精神世界
目を開けるとそこは真っ白い世界だった。なんかデジャヴを感じるが気にしたら負けである。
「ここはまた…神様のところか?」
そんな俺の独り言に答える声があった。
「違うよ。ここは僕の精神世界さ」
現れたのは真っ白な俺だった。髪も瞳も服も肌も異常なほど白い俺。かつてこの世界に召喚される途中で出会ったもう一人の俺。
「ホワイトシローか」
「何か嫌だな。その呼び方」
クスクスとホワイトシローが笑うが本気で嫌という訳ではないらしい。
「なあ俺もやっぱ影に呑み込まれたのか?」
その問いに今度は短くクスリと笑うホワイトシロー。同じ俺のくせに何かムカつくな。いや同じ俺だからこそムカつくのか?
「そんな訳ないじゃん。あの程度の格下に侵される僕じゃないよ。まぁ外の人間たちから見れば僕も影に呑み込まれたように見えるんだけどね」
ん?紛らわしいな。俺のことも僕って呼んで、ホワイトシローのことも僕って呼んでるよ。
しかしよく分からないが大丈夫らしい。だがこれではティカを救うことが出来ない。
「大丈夫だよ。同じ影になって内側から彼女を救おうって考えでしょ?彼女の心に直接問い掛けて闇を薄くしてから影を祓うっていう。でもそんなものは僕には必要ない」
「必要ない?」
「うん。今回はそのために僕をここに呼んだんだよ。大分力を取り戻したようだしね」
力を取り戻した?
「ふふ。そうさ。前に僕と会った時、僕は僕が白くなっただけの存在だった。でも僕は根幹世界ベースに召喚されたことにより大分力を取り戻した。だから僕も僕の模倣とは違う本来の僕に戻りつつあるのさ」
口調が前と違うのもそのせいさ、とホワイトシローが付け加える。てゆうかさっき心を読まれたな。これも力が戻ったおかげなのか。
「そういうこと。それで僕としては僕にもう一段階上に逝って欲しいんだ」
「行くの字が違くね!?」
「いーや。合ってるよ。何せこれから僕が手に入れる力は神様の力だからね。十神技っていう神様のみが使える十の技だよ」
そう言ってホワイトシローが俺の頭に手を置く。すると頭の中に十神技の知識が流れ込んでくる。
「これで彼女を救う方法が分かったでしょ?分かってるとは思うけど十神技は一から十まである。一は基本の基本。十こそが神様の神髄なんだ。今の僕じゃ十までは使えないだろうけどね」
「ああ。分かってる。そういえばさっき言ってた根幹世界ベースってなんだ?」
「知らないのかい。今君がいる世界のことだよ。全て世界の基本の形で最も始めに創られた世界」
知らなかった。確かに疑問はあった。電子マネーのような通貨にメールのようなシステム。地球がこの世界のを模倣したのか。
「うんうん。まだ他にも色々あるんだけどね」
「へぇ。楽しみだな。ま、とりあえず今は地上に戻るか。サンキューなホワイトシロー」
「うん。じゃあまた最後に一つ」
嫌な予感。前回のはフラグ発言かと思いやきや何も起きなかった。
「今回は真面目だよ」
そう言ってホワイトシローは目を細めて笑う。その目は俺の目を捉えている。
「全てを受け入れて。喜びや楽しさだけではなく、悲しみも哀れみも。そうすれば僕はきっと」
「白の完全無欠になれる」