84 セルヴという男
前話の最後を改稿しました。
静かな住宅地、最近作られたであろう新しい家が立ち並ぶエリアに足を踏み入れる。
道は真っ直ぐに続いていて、事前に計画して作られた住宅地のようだった。
人形はワーディルの屋敷があった郊外から街の中央付近の住宅街へと移動していた。
フードを深く被っており、すれ違う人からはその顔は良く見えない。
人形の後を追い続けて数刻、人通りは少なくなったものの立ち並ぶ建物は大きくかつ綺麗になってくる。
どの家も高い塀に囲まれ、時折柵の隙間から見える敷地は広く、庭師が作業をしているのが見えた。
番犬を飼っている家もあり、歩いている人形を見つけ吼え始める。
だが人形は番犬に見向きもせずそのまま歩いていった。
そのまましばらく歩き続けると一際高い塀に囲まれた家に辿り着いた。
他の家よりも塀が高く、かつ敷地も広い。
四方を広い道に囲まれており隣り合っている家が無い為、この一角だけポツンと取り残された印象を受ける。
そんな家を半周したところで人形が門へと辿り着く。
門は人形が前に立つと自動で開き始めた。
そのまま敷地内へと入っていき、屋敷の中へと消えていく。
そして人形が屋敷に入ったのと同時に鉄門が音を立てながら閉り始めた。
急いで身を滑り込ませ敷地内へと入る。
人形の後を追い屋敷内へと入る。
この屋敷もワーディルの屋敷同様人の気配が無い。
その上、此方の屋敷は生活感すら感じられなかった。
廊下を歩くと壁沿いに飾られた絵画や調度品が目に入る。
だがそれらには薄く埃が積もっていた。
廊下の端にも同じく埃が積もっいる。
誰かが出入りはしている、しかし掃除はしていない。
そんな印象を受けた。
しばらく歩き続けると廊下の端で人形が立ち止まっていたのが見えた。
何もない唯の廊下の行き止まり、だが人形が壁に触れるような動作をすると壁がゆっくりと動き始める。
ズズッという重たい音と共に壁が横へと移動し、奥に新しく空間が生まれる。
人形は奥の空間へと進んでいく、その後を追っていくと下へと降る階段があった。
後を追うため、階段を慎重に一歩一歩降る。
しばらくの間は無機質な灰色の壁が続いていた。
階段の所々に明りを灯す魔道具が設置されており、魔道具が放つ黄色い光が足元を照らしている。
そのまま階段を下まで降りると無機質な金属製の扉が目に入る。
ドアノブに触れるとひんやり冷たい。
音を立てないようゆっくりとその扉を開けると、その先は開けた空間だった。
高さは自分の背三つか四つ分の高さ。
床はタイルが敷き詰められ、壁には打ちっぱなしのコンクリートが地肌を晒している。
天井には明りを灯す魔道具が等間隔で設置されていた。
そんな部屋の中央には不自然に椅子が一つ置かれている
椅子には一人の人物が足を組みながら座り込んでいた。
黒いズボンに黒い服、黒髪の十代中ごろの少年のようだった。
上着は襟を立ててボタンを留めずに着崩している。
その人物は右目を手で遮っていたが、ゆっくりと腕を下ろし、閉じていた右目を開く。
左目の黒い目と違い、透き通るような青色をしていた。
「へえ、本当に姿の見えない人間がいるんだな」
姿の見えないはずのこちらを認識しているかのような発言だった。
「ようこそ透明人間君、僕がハウゼントゥルムのボス、セルヴだ」




