75 旅立ち
台座の形をした魔道具がある。
先日鑑定屋から引き取った魔道具の一つだ。
『転移台座』と呼ばれるこの魔道具は二つ揃って始めて効果を発揮する。
台座の上に乗り、台座の中央にあるスイッチを押せばもう一つの台座へと移動できる。
台座には二つのランプがあり、一つ目の赤いランプが点灯していれば離れた位置にある片割れが起動している証だ。
そして二つ目の青いランプも点灯していると、もう一つの台座へ安全に移動できるという印なのだそうだ。
今、目の前にある転移台座のランプはどちらも点灯していない。
そもそも二つで一つの魔道具なのに一つしか『神の収納箱』には入っていなかった。
鑑定屋から引き取った魔道具、その中で起動できなかったのはこの『転移台座』だけだ。
効果を確かめたかったのでどうにか起動できないかと『転移台座』を入念に調べている。
良く良く見れば台座の端に魔石が嵌まるくらいの大きなくぼみがあるのを見つけた。
丸いくぼみには何やら薄い金属が張り巡らされており、いかにもここに何かを入れるために空いているような窪みだった。
(丸い窪み……魔石か?)
『転移台座』にはどの魔道具にも埋め込まれているはずの魔石が見当たらない。
物は試しと『神の収納箱』に入っていた親指サイズの魔石を取り出し、くぼみにいれてみる。
カランという音と共に魔石がくぼみの中へと転がり落ちた。
だが『転移台座』が起動する気配はない。
くぼみに入れた魔石を取り出し考える。
(どうすれば魔道具を起動できるだろうか?)
この台座、おそらくどこかに『転移台座』の片割れが置かれているのだろう。
ストーク君が移動の為に設置していた可能性が高い。
(移動先に行けばストーク君が何をしようとしていたのか分かるのではないか?)
最後にストーク君がしていた行動を思い返す。
ストーク君は謎の鍵を使ってストーク君は仮面を割った。
そして割れた仮面の中から巨大な魔石が転がり落ちたのは覚えている。
(あの巨大な魔石は『神の収納箱』の中にあるはずだ)
巨大な魔石を思い描きながら『神の収納箱』に右手を突っ込む。
取り出した巨大な魔石を転移台座の窪みへとはめ込んだ。
すると魔石を窪みに嵌めた瞬間、窪みにあった波状の金属が魔石を絡めとる。
薄い金属が魔石を包み込み、動かないよう固定し始める。
そして『転移台座』から機械が動き出したときのような起動音が聞こえてきた。
台座に点いていた二つのランプに赤い光と青い光が灯る。
(起動した!?)
『転移台座』を改めてみる。
台座の上にはスイッチがある、起動した証なのかそのスイッチは青白い光を発していた。
これでスイッチを押せばもう片方の台座がある場所へ移動できるのだろう。
移動先はおそらくストーク君が逃げようとした先だ。
(転移先には何があるのだろうか?)
ストーク君の隠れ家に繋がっているのだろうか、それとも何もない廃屋という可能性もある。
ハウゼントゥルムのアジトに繋がっているという可能性もありそうだ。
(転移先でハウゼントゥルムの構成員がいればその時は……)
とにかく一度使用してみようと思った。
転移先を確認して周辺の探索をしよう。
そう決めて『転移台座』の上に乗る。
そして屈んでスイッチを押そうとしたその時、寝床に続く階段を誰かが降りてくる音がして動きを止めた。
音の先に視線を送る。
階段をゆっくりと降りる音がする、その足音は天幕の少し前で一度止まった。
だが再び歩き出し天幕を潜ってくる。
そうして天幕を潜って現れたのはフォールゥだった。
「クロムウェル様?」
台座の上で何かをしようとしている俺を見てフォールゥが動きを止める。
転移先は危険かもしれない、転移先がハウゼントゥルムの本拠地ならば尚更だ。
それにフォールゥが持っている丸い球は俺と相性が悪い。
だからフォールゥは連れて行かない。
「ちょっと出かけてくる、フォールゥはここで待っていて欲しい」
『霧の小型灯』を使い仮面と外套を透明にする。
そうして転移台座のスイッチを押した。




