ティカの怒り
あたしはティカ!ティカ・ファーフードよ!!このガルトの街を治めるファーフード家の次女なの。五つ上のお兄様は最近、王都アステリに行っているから遊んでもらえないし、二つ上のお姉様も最近はお父様の補佐で構ってくれないの!!だからあたしは暇に暇で暇だったのよ。こうなったら街中に出て街人たちの視線を集めてやろうと思ってお忍びで街へ出たのに全然注目されないの!!何で!?
しばらく歩いていると街人たちの噂がいくらか聞こえてきてその原因が分かったわ。どうやら奇妙な二人組がいるらしいの。一人は何とあの裏切りの一族。もう一人の方は黒眼黒髪の少年らしいわ。確かに黒眼黒髪は珍しいわね。もしかしたら魔族なのかもしれないわね。もうこうなったら直接確かめるしかないわ!!
あたしは街を練り歩き回ったわ。そしてようやく見つけたの!!でもおかしいわね。黒眼黒髪の方の少年はいたけど一緒にいるのは裏切りの一族の女じゃないわ。裏切りの一族は皆赤い髪をしているもの。でもあの女は水色。至って普通の女じゃない。所詮は街の噂だわ。ってあの女頭に角があるじゃない!?亜人!?亜人なのね!!!
「シャルビィ大丈夫かな」
「大丈夫ですよ。彼女殺しても死ななそうですし」
黒眼黒髪と亜人はどうやら街をブラブラしているだけのようね。会話の中に出てきたシャルビィっていうのは確か裏切りの一族の女の名前だったはずよ。
許せないわ!!裏切りの一族、黒眼黒髪、亜人!こんなあたしより目立つ組み合せは許せないわ!この街で一番目立っているのはあたしでないとダメなのよ!!
こうなったら直接ボコボコにして恥を晒させて街から追い出すしかないわ。
あたしはチャンスを見て黒眼黒髪に軽くぶつかった。今だわ!!
「お、わりぃ」
「…(パクパク)」
先に謝られてしまったわ。どうしよう。とりあえず引き止めなきゃ!
「ちょっと待ちなさいよ!」
ビシッと指をさして黒眼黒髪を引き止め…られない!?ならもう一回よ。
「ちょっと待ちなさいよ!!」
今のは絶対に聞こえたはずよ。なのに何で先に行っちゃうの!?もしかしてわざと無視してる?このあたしを?ゆ、ゆゆゆゆ許せないわ!!あたしはツカツカと離れていく黒眼黒髪に近づいて行く。
「アンタよアンタ!!そこの黒眼黒髪!!ちょっと待ちなさいって言ってんのよぉっ!!!」
そこまで言ってようやく黒眼黒髪が振り向いたわ。あ、さっきまでは気付かなかったけどかなりのイケメンじゃない。タイプかも!
「お嬢ちゃん何か俺に用かい?」
「お、お嬢ちゃん!?アンタ人にぶつかっておいて何なのその態度!!馬鹿なの!?」
あたしは反射的に答えていたわ。だってお嬢ちゃんってヒドいじゃない?あたしだってもう16歳よ。確かに身長は少し小さいし、胸も控え目だけど…。でも失礼だわ!!
この瞬間黒眼黒髪の死刑が決定したわ。そうしてあたしは城に戻って決闘したの。まぁ結果はあたしの圧勝だったけどね!!
あたしは今、決闘に勝ったからホクホク顔で街中を歩いているわ。なんだかスッキリしてとってもいい気分よ。お兄様やお姉様に構ってもらえた時と同じ位ね。
ぶらぶらしてると近くから聞いたことのあるような声がして来たわ。
「どうよ?俺イチ押しのリックルスープの味は」
あの声は確か、騎士団の副隊長。ヒント・ハーテナーだったわね。誰かと食事でもしてるのかしら。もしかして彼女かもね。だったら少しイジメてやろうかしら。そう思って振り返った先には予想外の人物がいたわ。
黒眼黒髪と亜人!?何でヒントと一緒にいるのよ!!
「うまうま。初めての味だぜ」
「はい。すごく美味しいです。あっさりしてて」
「ふふふ。そうだろそうだろ」
「何で隊長が得意気なんですか」
えぇ!?ミスティオまでいるじゃない!!どうしてよ。あの二人はあたしの敵だったのよ。だからコテンパンにして辱めてこの街にいられないようにしてやったのに何で仲良くなっちゃってんの!?信じられないわ。もう嫌だ。
あたしは気付くとその場から走り出していた。
「お嬢様…!?」
チラッと最後に誰かの声が聞こえたような気がした。




