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白の完全無欠  作者: 広瀬コテツ
コルク村編
12/105

夜の狩人



 「…という訳で目の前にでっかいカブトムシがいます!」

誰に言っているのか分からないが、何か言わないといけないような気がしたので言ってみた。

 目の前のデカブトムシ(←命名してみた)には恐らく並み攻撃は通じないだろう。あの頑丈な甲殻は伊達ではないだろう。


「ゴオオォォッ!!!」


先に動いたのはデカブトムシだった。羽を震わせ、風の刃は放ってきた。それも6発。俺はあえて前へ飛び上がり、刃と刃の間をくぐり抜けデカブトムシとの距離を詰める。

 デカブトムシは休むことなく次の風の刃を放ってきた。距離が近い分かわすのは難しいはずだが、今の俺は<武>を纏っているので何ら問題はない。

 呆気なくデカブトムシの前まで近づくと俺は拳を放った。


バコオオォォン!!!


と盛大な音がしてこれまた呆気なくデカブトムシは…



ザクッ!!


「痛ったーー!!??」



 死んでなかった。しかも油断して思い切り角で刺された。勝利のポーズを決めている最中だったので避ける事は出来なかったのが悔しい。

「…くッ!なかなかやるじゃないか」

本気になればデカブトムシを倒せる方法はいくらでもある。

 ただ単純に今より<武>を強化すれば一発殴るだけで事足りる。全力で<魔>を纏って一番弱い魔法であるファイアを唱えればデカブトムシどころか森すら焼き尽くせる。

 しかしそんなつまらない事はしない。これは橘四郎としてのプライドだ。先ほど傷はないとはいえ油断して一撃貰って醜態を晒した。誰が見ている訳でもないがそれを俺、橘四郎は許しはしない。

「結局、俺はクールぶってるけど全然クールじゃねーわな」

むしろテンション上がると謎のギャグとか大ボケもかますしな、と苦笑気味に笑う。

「んじゃ今から面白いもんを見せてやるよ」

「ゴオオォォッ!!!」

俺の言葉に合わせるようにデカブトムシが叫ぶ。

 俺はその叫びを軽く受け流し、集中する。身体を強化する<武>を更に強める。そして叫ぶ。


「<武神化>!」

<武>を纏っているその上に魔法を使うための力である<魔>を重ねる。

 纏っていた<武>はその上の<魔>を吸収し、本来見えないはずの<武>が具現化する。


 全身が漆黒の鎧で覆われる。背後には大きなケルト十字のようなものが浮かんでいる。その神々しさと強さから俺はこれを<武神化>と呼んでいる。

 あまりの威圧にデカブトムシだけでなく森も大気も揺れている。しかしこれでも<武神化>の出力は抑えている。出力の目安としては色が濃いほど出力が弱い。つまり純白が一番強いことになるが今回は漆黒。出力最低ランクだ。

「ゴォォッ、ゴオオオォォッ!!!」

デカブトムシが俺の威圧に耐えられず突進してくる。

 俺は突っ込んで来たデカブトムシの角を片手でつかみ取り枝を折るよりも容易く折った。

「ゴオオォォッャアアァァッ!!!!」

明らかに先ほどまでとは違う苦痛の叫び。俺は容赦する事デカブトムシに拳をふるった。その拳はデカブトムシの身体には直接当たらなかったが、その風圧だけでデカブトムシの全身は後片もなく砕けた。

 俺は<武神化>を解いてとりあえず手に持っている角をポケットに入れた。とはいっても半分以上ポケットからはみ出ているが。


 そして周りを見渡し次にやるべき事を考え始めた。

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