決闘前
今目の前には金髪の少女がいる。ツインテールをゆらゆらと揺らしながらこちらを見ている。というより睨んでいる。迫力がないので見方によっては拗ねているようにも見える。
「覚悟はいいわね!!黒髪!!」
「………」
俺は喋らずに無言でいる。街中で何を始めるつもりだ。
(シロー様、どうなさるおつもりで?)
(逃げてもガルトにいる限りは無駄のようだし、てきとーに戦って負けるのが一番だろ)
「ちょっとちょっとー!!アンタら何あたしに内緒で話してるのよ!!」
勝手に怒り出す金髪。もう返事をするのも面倒臭い。出来ればさっさと負けて帰りたい。
「何よその顔は!!何か不満でもあるわけ!?」
いや不満しかないんだが。とはもちろん言わない。火に油だ。これだけ騒いでいるのに街の人が騒がないのは金髪がいつも騒がしいからなのだろう。
「そういえばアンタの名前まだ聞いてなかったわね。特別に名乗る事を許してあげるわ!!」
「橘四郎だ。シローと呼んでくれ」
「アンタなんかアンタで充分よ!!」
なら何故に名前を聞いた。全く無茶苦茶な奴だと思いバレないように溜め息を吐く。
「んで?お前の名前は?」
すると金髪が固まる。目を見開いて信じられないといった表情でこちらを見つめている。
「あ、あああああアンタ!!あたしの名前知らないの!?本っ当に信じらんない男ね!!いい!?あたしはティカ・ファーフード、このガルトの領主ドルリア・ファーフードの娘よ!!……三番目の」
最後にボソッと何か言ったようだがそれは聞きとれなかった。にしても領主の娘か。思った以上に厄介な人物に絡まれた。金髪、もといティカは腕を組んで胸を張っている。張るほど胸が無いのはご愛嬌ってことかな。
「あっそ。てか決闘ってここですんの?」
「…え?確かにそれもそうね!!アナタはぎったんぎったんにあたしが潰してやるわ!!」
「いやだから何処で決闘すんのって聞いてるんだけど…」
「あたしの城よ!!!騎士団やメイドたちの前で大恥かかせてやるわ!!この街にいられなくなる位にね!!!」
城?それって街の中心に見えるヤツのことか。
「わかったわかった。決闘してやるから落ち着け」
こうして俺らは城に案内される。城にシロー。なんつって。………自分で言ってて悲しくなっきた。
ティカに城へと連れていかれる。途中、人混みに隠れるようにティカの護衛らしき奴らがいることに気がついた。俺は暇だったので気配がした方向を凝視すると護衛が動揺していたりして面白かった。
「さぁ着いたわよ!!いよいよあたしが華麗で美麗で華麗な姿を魅せる時が来たわね!!!」
「今華麗って二回言いましたよね」
不機嫌そうに呟くミリー。せっかくの散歩を邪魔されて怒っているのだろう。
「ううううるさいわね!!細かい事を気にするのは小者の証拠よ!」
腰に手をあてこちらを指差して言うティカ。
城の門が開く。中から一人の騎士が出てくる。
「お帰りなさいませ、ティカ様。そちらの方々は?」
騎士が値踏みするような視線でこちらを見てくる。俺は堂々とミリーは少し居心地悪そうにしている。
「あたしの客人よ!今から騎士やメイドを全員庭に集めて!!」
「ぜ、全員ですか…。しかし今仕事中の者が…」
「全員といったら全員よ!!」
はぁ。随分と面倒な事になったなぁ。早く負けて帰るとするか。
しかしまだこれは面倒事の始まりでしかなかった。




