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異世界の透明人間~魔道具を駆使する暗殺者~  作者: 城戸一
八章 魔道具を駆使する暗殺者
71/88

71 人の心

また週に1回か2回ペースで更新していきます。

 骨だけになった遺体をハンマーで砕き骨壷に入れる。



 遺骨は共同墓地に埋葬することにした。



 最初は個別にストーク君の墓を作ろうとも思った。


 だがハウゼントゥルムという反社会勢力に所属していた以上、大なり小なり人から恨みを買っている。


 個人の墓を作ってそこを荒らされるよりは人目のある共同墓地に埋葬した方がいいと思ったのだ。


 



 事実ストーク君の遺体の埋葬手続きをしている間、ハウゼントゥルムの人間など死んで当然と思っている人物が多数いた。


 死の直前譲ってもらった魔道具『岩鼠のイヤリング』が人の心を読み取って伝えてくる。



 今も何処の誰かも分からない心の声が頭に直接響いている。





 人生を悲観に暮れている者。


 根拠のない怒りに支配されている者


 人を陥れて喜んでいる者。





 悪意に塗れた人の心を聞いていると此方の心も引きずられそうになる。


 だが『岩鼠のイヤリング』は外さない。



 『岩鼠のイヤリング』は死の直前ストーク君が俺に渡してくれた魔道具だ。


 その行動には何か意味があったはずだ、俺にこの魔道具を渡すことで何かを成そうとしたはずなのだ。


 だから『岩鼠のイヤリング』を使い続けることにした。









 砕いた骨を入れた骨箱を両手で抱えながら歩く。


 この後は共同墓地に向かう予定だった。


 墓地の管理人にいくらかの硬貨を渡して遺骨を埋葬してもらう。




 日はまだ中天を差し掛かったばかりだった。


 強い日差しに目を細め一瞬足を止める。


 すると後ろから誰かが歩いてくる気配があった。


 後方から現れた複数の黒い服を纏った者達がこちらを追い越していく。


 各々が手に清掃道具を携えゆったりとした足取りで敷地を出ようとしていた。




 掃除屋だ。




 スラムで遺体の処理などをする集団。彼らは遺体を見つけると焼いて埋葬をする。



 掃除屋がいる限りスラムに長時間遺体が放置されることはない。


 ストーク君の遺体の焼却を行ってくれたのも彼らだ。


 もちろん慈善事業でやっている訳ではない、彼らは死体から遺品を剥ぎ取って自分の物とするのだ。


 遺族からの報酬が期待できない以上遺品を剥ぎ取るのは問題ない、むしろ遺体を率先して埋葬してくれるので正当な報酬だとも思う。







 だが、今回はストーク君の葬儀代として大量の金貨を掃除屋達に渡していた。


 それはストーク君に対する供養のつもりでもあったし、葬儀をつつがなく行って欲しいという思いからだった。


 遺品は全て此方に渡すよう契約している。


 だから掃除屋の一人から届いた思念を見逃すことは出来なかった。



 (いい物を手に入れただと?)



 そんな思念を『岩鼠のイヤリング』が拾っていた。


 すれ違い様に一人、背が一際高い人物の胸ポケットが膨らんでいたのを見逃さなかった。


 ポケットに何かを入れているのだ、そしてそれは先程火葬したときにストーク君の体内から出てきたものだ。


 掃除屋の前に立ちふさがり声を掛ける。




 「そこの人、ちょっといい?」



 「ん?なんだ?」



 こちらを見て掃除屋達が足を止める。


 瞬間、有無を言わさず掃除屋のポケットに手を突っ込んだ。


 取り上げたのは何やら模様が付いた銀色のスイッチ。


 掃除屋が何かを言う前に大声を上げる。



 「ありがとうございます!遺品を届けてくれたんですね!」


 相手がこの魔道具らしきものを無断で盗もうとしたのは分かっている。


 糾弾しても良かったが今は余計なトラブルを起こす気にはならなかった。


 だから相手の面子を潰さないようにこう言ったのだ。



 「助かりました!少ないですがこれはお礼です」


 そう言って背の高い掃除屋に数枚の金貨を握らせる、相手が何かを言う前に大声で畳み掛ける。




 「ではまた何かあったらお願いします!」


 そう言って掃除屋達に背を向けその場から離れた。



 『岩鼠のイヤリング』で心を読むと、突然の出来事に掃除屋は混乱していた。


 早足でその場を去る俺に、掃除屋達が何か言ってくることはなかった。

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