衝撃
私はFリストを交換しようと言ってくれたシローに私の秘密を話した。正直怖かった。私のFリストには六人の人間が登録されているがその内五人は親族だ。残りの一人はギルドの受け付けのヘナで、彼女はギルドの仕事で亜人とかにも慣れているので私にも偏見はなかったようだ。
しかし彼の反応は私が予想していたよりも遥かに斜め上をいった。
「…え、それだけ…?」
「……それだけって…」
シローは何を言っているんだ?あまりに驚き過ぎて混乱しているのかもしれない。無理もない。私は裏切りの一族。穢らわしい存在だ。しかし彼の次の言葉は逆に私を混乱させた。
「それだけかいっ!裏切りの一族の末裔とか知らんがな」
「…だが…」
いや知らんって…。本気で言っているのか?私は真偽を確かめる為に彼の美しい黒い瞳を覗き込む。
「だから呪い子とか言われても至極どーでもいい。でもこれだけは言える。その赤い髪と眼は俺にはすごく綺麗に見える」
その言葉に私は目を大きく見開いた。綺麗!?何を言っているんだ、この男は!?
「綺麗だと…?嘘を吐くな!こんな汚れた呪いが綺麗なはずあるわけないだろ!!」
私は反射的に反論する。この髪と眼は呪いだ。だから少しでも目立たないようにと服装も防具も赤の配色をメインにしている。これなら全身赤なので髪と眼だけに注目がいくという事はないからだ。
「てかさ、そもそも髪と眼が赤いのを呪いだと思うからいけねーんだよ。祝福だと思えばいいじゃん」
「…祝福だと?バカも休み休み言え。これのどこが祝福だ!」
「だからさぁー、血のよう赤じゃなくて燃えるような赤ってことだよ。裏切りの一族は風当たりが強いからそれに負けないように、燃え続けるのを忘れないようにってことで赤いんだよ」
その言葉に私は動けなくなる。私の赤は呪いではなく、祝福…?燃え続けるための。私が私でいるための赤だというのか。
「燃えるような赤…。燃え続ける…?祝福…」
私は何度もその言葉は繰り返す。まるで自分の内側にそれを刷り込むように。
そして唐突に気付く。そうだ。
捉え方次第だったんだ。呪いだって見方を変えれば祝福。私はただ自分が裏切りの一族だからと諦めていただけだ。何よりもルーランを馬鹿にしていたのは自分自身だ。
だから呪いという逃げ場を作って
赤という憎悪の対象を作った
何てバカバカしい。私は笑わずにはいられなかった。
「アハハハハハハ!!!」
シローや周りの人が引いている。それでも私は笑い続ける。
「あんな事言われたのは初めてだ。呪いだと悩んでた私がバカバカしく思える」
ひとしきり笑った後、涙を拭いながら言った。
「ふ、そんなに嬉しいなら俺の胸に飛び込んで来てもいいんだぜ?」
その言葉に思わず飛び込みたくなるが我慢する。その代わり一発殴ってやった。
「調子に乗んな」
「んじゃFリスト交換しようぜ」
「ああ。これが私のギルドカードだ」
私はギルドカードをシローに見せる。
「次はお前のを見せてくれ」
「……Fリストって見せなくても交換出来るんだよね?」
シローが戸惑ったような顔をする。
「確かに出来るがこれからフレンドになろうというのにそれはあまりにも失礼だぞ」
「う…。確かに」
「それともやっぱり私とFリスト交換するのが嫌になったのか?」
そうではないと確信しているが意地悪をしてみる。
「そういう訳じゃないんだけどね」
「見せるのはいいけど質問は禁止な?」
薄々察してはいたがシローもどうやらワケありのようだ。だが私は全てを受け入れてくれたシローの事情ならいくらでも受け入れてやろうと思う。
「ああ。他人の領域にズカズカと踏み込む程私は図々しくないから安心しろ」
私はシローに微笑む。するとシローは半ばやけくそ気味にギルドカードを見せてくれた。
さて、どんな事情があるのやらと思い覗き込む。そして今度は私が凍りつく番だった。




