決別
ちょっと後味のつらい7部分目になってしまったかもしれません!
「俺たちの世界にはたくさんの敵がいて、少しでも守りを緩めれば、あっという間に殺されてしまうんです」
ハーミはザザを横抱きにして歩く。常時眠りにつかされた彼に、歩行機能はほぼないはずだからだ。
「だから水精の力を使って、守りを固めました。それでも、水精域の中に、危険にさらされている人がまだまだいます。未だに水精の全ての力を引き出せていないからです」
彼らの後ろには十数人ていどの防人がついていた。
「ザザ、君は水精の力を引き出すための鍵なんです。あの先に水精の意識の核というべき部分がおさまっています」
狭く長い通路を抜けた先には、広々とした空洞の空間があった。青白い光のかたまりを取り囲むように水と氷の柱が建てられている。ここが祭壇の心臓部である。
「今まで、ひとりぼっちで眠らせていて悪かったですね。今度からは、兄ちゃんも一緒ですよ。ずっと」
柱と柱が絡まった根元、そこにいつもザザが寝かされているのよりも、ひときわ厚く大きな柩が備えられていた。
「みんなの平和のために、みんなが平等を得るために、水精に言うことを聞かせてはくれませんか?」
「兄ちゃん、水精がここに留まり続けたら、世界中の水の流れが狂ってしまいます…………ハーミ、これは平等ではありません。このままではいけないのです」
「ッ──甘き露に溺れよ、酔いの夢に微睡め、汝人の子よ、ザザ……」
「我が名はミトラ! 友愛に依る契約を司りし者! 履行司る伴侶と共に──ヴァルナ!!!」
ハーミとっさにザザ──ミトラを投げ捨て距離を取る。
ミトラの叫びに呼応して、青白い光が強く輝いた。ハーミに同行した者や、水精を制御する柱を維持する者たちの中で逃げ遅れた数人を、水球を呼び出して絡め取る。
「……ふっ、はははっ。ああも自在に水を操れるとは」
ハーミから柔らかな表情が消えていた。
「水精の側から人間、特にきみに意識を向けられないように手は尽くしてきたつもりですが、突破されてしまったようで悔しいですね……殺す気ですか?」
「他精域と友好を結んで下さい。そして水精を開放して下さい」
「できるわけがないでしょう……ッ?!」
「きっとできます! 開放を目指す水精域の仲間たちと協力すれば……」
「傍観者の分際で、わかったような口を叩くな!!!……そこまで知ってしまったのなら、意識の上書きは難しそうですね。死んで下さい、ザザムシ」




