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白の完全無欠  作者: 広瀬コテツ
王都編
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遭遇戦(シャルビィの場合2)



 吹き荒れる黒い炎をただ芸もなくかわすだけのシャルビィ。心中には戸惑いがひしめいており、反撃をしようという考え自体浮かばない。

「どうしたシャル、逃げてばっかじゃ勝てないぜぇ?」

ギャハハと笑いながら黒い炎を無差別に放ち続けるジェアナ。その瞳には狂気と歓喜に満ちている。今まで自分を姉と慕い続けていた妹を追い込んでいるという快感。既にジェアナは人として壊れていた。

「姉さん…やめてくれ!私は戦いたくない!」

「ならただ死ね。邪神器グリードに斬り奪われてなぁ!」

ジェアナは双剣を構え、黒くて邪悪な魔力を双剣へ注ぐ。すると双剣が黒い影に覆われていく。ジェアナは漆黒の双剣を振るう。

「くっ…」

シャルビィは辛うじてその刃をかわす。シャルビィを捉えられなかった刃は後ろの壁に突き刺さる。その瞬間、壁が灰になった。

「なっ!?」

「ギャハハ、驚いたかい!?この剣は邪神器つってなぁ、あたし達の<邪>を吸って特殊な能力を発現させることが出来るのさ。この剣の能力は触れたモノを灰に還す能力さ」

「………」

ここに来てようやくシャルビィの思考が正常に戻った。

 目の前にある危険は確実に自分を殺す。いやそれだけではなく、この街すらも殺すだろう。

 その事に気付いた以上シャルビィは甘えてはいられなかった。自らの身体に<武>を纏う。そして対象を静かに観察する。

「ギャハハ、よーやっとやる気になったかい」

「…ああ、私は姉さんを止める!」

シャルビィは足に<武>を集中させて瞬発力を高め、炎の間を高速移動する。肉体にかかる負荷は大きい。

 一気にジェアナから離れてそのまま街の外へ向け全力で走る。ジェアナはシャルビィが街を壊されたくなくて移動した事に気付いていたが、あえて気付いていないふりをシャルビィの後を追った。

 本来、ジェアナは<魔>を専門にしていて<武>を使う事は出来ない。しかし『黒の眷族』として手に入れた力がジェアナの身体能力を底上げしていた。そのためシャルビィに追い付く事は出来なくても姿を見失わずに追うこと位は容易に出来た。

 飛び越えるように街門を越え、草原に二つの影が降り立つ。

「ギャハ、鬼ごっこは終わりかい?」

「ああ…そうだ」

シャルビィとジェアナはお互い睨み合う。始めにシャルビィが動く。フェイントを交えた動作で幾重もの形の剣筋を作る。ジェアナはこれを双剣で防ぎつつ、背後から黒い炎を放出し牽制する。

 シャルビィは密度を更に増やした<武>を細剣に纏わせることで黒い炎を切り裂く。その隙に脇から双剣が煌めく。シャルビィはそれを何とかかわす。一撃でもかすったら御陀仏だ。自然とシャルビィの意識は双剣へ向く。

「<舞黒炎>」

ジェアナが双剣と黒い炎と共に舞う。左の剣が上がれば右の剣は下がり、黒い炎は優雅に踊り狂う。黒き雅を携えた舞の前にシャルビィは剣をかわすだけで精一杯だ。黒い炎が衣服をチリチリと燃やす。

 シャルビィは後方へ下がり距離を空ける。すると黒い炎の蛇が轟音を撒き散らしながらシャルビィに迫る。シャルビィは蛇の大きく開けられた口を裂くように細剣で切り裂く。

「なかなかやるねぇ!<舞黒炎>だけじゃなく<黒炎蛇>までいなされるなんてね!でも次で最後さ!邪神器<グリード>!!」

双剣、邪神器<グリード>に大量の<邪>を注ぎ、刃に黒い炎を纏わせる。その黒い炎は蛇のようにうねり狂っている。まるで二本の炎の鞭である。

「…ならば私も本気を出そう…」

全力の相手には全力を出すのが礼儀だとばかりにシャルビィは力を集中させる。

「シロー感謝しよう。私にコレを教えてくれたことを…」

未だに未完成ながらも特訓により一部だけ使えるようになった力を解放させる。

「<武装化>」

これは四郎の使う<武神化>の劣化版。あるいは限定版。全身に纏っている<武>の上に<魔>を重ねる<武神化>に対し、<武装化>は腕と武器に纏わせた<武>の上に<魔>を重ねる技。

 シャルビィの白い細剣が赤く染まる。腕にはいつの間にか深紅の装甲がついている。

「いくぞ」

シャルビィが目にも見えない速度で細剣を振るう。すると細剣がジェアナを貫かんとして伸びる。ジェアナはとっさに炎の鞭で伸びてきた細剣を灰に還す。シャルビィは細剣が全て灰に還る前に先端だけを切り落とす。

 ジェアナが二本の鞭を器用に振るう。交わるように迫る鞭の軌道にシャルビィは細剣の焦点を合わせる。すると鞭の軌道上に赤い刃が現れ鞭を迎撃する。

 赤い刃が灰に還されている間に、炎の鞭を潜るように姿勢を低くしてジェアナに迫る。ジェアナの目前で細剣を伸ばす。

「ちっ…!」

ジェアナは首だけの動きで剣をかわすが首が僅かに斬られる。首筋に血の玉が浮かぶ。それに気付いたジェアナは笑みを浮かべる。

「いいねぇ、最高じゃん!!」

シャルビィの背後に戻って来た鞭が迫る。それを左腕を後ろに出す事により、細剣の軌道上から赤い刃を幾重にも出現させる。

 シャルビィは刃と鞭の衝突に合わせ、ジェアナの脇を転がるように抜ける。一気にジェアナの背後に回ったシャルビィは細剣を振るい、赤い刃を飛ばす。

「ぐぁっ…!!」

振り返るのが僅かに遅れたジェアナは背中にまともに赤い刃を浴びる。大量に出血しジェアナは地面に倒れる。

「私の勝ちだ、姉さん」

シャルビィは目を瞑りそう宣言した。

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