金髪娘
宿に戻って俺のギルドカードをミリーに見せた。すると彼女は何故かキラキラとした目でこちらを見つめてきた。
「スゴいとは知っていましたが…こんなにスゴいなんて!!今夜は一緒に寝て下さい!!」
「おい、最後おかしかっただろ」
などと言うやりとりがしばらく繰り返された後ようやく俺たちは自分の部屋(ミリーの部屋も新しく取った)で寝た。
翌日、シャルビィは一人で討伐クエストに行ってしまったので今はミリーの二人きりだ。かといって何をしているという訳でなく俺の部屋でただゴロゴロしている。
「シロー様はこの街にどれくらいいらっしゃるんですか?」
「まだニ、三日だよ~。何で~?」
ゴロゴロしているので返事も気の抜けたものとなる。
「なら街へ一緒にデー…散歩に行きませんか?」
「おぉ、いいね。あんま金ないけど大丈夫かなぁ」
という事で街へ出る事になったんだがこれが実は面倒な出来事の始まりだった。
「ふふん~ふん~ふん~」
横を歩いているミリーが楽しそうに鼻歌を歌っている。時々物珍しそうに街に視線を巡らせている。
「そういえばミリーは今までどこに住んでたんだ?」
「ミルバートって街から少し東にいった森の中ですよ」
「てことはあの子たちは捨て子か」
「はい…。時々お子さんを森に置きに来る方がいらっしゃるんで見殺しにも出来ないので…」
少し悲しそうにミリーは答える。俺は何て言おうか迷っていると誰かと肩がぶつかった。
「お、わりぃ」
とりあえず謝っておいた。
「ミリーは優しいんだなぁ」
俺は素直にミリーを誉めることにした。するとミリーは頬を赤くして顔を横に振っている。
「――――――さいよ!」
後ろから何か聞こえたような気がしたが特に気にはしない。
「もうそろそろ昼だし飯でも行くか」
「そうですね。私も歩いたのでお腹ペコペコです」
俺の提案にミリーは即賛成する。まぁ俺の意見ならミリーは何でも賛成しそうだけどな。
「ちょっと待ちなさいよ!!」
また背後から声が聞こえたような気がするが頭は既に今から何を食べるかで一杯だ。
「ガルトライスかガルトバーガーどっちがいい?」
「私はガルトライスの方が…」
「アンタよアンタ!!そこの黒髪!!ちょっと待ちなさいって言ってんのよぉっ!!!」
ミリーの台詞を遮るように入ってきた発言。どうやら俺をご指名らしい。振り返るとそこには金髪にツインテールの少女がいた。しかも黒いドレスみたいな服を着ている。
「お嬢ちゃん何か俺に用かい?」
とりあえずドレスを着ているので貴族だろうと思われる。これは貴族が必ずしもドレスを着ているという事ではなく街中でその様な目立つ格好をしているのは貴族しかいないという事だ。
「お、お嬢ちゃん!?アンタ人にぶつかっておいて何なのその態度!!馬鹿なの!?」
馬鹿、という言葉にミリーが反応する。俺はミリーに目配せをしておく。気にするな、と。少し不満気にミリーは頷いた。
ていうかこいつ。さっきぶつかった奴か。
「ちょっとちょっとー!!何で黙ってんのよっ!だいたいアンタらね最近目立ちすぎなのよ!!まぁあの赤い女は強いから目立つのは仕方ないわ。そっちの亜人も、だいたい亜人は厳しい環境で育ってるから大抵は強いし目立つのは許せるわ!!でもアンタよアンタ!!!黒眼黒髪だってだけで貴族であるあたしより目立つなんてアンタ馬鹿なの!?そうなのね!?」
上品そうな目鼻立ちとは裏腹に弾丸のように喋り続ける少女。正直やかましい。
「はぁ…すいません」
貴族相手に事を構えるつもりは無いので謝っておく。
「謝って済むなら騎士団はいらないのよ!!こうなったら決闘よ!!!アンタに身の程って奴を教えてやるわ!」
「えっと…じゃあチェンジで」
「ななななな、何がチェンジよっ!!!失礼無礼残念な奴ね!!泣いて謝ったって許さないんだから!!」
こうして俺は不本意ながら名も知らぬ金髪貴族娘と戦うことになった。




