亜人
とりあえずカードを呼び出しシャルビィに<光字>で連絡をとる。すると返信はすぐにきた。
『すぐに行く』
俺は気配を消しつつ馬車を追跡する。馬車は草原の中を猛スピードで走っており、馬と馬車には<強化>の魔法が掛けられている。炎天下の中、汗一つ流すことなく姿を<隠者>で隠し<武>を纏いながら進む。 「わざわざ猛スピードで離れていくなんて怪しいな」
俺がそう言っている間にも馬車は煙をたてながらどんどんと進んでいく。それを追いつつもシャルビィと何回か<光字>のやりとりをして合流する。
「確かに怪しいな」
「だろ?最初は奴隷商かと思ったんだが街から離れていくのを見るとそうでもないような気がしてきてな」
「いや、もしかしたら今から奴隷狩りをするのかもしれん」
その言葉に俺は眉をひそめる。地球にはかつて奴隷がいたが今はいない。故に馴染みのないその言葉に過敏に反応してしまう。だがいくら馴染みがないからと言って奴隷という言葉にいい感情を覚えるような人間は少ないだろう。もし奴隷という言葉にいい感情を覚えるような人間がいるとしたらそいつは人間の屑だ。興奮するようならただのエロだ。
「なるほど。結局追跡してみないと分からないって訳ね」
「ま、そういうことだな」
そしてそこからしばらく進んだ所で馬車が止まった。すると入り口が開き、ニ人の男の男が出てくる。一人はまるまる太ったいかにも貴族といったような服を着ている男。もう一人はそいつに付き添うように立っている防具をつけたオールバックの男。
「あれは…マルシャワイ男爵か…。何故こんな所に」
「知ってんのか?」
シャルビィは二人の男から目線を外すことなくそのまま俺の質問に答えた。
「ガルトの街に住んでいる貴族の一人だ。位は一番低い男爵。ただの下級貴族だ」
「へー。その下級貴族様が何でこんな所にねぇ」
すると、次もまた馬車から二人出て来た。一人はニメートル近くある大男で下品な顔をしている。
手には鎖を巻き付けており、その鎖はもう一方の人物へと繋がっていた。そちらは全身をぼろぼろのローブで覆われていて姿がよく分からない。多分身体の形からいって女だろう。
「恐らくあっちの女の方は奴隷みたいだな。個人取引でもするのか…」
シャルビィはぶつぶつと喋りながら考えている。
不意に奴隷らしき女がフードをとる。
「!?」
フードをとった女の頭には一本の角が生えていた。透き通るような水色の髪に、爛々と輝く黄金の瞳。さらに透き通るような肌がその神秘性をより魅せつける。全体的に透き通るような美人だった。
「…亜人なのか?」
「恐らくな。私も見るのは初めてだ」
一本角の女はマルシャワイ男爵を睨みつけながら口を開いた。
「本当に、あなた達の言うことを聞けば子供たちを開放してくれるんですか?」
しかし目線とは裏腹にその喋りには不安や悲しみがにじみ出ていた。
「ヌフッ、だからその証拠に今からガキ共に会わせてやると言っておるではないか」
マルシャワイ男爵は手につけている宝石をジャラジャラ鳴らしながら笑う。
「つまり亜人は子供たちを人質に取られて脅迫されてる訳か」
「これだから貴族は…!」
シャルビィが怒りを露わにする。俺は手をシャルビィの目の前に差し出し落ち着けと伝える。
「はい、そうでしたね。早く子供たちに会いたいです」
鎖で繋がれていることも忘れ無邪気に笑う女。亜人だから年齢は推測出来ないが見た目だけなら俺らよりも少し年上だろう。
「つまり今から子供たちが来る訳ね。一時的な再会って訳だ。まさに飴と鞭」
俺は四人の観察を続ける。
しばらくすると馬車が来た方向と反対の方向からもう一台の馬車がかけてくる。その馬車は四人のすぐ近くで止まり、まず中から二人の男
が出てきた。
「へへ、マルシャワイの旦那さんよぉ。連れて来たぜ」
出てきた男たちは下品に笑っている。しかも亜人の女をジロジロと品定めするかのように嫌らしい視線を送っていた。
「………」
シャルビィは怒りを必死に堪えているように見える。
さて、俺はどう動くべきか。と考えとりあえず見守る事にした俺だった。




