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異世界の透明人間~魔道具を駆使する暗殺者~  作者: 城戸一
七章 ストーク・シュテット
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68 見えない協力者

 時々立ち止まっては振り返り、『暴風竜の大剣』を振りぬく。


 そうして一度は追っ手を撒くことはできた。


 だが何かの魔道具を使っているのかこちらの位置を特定しすぐに追っ手が現れる。


 「きりが無い」



 『暴風竜の大剣』の魔石は大型だ、中々手に入らない魔石の種類ではある。このまま使い続ければ魔石が使い物にならなくなる可能性がある。


 大型の魔石は『神の収納箱』に何個か保存してあるが無限という訳ではない。このまま逃げ回ってもジリ貧だ。


 いっそのこと街まで逃げてしまおうか。


 そう思い街へ続く道に進行方向を変える、だが逃げようとした先には既にハウゼントゥルムの構成員が待ち伏せしているのが見えた、直ぐに来た道を引き返す。





 逃げ回っていると岩鼠のイヤリングが構成員の思念を拾った。

どうやらケルドとワーディルの部下だけではなく、ヴァルドとアルジョンの部下も混ざっているようだった。



 ハウゼントゥルムの幹部四人が俺の命を狙っている。


 


 ハウゼントゥルムの幹部は皆が自分勝手だ、他の幹部と協力して何かしようとする奴らではない。


 その幹部達が今回に限って意思統一している、皆が団結して俺の事を殺そうとしているのだ、あまりの絶望的な状況に思わず笑ってしまう。


 (必ず復讐してやる)


 そう心に誓いながらスラムを逃げ回る。



 ビルの陰から差し込む夕日が目障りだった、西日が目に入り思わず目を細める。




 どう逃げ回っても街へ行くことは出来なかった、街へ続く道を進もうとすると必ず先回りされており進めない。


 いっそのこと待ち伏せしている構成員を皆殺しにして突破しようかと思った。


 (そうするか?このまま逃げ回ってもこの局面を打破できるとは思えない)



 街へ続く道にいる複数の構成員、そいつらに向かって『暴風竜の大剣』を振りぬいた、先頭にいた構成員の何人かはその一撃で絶命する。



 「いたぞ!ストークだ!」


 「ここで殺せ!絶対に街へは行かせるな!」




 構成員達は目の前で細切れになった人間がいるのにこちらに突っ込んでくる。


 (こいつら死ぬのが怖くないのか?)


 だが近くで構成員の顔をみるとそうでは無い事に気が付いた。


 


 良く見ればどいつも顔が赤い、しかし酔っ払っているという訳ではなさそうだ。


 なんらかの薬、もしくは精神に働きかける魔道具の影響下にあるのかもしれない。


 こうなると捨て身で襲い掛かってくる奴がいるだろう。


 『守りの護符』で防げる攻撃には限界がある、やはり強行突破は無理だ。


 来た道を引き返す、だが『岩鼠のイヤリング』がまた誰かの思念を拾った。


 このままでは挟み撃ちになる、即座に逃げ道を変更する。


 だが何度も逃げ道を塞がれ、人が居ない道を選んは逃げる。


 何度もそれを繰り返す。


 どうにも誘導されているようで気分が悪い。




 そうしてたどり着いたの先はビル壁に囲まれた場所だった。


 ビルの隙間は人が通れるような広さは無い。


 行き止まりだ。


 後ろからは構成員の怒号が響き渡っている、『岩鼠のイヤリング』を使うまでも無く目視で確認できた。



 逃げ道はもう無い。



 (ここで迎え撃つしかない)


 構成員の数も無限ではない、全員殺していけばいずれ道は開ける。


 正面突破とは違ってここでは待ちの戦いが出来る、正面から来る攻撃を避ければいいだけだ。



 念のため『神の収納箱』から魔石を取り出し『暴風竜の大剣』に新しく装着した、これでしばらくは持つ。




 「ついに追い詰めたぞ!」


 「散々逃げ回りやがって!覚悟しろよ!」



 目を血走らせながら此方に向かってくる構成員に『暴風竜の大剣』の一撃を叩き込む。


 前に居た数名が細切れになったが残りの構成員は怯まずこちらに向かってくる。


 向かってきた構成員を『暴風竜の大剣』を振り下ろし絶命させる。



 『暴風竜の大剣』の地の刃で人を切ったのは初めてかもしれない。



 その後も襲い掛かってくる構成員を大剣から飛ばす風の刃で仕留めていく。




 だが後ろに控えている構成員が減ることはない、それどころかどんどん人が増えている。


 足元には無数の構成員の死体が散らばり動きにくくもなってきた。





 そしてついに構成員の一人が風の刃を潜り抜け此方の首元目掛けてナイフを突き出してきた。


 (まずい、捌ききれない!)



 だがその刃が此方に届く事は無かった。


 あと少しで此方に刃が届くという所で急に構成員が倒れこんだのだ。




 これ幸いとすぐに大剣を振り下ろしトドメを刺す。



 そして再び襲い掛かってくる集団に風の刃を飛ばそうとしたとき、何の前触れも無く一人の首が転がり落ちたのだ。


 


 (何だ?何かがおかしい)


 襲い掛かってくる構成員を捌きながら考える。



 急に倒れたりするのは運が良かったと考えることも出来る、だが首がいきなり落ちるのはどういうことだ?



 不審に思いながら『暴風竜の大剣』を振り回す、そうしていると『岩鼠のイヤリング』が誰かの思念を拾った。


 この場所に追い込まれてからまともに思念を拾ったりはしていなかった、その為気が付くのが遅れた。


 皆が俺を殺そうとする中で一人、俺の事を助けようとしている者がいる。


 (誰の思念だ?)



 イヤリングの効果が届く範囲内にいるはずだ、だが目の前には俺を殺そうとするハウゼントゥルムの構成員しかいない。



 (見えない協力者?)


 そうして思い出す、先程古い知り合いと再開したことを。





 (まさか付いてきていたのか?)



 スラムで汚泥を啜って生きていた頃に一緒に行動していた昔なじみ。


 フードの付いたローブを纏い、顔を包帯で隠しながら暮らす臆病な子供だった。


 そして何より特徴的だったのはその姿が見えないという事だ。

 


 本人は隠し通せていると思っていたようだが俺には始めて出合った時から分かっていた。




 (うまく利用すればこの局面を切り抜けられるのではないか?)


 ちょうど構成員達はこちらへの突撃を一度やめていた。



 姿を隠している人物に声を掛けようとしたその時、後ろで控えていた構成員を掻き分け前に出てくる人物が目に入った。


 その人物は黒いスーツを着ている、腹が出ておりスーツの一部分のボタンが引っ張られている。


 全ての指に指輪を嵌め、右手には魔石の付いた白い杖を持っていた。




 「いい加減諦めたらどうだストーク」




 ハウゼントゥルムの幹部の一人、ケルドがそこにいた。

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