0-2話 崩れた日常と選ばれた再出発 2
幽霊となって事故現場へ戻ってきた春香。
果たしてお母さんに会えるのか!?
気づいたとき、私は事故現場に立っていた。
「……ここ」
さっきまでいた場所。
でも——全部が壊れてる。
「ひどい……私たち、こんな事故に巻き込まれたんだ……」
頭の中に、さっきの光景がよみがえる。
そのとき。
『リミットは1時間じゃ。時間が来れば自動で戻るようにしておる。気をつけるのじゃ』
神様の声が、頭の中に響いた。
『では、1時間後に会おう』
「……1時間」
短い。短すぎる。
周りを見渡すと、私たちの体はすでに救急隊に囲まれていた。
応急処置が行われている。
でも——
「……助からない、んだよね」
神様のところにいた時点で、答えは出てる。
視線をそらす。
壊れた車。
マンションの入口を突き破って、壁にめり込んで止まっている。
「……私が寝坊なんてしなければ」
ぽつりと、言葉がこぼれた。
そんなこと、今さら言っても意味ないのに。
サイレンの音が近づく。
救急車が何台も到着して、私たちは運ばれていった。
「……病院、か」
ママ、来るよね。
「……会えるかな」
私は、そのまま救急車のあとを追いかけた。
病院に着くと、すぐに手術室へ運ばれていく。
「……うわ、無理」
さすがに、自分の手術シーンを見る勇気はなかったので私は廊下で待つことにした。
——数十分後。
バタバタと走ってくる足音。
「春香……っ!」
ママだった。
顔はぐちゃぐちゃで、息も乱れてる。
「お願い……お願いだから……一人にしないで……」
その姿を見た瞬間、胸が締めつけられた。
「ママ……」
声は届かない。
……はずだった。
手術室の扉が開く。
医者が出てきた。
「娘は……娘はどうなんですか!?」
「……誠に残念ですが——」
その先は、聞きたくなかった。
「……………」
「——っ、なんでよ!!」
ママが医者の服をつかんで叫ぶ。
「なんでなのよ!!」
その姿が、痛くて見ていられない。
「どうにかしてよ……これからどうしたらいいの……」
震える声。
崩れ落ちる体。
「……」
私は、何もできない。
何も言えない。
——そう、思っていた。
「……あいつを殺せばいい」
「え……?」
ママが、ぽつりとつぶやく。
「事故を起こしたやつ……殺せば……全部元に戻るよね……?」
「ママ……?」
その目は、完全におかしくなっていた。
「春香も、戻ってくるよね……?」
「——ダメ!!」
気づいたら、叫んでいた。
「そんなことしちゃダメ!!私はそんなの望んでない!!」
空気が、止まる。
「……その声」
ママが顔を上げる。
「春香……?」
「……うん」
「そこにいるの!?いるなら返事して!」
「いるよ、ママ」
ママの目から、涙があふれる。
「うん!?じゃないわよ……あんた、死んだって……!」
「うん、たぶん死んだ」
「じゃあなんで……!」
「ママが願ったからでしょ?」
「え……?」
「もう一度話したいって」
ママが、息をのむ。
「春香……ごめんね……朝、起こしてあげられなくて……」
「違うよ」
私はすぐに言った。
「私がアラーム直すの忘れてただけ。ママのせいじゃない」
「でも……!」
「私のせいでもあるの。だから、ママだけが悪いみたいに思うの、やめて」
少しの沈黙。
「……ありがとね、春香」
「うん」
少しだけ、空気がやわらぐ。
「私の部屋のもの、邪魔だったら片付けてもいいからね」
「できるわけないでしょ……」
即答だった。
ちょっとだけ、笑いそうになる。
「そっか。じゃあ、大事にしててね」
「当たり前よ……」
「あとさ」
私は少しだけ声を明るくした。
「昨日のテーマパーク、楽しかった!」
「……っ」
「最後になっちゃったけどさ、ほんと楽しかったよ」
「……知ってたの?仕事休んだの」
「うん、なんとなく」
「そっか……休んだかいがあったわね」
ママが、少しだけ笑った。
——その瞬間。
「あ……」
お母さんに少しだけ見えていたであろう体が、少しずつ透けていく。
「……時間、か」
思ったより早い。
「春香……?」
「ごめん、ママ。そろそろ戻らないといけないみたい」
「なんで!?まだ——」
「時間があって決まりなんだって」
体が、どんどん光に変わっていく。
「いや……行かないで……!」
「ママ」
最後に、ちゃんと伝えないと。
「ここまで育ててくれて、ありがとう」
「……っ」
「これからも、ちゃんと幸せになってね」
「無理よそんなの……!」
「大丈夫。よかったらときどき私のこと思い出して欲しいな」
私は笑った。
「ママならできるよ」
光が、体からこぼれていく。
「さよなら、春香!!」
「……うん」
もう、ほとんど見えない。
「さよなら、ママ」
——ありがとう。
そう心の中でつぶやいた瞬間。
視界が、真っ白に弾けた。
気づくと、またあの空間に戻っていた。
「戻ったか」
神様が立っている。
「どうだったかね?」
「……うん」
私は小さくうなずく。
「行ってよかった」
私は気持ちがぐちゃぐちゃになっていたけど確かに言えるのは最後伝えられてよかったってこと
「そうか」
神様が、静かに笑った。
「では、そろそろじゃな」
足元に、青い魔法陣が浮かび上がる。
「この上に立つのじゃ」
「わかったー」
みんなで顔を見合わせて、うなずく。
そして、魔法陣の上へ。
「それでは——行ってくるのじゃ!」
神様が指を振り下ろす。
次の瞬間、視界が光に包まれた。
こうして——
私たちの、異世界での人生が始まる。
ついに異世界へ!
どんな世界なのか楽しみ!
どうなるか楽しみだね!
次回へ続く。




