何のことですかー!?」
私の叫びも虚しく、何も反応はありませんでした。<光字>を使って連絡を取ってもいいのですが何だか無粋な気がしてする気にはなれませんでした。
結局、次の日に私の専属メイドのサリーに聞いてみるとバロックで爆発事件が起こったとのことです。私は物凄く驚きました。まぁ周りの人たちは私が回復してることに驚いていましたけどね。
私はとりあえず彼に言われた通り、バロックの件に情報規制を敷いて、事件の詳細を調べます。でもこれは普通の調査団には頼めないので信用のおける人に頼む必要があります。
私が選んだ人は当然、メイドのサリーです。彼女はメイド兼護衛でとても優秀な人なので大抵の事は頼めば何とかなります。あまり頼り過ぎるのもいけないんですが、サリーの事は姉のように思っているのでついつい甘えてしまいます。
「姫様、何故そのような事をお調べに?もしかして姫様のご病気が治った事に関係しているのでしょうか?」
さすがサリー。鋭いです。お父様とお母様には何とか毎晩唱え続けていた祈祷魔法のおかげだと誤魔化しておいたのですが、さすがにそれではサリーは誤魔化し切れなかったようです。
「…………そうです。私を治してくれた方との約束で…」
「治してくれた方?祈祷魔法のおかげでは無かったんですか?」
私は真実を話す事にしました。私を助けてくれた彼のことを。
「シローという名前は聞いたことないですね。しかし黒眼黒髪ですか…」
「知ってるんですか?」
「ええ。最近ギルドで最速王と呼ばれる人物が黒眼黒髪だったかと…」
「最速王…。確かに彼のギルドカードにはそんな事書いてあったような…」
「なら間違いないですね。ではバロックの件とその人物のことは私の方で色々調べておきますので姫様は無理をなさらないで下さいね」
そう言ってサリーはニコリと笑いました。でも眼は笑っていませんでした。
私の選択肢は素直に頷く以外ありませんでした。




