辛苦の悩み
ポイント(お金)を持っていなかった俺は事情を話して今日だけは特別にギルドに泊めてもらった。おかげさまで受け付け嬢の名前はヘナさんという事が判明した。
そして翌日、ギルドの前でシャルビィが来るのを待つ。すると待ち始めて数分でシャルビィがやってきた。
「おはよっす!」
俺は明るく挨拶をするが対するシャルビィはやや呆れ顔だ。
「…お前なぁ、ポイント持ってないなら言ってくれ。ヘナから聞いたぞ、ギルドに泊まったんだって?」
呆れ顔だが昨日より表情が柔らかくなっている。まぁ少しは打ち解けたという事だろう。Fリストには登録されない程度にね…。
「…ああ。すっかり忘れてたんだ」
「はぁ…。なら今からとりあえず必要な物を買いに行くから着いて来い。昨日手伝ってくれたお礼だ」
手伝ったというよりシャルビィの獲物を吹っ飛ばして余計な迷惑をかけた記憶しか無いんだが。本人がああいっているのだから好意は素直に受け取っておくべきだろう。
「わかった。助かるよ」
「ならまずは宿だ。安い場所知ってるから行くぞ」
しばらく歩くと「大福帝」という看板が見えた。大福帝ってどんな帝だよ。帝の字それじゃないだろ、と思いつつも中に入る。
「ららららっしゃい!ウェルカムだよん!!」
シルクハットを被ったスーツの女性が俺たちを出迎える。
「すまない、部屋を二つ。1ヶ月ほどだ」
「あいよん!ポイントは先払いだよん!占めて6万tptだよん」
シャルビィはカードを開いてポイントを渡す。
「シャルビィ様にシロー様ですねん。まいどん!」
「ではまた来る」
そう言って踵を返すシャルビィ。俺も慌ててそれに着いて行く。宿を出るとギルドとは違う方向へと歩いていく。どうやらまだ俺の世話をしてくれるらしい。面倒見が案外いいんだな。
ふと、周りからの視線が気になった。昨日と同じように珍しいものを見るように皆俺を見ている。そして気付いた。蔑みの視線は俺ではなくシャルビィに向いている事に。
シャルビィがこちらを見る。俺が気付いた事に気付いたみたいだ。
「昨日のFリストの件だが…シローは本当にいいのか?」
シャルビィは困惑の視線で問いかける。その瞳の奧に悲しみが詰まっているのが見えた。
「なにがだ?」
「お前は本当に何も知らないんだな…。まぁいい。教えてやる。私がどうして蔑みの視線を受けているのか」
自嘲気味に笑う。
「私は裏切りの一族の末裔。呪い子なんだ」
「のろい子?」
「呪い子だ。私の先祖はかつてこの国、アステルを裏切った一族なんだ。そしてこの赤い髪と深紅の瞳がその証拠だ」
「な、なるほど…。それで?」
段々重い話になってきた。俺はゴクリと生唾をのみ込む。
「いや…それで…って。だから私は呪い子でこの国の嫌われ者なんだ」
「それからの~?」
「そ、それからの!?いやだから!私といると迷惑を掛けるかもしれないし、裏切りの一族である私を受け入れられるのかって聞いているんだ!!気持ち悪いだろう!?この血のように汚れた髪と眼の赤が!!」
「…え、それだけ…?」
「……それだけって…」
お互いがワケ分からないって顔をしたまま時間だけが過ぎていった。




