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異世界の透明人間~魔道具を駆使する暗殺者~  作者: 城戸一
八章 魔道具を駆使する暗殺者
74/88

74 確認

 スラムの奥深く、ビル郡が残る薄暗い道を一人で歩く。


 目指しているのは先日ハウゼントゥルムの構成員と戦った場所だ。


 あの時にストーク君が使用した魔道具がまだ残っているのなら回収しようと思ったのだ。



 あれからかなり日は開いている、何も残ってはいないだろうが念のためだ。



 足早に周囲を見回しながら目的の場所に辿り着く。


 大量にあったハウゼントゥルムの構成員の死体は跡形も無く消えていた。



 掃除屋が処理したのだろう、死体と一緒に魔道具も無くなっている。



 ストーク君が使っていた大剣に杯、ハウゼントゥルムが使っていた手鏡と白い杖も無くなっていた。


 それでもまだ取りこぼしがないか確認するためビルの壁伝いにゆっくりと確認しながら歩き回る。


 建物の影やビル郡の隙間、割れた窓ガラスの先や角に積まれたゴミの山などくまなく探す。


 日陰の岩の陰には見たことの無い虫が数匹蠢いていた。


 それらを無視しながら端にある側溝に目を向けると妙な光が反射している事に気がついた。



 夕日に照らされ、側溝を覆っている金属製の蓋の隙間から光が反射しているのだ。



 側溝の蓋を両手で掴み持ち上げる。


 隠れるように転がっていた黒い何かを手に取った。


 黒くて丸い宝石のような物だ、良く見れば中で黒い靄が動いているように見える。




 (これは魔石か?)


 そうして思い出す。


 ストーク君が死の間際、鍵型の魔道具を使って仮面を破壊したことを。


 壊れた仮面から黒く丸い物が出てきて転がっていった。



 良く見れば大きさはその時の魔石に似ている。


 手のひら大の巨大な魔石、なぜ仮面からこんな物が出てきたのかは分からない、だが長年共に過ごしであろう魔石だ。


 懐にしまっていた銀色のスイッチを押し『神の収納箱』を起動する。


 揺らいだ右の空間の中に拾った魔石を放り込んだ。



 ※



 日も暮れてスラムに長い影が出来る時間。


 スラムのマーケットへ行く道から外れた廃墟郡の中でも比較的痛みの少ない建物が複数ある。


 手入れや補修をしてまた使えるようにした建物が複数並んでおり複数の明りを灯す魔道具が起動している。


 その中の一つ、地下へと続く階段がある建物に足を進める。


 階段を下りて右に曲がると、そこには先日と同じく大男が扉の前に座り込んでいた。


 確かコンザという名前だった。


 コンザは此方に気が付くと立ち上がり、手を揉みながらこちらへと近づいてくる。


 「いらっしゃいませ、鑑定は終わっております。中へどうぞ」


 先日来た時とは明らかに態度が違うが特に何かを言ったりはしなかった、コンザの後を付いていき中へと入る。



 中に入ると以前と同じように両端の棚に所狭しと魔道具が置かれている。


 コンザの後を歩き、先日通った通路を歩いていくと先日通された殺風景な部屋に案内される。


 部屋に入ると先日置いていった大量の魔道具が眼に入る、乱雑に床に置かれた魔道具の中心に、椅子に座り背もたれに体重を掛けながら天井を見ている鑑定屋が眼に入った。


 


 鑑定屋はしばらくの間同じ姿勢で天井を見ていたが、此方に気が付くと反動をつけて勢い良く立ち上がる。


 立ち上がると同時に鑑定屋の長い髪が揺れる。良く見れば美人なのだが猫背で目の下に隈を作っているのでそんな印象は消えている。



 「いらっしゃい、鑑定は済んでいるよ」


 そういいながら鑑定屋は複数の紙を渡してきた。


 そこには個々の魔道具の名前、効果、使い方が記されている。



 「本当に一日で全て調べたのか」


 「特急料金だからね、私の実力があればこの量を調べるくらい簡単だよ」


 そういいながら鑑定屋は欠伸をする。



 「何か気になる事はあるかい?あるなら今ここで言ってくれ、後日質問に来ても答えられないからね」



 「アフターサービスは無いのか」


 「ないよ、秘密保持の為に控えだって取っていない。そして後日来られても私はおそらく鑑定内容を覚えていないだろう。また調べるとしたら別料金だ」



 『岩鼠のイヤリング』で心を読む、嘘は言っていない。



 渡された紙を眺めながら一番近くにあった魔道具を手に取る。



 手に取ったのは羽根の形をした金属性の魔道具だ。


 この魔道具を起動した状態で高いところから落ちると怪我なく着地ができるらしい。


 そう渡された紙に書いてある。




 「当たり前だけど魔道具を発動しないでね、ここで発動すると大変なことになる物がいくつかあるから」



 「……分かっている、そのくらいの分別はある」



 床に広がる大量の魔道具と手元の紙を着き合わせ効果を把握する、しばらくの間はその繰り返しだった。



 危険な魔道具もあれば日用品として使う魔道具もある。


 何に使うか用途の分からない魔道具も沢山合った。


 一つずつ効果を確認しながら『神の収納箱』へと仕舞い込んでいく。


 その様子を鑑定屋が眠そうな眼で眺めているのが印象的だった。

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