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白の完全無欠  作者: 広瀬コテツ
ギルド編
44/105



 「これは…あなたも祈祷魔法が使えるの?」

現場に着くと真っ先にウルリアが口を開いた。それを俺は短く否定する。

「空間魔法だ」

「へぇ。上級魔法も使えるのね。あなた一体何者?」

疑問も投げつつもどこか面白そうにウルリアが語りかけてくる。ヒントもあからさまにこちらを見ている訳ではないが意識はこちらへ向いている。

「ただの旅人だ。ギルドランクFだしね…」

「ふぅん。まぁいいわ。それじゃあ祈祷魔法を使うから結界を解除してくれるかしら」

「了解。ヒントとミリーも防御に徹してくれ」

「おう」

「はい」

二人の返事を確認すると俺は<神域>を解く。すると雪崩のように黒い影がこちらを襲ってくる。

「うげぇっ!?こ、<光壁>!」

「<水壁>!!」

ヒントとミリーがそれぞれの魔法で進行してくる雪崩を止める。ウルリアはこれに一切心を乱される事なく聞いたこともない言語で詠唱を続けている。

「<鎌鼬>」

俺は正面以外からやってくる影の枝を<鎌鼬>で刈り取っていく。枝自体は大したことないが数が数なので面倒だ。「キモッ!!ヤバっ!?」

絶叫しながらもヒントは絶妙なタイミングで影を防いでいく。やがて雪崩が止まりようやく漆黒に包まれたティカとミスティオが姿を現す。

「隊長…お嬢様…」

ミスティオが漆黒に染まった大剣を構える。すると疾風の如くこちらへと駆けてくる。

「隊長は俺が抑えます!!」

ヒントが自らの剣を抜きミスティオの一撃を受け止める。ミリーはウルリアを中心にさらに<水壁>を強化させる。

 ヒントはミスティオの剣技をギリギリの所で受け流していく。狭い裏路地で壁を伝いミスティオが上から奇襲を仕掛ける。ヒントはそれを後方へ下がってかわし、ミスティオの着地と同時に突きをする。それは見事にミスティオの左肩を貫通するも攻撃が効いた様子はない。

「まじかよ」

ヒントは顔をしかめながらも再び間合いをとり構える。ミスティオは防御をする必要がないので特攻の様子を見せている。

 そこであることに俺は気付いた。ミスティオの身体からは影の枝が出ていないことに。もしかしたら枝を出すのは<魔>を使う魔法使いのみなのかもしれない。しかしその代償なのかティカは自ら攻撃してくる様子はないし、あまり動いたりもしない。逆に<武>を扱うミスティオの方は枝こそ使わないが防御が必要ない分こちらが不利だ。

 いや待てよ。ミスティオは確か<武>も<魔>も使えるのはずだ。

「ヒント!!」

俺の叫びよりも僅かに早くミスティオの大剣から影の枝が飛び出てくる。ヒントは剣の側面で何とか払い落とすも、その隙にミスティオの大剣が迫る。

「<鎌鼬>!」

俺はヒントにその刃が届く前に大剣を弾く。ヒントは崩れた体勢をすぐさま立て直す。

「出来たわ!」

詠唱が終わったウルリアは両腕を真上に掲げて最後の一言を唱える。

「<親愛なる光>!」

その瞬間、温かい光が満ちる。枝たちが消滅してゆく。そして閃光が俺たちを包み、晴れる。

「…う…あ…」

影を取り除かれたミスティオがうめきながら地面に倒れ込む。慌ててヒントがそれを支える。

「………そんな…」

ウルリアの顔が絶望に染まる。

 ミスティオの影は消滅したがティカの影は消え去ってはいなかったのだ。

 どうしてミスティオの影は消滅してティカの影は消滅しなかったのか。それは恐らくティカの影の方が強い、すなわち闇が濃いからだろう。先ほどの攻撃の仕方からも分かるように影は乗っ取った人物の影響を強く受ける。強さも例外ではないはずだ。

 つまり影は乗っ取った人物の心の闇を力にしているのだ。負の欲望を強制的に引き出していると言ってもいい。その形があの黒い影たちだ。

 もしティカを影から解放したいのならティカの心の闇を取り除く必要がある。だがそれは不可能だ。心の闇とは誰にでもある。ならば強制的に取り付いている影を祓うしかない。先ほどよりも強力な祈祷魔法を唱えて。

「時間が掛かってもいい。あれよりも強力な祈祷魔法はあるか?」

「無理よ!あれが精一杯よ」

「そうか。ならアレしかないか」

俺はティカの放つ枝を払いながらティカの方へと歩いて行く。するとミリーが不安そうに尋ねる。

「シロー様?」

それには反応せずに俺はティカの前までたどり着いた。

 俺はティカに触れる。するとあっという間に俺を影たちが包んでいく。

「シロー様!!」

最後にミリーの叫びが聞こえ、俺の視界がブラックアウトした。

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