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白の完全無欠  作者: 広瀬コテツ
王都編
61/105

遭遇戦(四郎の場合)



 「『黒の眷族』レスカー・レインド。コードネーム黒氷。対象の男を抹殺する」

レスカーがそう告げた瞬間、周りの空気が一気に冷やされる。瞳の白い部分が黒く染まり、犬歯が伸び耳が尖る。

「お前魔族か」

俺の問い掛けには答えずにレスカーはあまりにも黒い<魔>のようなものを纏う。

 この力がただの邪悪な気配がするだけの<魔>だとは考えられない。可能性としては<神>の対の力である可能性。

「<黒氷柱>」

レスカーの方から黒い氷柱が数十本飛んでくる。俺はその氷柱を足場にし空中へと駆け上がる。そこに狙いすましたようにレスカーが現れ至近距離から伸びた爪で攻撃してくる。俺はそれを右手だけでいなすが手に違和感を感じたため、レスカーとの距離を空ける。

 そこで俺の掌を見ると綺麗に凍り付いていた。先程までレスカーと組み合っていた場所に煌めきが見える。恐らく大気中の水分が凝固したのだろう。どうやら相手の黒氷というのは伊達ではないらしい。とりあえず手に一瞬だけ<武>を大量に流し込み、氷を弾けさせる。レスカーの方へと視線を向けると彼女は何やら唱えている。

 それに気付いたと同時に俺の足下に巨大な魔法陣が現れる。

「大規模魔法か」

魔法が発動する前に<神域>で自らの身体の周りに結界をはる。魔法陣の輝きが最大となり下から大量の黒い氷が出現し、草原を一面黒い氷の世界へと変えた。これでは迂闊に<神域>から出る事が出来ない。

 まさか大規模魔法を使ってくるとは予想外だった。大規模魔法というのは戦争用の魔法のことで大勢の魔法使い達が何人も集まって陣を組み行うものだ。特徴としては魔法のイメージを定着させるために魔法の発動する位置に魔法陣を出現させる必要がある。本来、どの魔法だろうが発動させるのに魔法陣を使った方がイメージがより定着し威力が上がる。しかし魔法陣を出すのは致命的なタイムロスとなる上、魔法の出現場所も丸分かりなので対人戦などではあまり使用しない。その分戦争なら逃げ場などないので魔法陣が現れても問題ないとして威力優先で魔法陣が使われるのだ。おまけに複数の魔法使いのイメージを共通させるが大変だからという理由もある。

 レスカーはその何人もの魔法使いが集まってようやく使う事の出来る大規模魔法をたった一人で行ったのだ。これは驚嘆するべぎ事実であろう。しかし大規模魔法の発動に魔法陣を出現させたという事は魔法のイメージが定着していないと言うことだ。ならば恐らく大規模魔法の上位である殲滅魔法を使える事はないだろうと推測できる。

「<武神化>」

<神域>を解除し<武>の上に<魔>を重ねる。灰色の鎧の全身を覆われる。今回は周りに何も浮いていないシンプルなタイプの<武神化>だ。

 俺は力ずくで黒い氷を壊す。氷が砕ける音にしては異質なガキィィンという音がする。恐らくこの黒い氷は金属以上の硬度なのだろう。

「さてと、色々聞きたい事があるんだがいいかな?」

「<黒氷槍>」

レスカーの前から突き出すように黒い氷の槍が飛んでくる。俺はそれを真正面から左手一本で受け止める。槍を握った力が強過ぎて氷が粉々に砕ける。レスカーは面食らったような顔をしている。

「とりあえず倒してから話を聞くか」

灰色の鎧を武器に何も考えずに体当たりをする。レスカーはとっさに身体を氷で覆ったが衝撃までは殺せずに転がるように大地に投げ捨てられる。

 そのまま追撃をしようとすると左右からニ体の黒い氷で出来た人形が現れる。左右から繰り出される絶妙なタイミングの攻撃に俺は回避を選択する。距離を開けて音速の拳を放ち、氷人形を砕く。バラバラになった氷の破片は見えない刃となり俺の方へと卒倒する。

「芸が細かいな」

右足で大地を思い切り踏み鳴らし、砂礫を巻き上げる。砂礫が氷を相殺する。一気に視界が悪くなった。

 その隙を狙ったかのようにレスカーが俺の後ろに回り込んでくる。レスカーから黒い霧が撒き散らされる。視界が更に悪くなる。

「<凝固>」

途端に黒い霧が収縮し、俺に纏わりついてくる。黒い氷が鎧を浸食せんと進攻してくる。俺は<武神化>を解いて、氷も一緒に霧散させた。

「<光祝砲>」

右手からレスカーに向かいレーザービームを放つ。直線軌道で分かりやすいがかなりの速さなので軌道が分かっていても避けられまい。

 レスカーはかわせるだけかわし、残りは氷で防いだ。上手い判断だ。どちらか片方だけだったらかなりのダメージを喰らっていただろう。

「邪神器<レヴィアタン>」

レスカーは懐から螺旋状にねじれたアイスピックを取り出した。それに大量の黒い<魔>を注ぎ込む。

 アイスピックが巨大化し俺へと迫って来る。それを左手でいなそうとする。すると左手にアイスピックが絡みついた。

「ん?」

そのままアイスピックが俺の腹部を貫いた。腹から大量の血液が零れ落ちる。普通なら三分も保たずにお陀仏だろう。

「故に私はねじれる」

レスカーはまるで俺を親の仇であるかのように憎しみの籠もった眼で見つめてくる。

「そろそろ真面目に戦うか」

腹をアイスピックで貫かれたまま俺はレスカーに向かってニヤリと笑いかけた。

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