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白の完全無欠  作者: 広瀬コテツ
ギルド編
42/105

黒い影



 それは初め、俺の使う魔法の<影人形>かと思った。しかしそうではないとすぐに気付く。目の前にいる漆黒に包まれた異様なティカからは魔法を発動している様子を感じない。ただ漆黒に包まれているだけで先ほどまでのティカと全く変わらないのだ。強いて言えばうるさくないという事くらいだ。

「…お、お嬢様?」

ミスティオが狼狽しながらも漆黒のティカに歩み寄ろうとする。

 しかしティカの足元からはそれを拒絶するかのような黒い影伸び、ミスティオを突き刺そうとする。

「…っ!!」

それをミスティオをギリギリでかわし最小限の動きで大剣を振り影を斬る。斬られた影は蒸発するように姿を消した。この狭い裏路地でミスティオの大剣は不利だ。しかも相手はティカ。いくら異様になっていようがティカをミスティオが斬れるはずもない。

「ミスティオ下がれ」

それと同時にミリーとミスティオの間を縫うように<鎌鼬>を発動させる。もちろん威力はかなり抑えてある。

 しかし放った<鎌鼬>はティカの身体に吸収された。

「魔法が効かないのか?」

俺は再び<鎌鼬>を発動させる。威力は先ほどよりはかなり強い。しかし結果としてそれはティカを傷付けることはなかった。

 ただし<鎌鼬>は先ほどのようにティカの身体に吸収されることなく貫通していったのだ。これにはミリーとミスティオも目を丸くしている。

「…魔法はある程度強くないと吸収される。しかし威力が強くても攻撃自体は効果なし」

恐らく物理攻撃の方も同じだろう。ミスティオが影を斬れたのはあれが枝だったからだ。本体である幹の部分には斬った所でなんらダメージを与えられないだろう。

「シロー様、攻撃が効かないならば癒やしを。<癒やしの涙>」

ミリーが唱えた癒やしの魔法はティカの右腕を蒸発させた。

『アアアァァァッ!!!』

右腕を消されたティカが悲鳴を上げる。しかしすぐに影が伸び黒い右腕は再生させる。

「効くことには効くが、全力でやったらティカそのものが蒸発しかねないな」

「ならば光魔法だ。<閃光>!」

今度はミスティオが光魔法を唱える。光の届かなかった裏路地にパッと光が灯る。しかしティカには全く効いていない。

「…光魔法も効かないだと…?なら一体何が効くんだ」

仕返しとばかり今度はティカの足元の影が伸びてくる。先ほどまでとは速さが全然違う。ミリーが水の防壁を発動してそれを防ぐ。

「ミスティオ!!」

ミスティオの足元に壁を伝うようにやってきた影が突然現れる。ミスティオはそれを避けようとするが間に合わない。

「っ…!」

影に絡まれたミスティオは腕を振り抵抗するも一向にそれが振り払われる様子はない。むしろ影は更にミスティオを浸食していく。

 あっという間にミスティオは影に取り付かれティカ同様影共の操り人形になってしまった。

「殺すしかないか…」

殺すことなら簡単だ。物理攻撃だろうが魔法だろうが影が回復する前に全身を消滅させてしまえばいい。こいつらに対する対処法が分からない以上、無闇に被害が拡大する前に消滅させてしまったほうが良い。それが今は最善の策である。

「ダメです!中にはティカちゃんとミスティオさんが…!」

ミリーは悲痛な様子で叫ぶ。これでは殺すに殺せないな。空間魔法を使って一時的に動きを止めて、その間にヒント達騎士団と合流して策を練る。恐らくこれが今は最高の策であろう。

 最善と最高は違う。もし空間魔法が破られてしまえば確実に被害は広がる。だがもしかしたらティカとミスティオは救える。だからこれは最高の策なのである。成功した時には最高を結果をもたらすから。

「<神域>!」

神のみにしか破ることは出来ないと言われる結界。現にミリーと俺との戦いでもシャルビィを守り抜いた結界だ。

 これで影共を中に閉じ込める。外からの攻撃が中に決して届かないのと同様、中からの攻撃も決して外へは届かないからだ。影共は<神域>に包まれ結界の内側に閉じ込められる。

「よし。今からヒント達と合流して策を練るぞ!」

「はい!!」

ミリーと俺はすぐさまその場から立ち去る。ついでにこの場所に迷い込んでくる奴がいないように<人払い>と<隠匿>の両方を仕掛けておく。



 そうして俺たちは街中を捜索しているであろう騎士団と合流するため表へと戻るのだった。

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