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61 再会と出会い

 カイネル達は黒角族に任せる事にした、街の憲兵に伝があるそうで引き取ってもらうらしい。


 寝床で横になり『怪傑のネックレス』を眺める。


 思い出すのは先程分かれた少女の事。

 いい魔道具を譲ってもらった、この魔道具があれば危険なスラムで自衛する力が手に入る。


 いままで逃げるか隠れるかという選択肢しかなかったがこれで戦うという選択肢が増えた。


 あの少女は街を出ると言っていた、街の外は危険だ、好戦的な魔物に盗賊団、幼い子供が一人で出ていい場所ではない。


 さすがにそれを知らないという事はないだろう、冒険者でも雇っていれば安心だ。


 そういえば名前すら聞いていなかった。

 まぁもう会う事も無いだろう、一時の出会いだったが幸せに暮らして欲しい。



 そう思いながら首から提げている『怪傑のネックレス』弄り回す。


 すると寝床に続く階段から人が降りてくる音がした。


 フォールゥ達だろうか、それにしては足取りが荒い、フォールゥ達だったらこちらを驚かさないよう静かに降りて来る。


 その足音はどんどん寝床に近づいてくる、これは久しぶりに物取りが来たのではないだろうか。


 以前は下へ続く階段を見つけ、この辺りを探索するものが稀にいた。


 だが最近はフォールゥ達が見張っているのか他人がここに立ち寄ることは無くなっていた。



 フォールゥ達は先程捉えたゴロツキ達を引き渡すといってこの場を離れている、これはもしかすると本当に物取りかもしれない。


 『怪傑のネックレス』を起動する、以前だったら『霧の小型灯』を使い完全に姿を消して観察するだけに留めただろう。


 だが今は違う、敵を撃退する力があるのだ。


 だから服は脱がなかったし『霧の小型灯』も使わなかった。


 階段を降りる音はどんどん大きくなってくる、そうして現れたのは一人の青年だった。


 高そうな服を着ている、少なくともスラム暮らしではなさそうだった。

 耳にはイヤリングをつけ、腕にはジャラジャラと鎖のアクセサリーを身につけている。


 「よおクロ、久しぶりだな」


 見覚えは無かった、少なくとも最近会った人物ではないだろう。


 だがふと思いなおす、彼の目つきに見覚えがあったからだ。


 昔スラムに来たばかりの頃、右も左も分からなかった僕にスラムでの生き方を教えてくれた友達がいた。

 その友達は去っていったが、今でも大切な思い出として心に残っている。


 子供達をまとめてスラムを闊歩していた友人。憧れでもあり目標でもあった。


 「ストーク君?」



 ※



 【チェス視点】



 チェスは大量の魔石を背負って街を後にした。


 目的は別の街に持って行き売却することだ。


 本当は商売の事など分からなかった、分かっていたらスラムで窃盗などやらなかった。


 この魔石の転売は亡くなった両親が話していたことを覚えていたのだ。


 この街で魔石を買い取り、別の街へ持って行けばそれだけで利益が出るといっていた。


 その言葉を思い出してスラムの商業地区で大量の魔石を買いあさり、街を出る事にしたのだ。


 荷物を運ぶだけなら私でも出来ると。


 だがその考えが甘いことをすぐに思い知らされる。



 すぐに日が暮れて夜になった、あたりは一面の闇、数歩先も見えないくらいの漆黒だった。


 耳を澄ませば遠くで獣が鳴く声が聞こえる。


 人を雇えば金がかかる、だから護衛は雇わなかった。


 冒険者を信用できなかったという理由もあるが、節約したいという思いの方が強かった。


 だから一人で街を出た。


 そうしてそれが失敗だったと今実感している。


 怖い。


 こんな暗闇の中で一人取り残されるのが怖いのだ。



 また獣の鳴声がした、もう嫌だ、そう思い顔を伏せる。


 だがすぐに顔を上げる、獣の鳴声がすぐ近くから聞こえてきたからだ。



 何かがガサガサと動いている、暗くて良く見えないが複数の場所から音がした。


 そうして現れたのは闇夜に赤い目を輝かせている狼だった。


 暗闇の中その目だけが輝いており、その生き物の存在を際立たせていた。


 現れたのは一匹だけではない、複数の獣が近寄ってくる。


 その数は一匹また一匹とどんどん増えていく。


 その口からは涎が垂れ、こちらを何匹もの獣が威嚇していた。



 逃げるか?どうやって?


 走って逃げたって追いつかれる。


 戦うとしても武器もない、そもそもこんな人の背よりも大きい魔物に勝てる分けが無い。


 ならどうする?


 どうしたらいい?


 答えは出なかった、ただこのあと自分がどうなるかだけは分かった。


 いやだ!死にたくない。


 頭を両手で押さえ込み丸くなる。


 目の前の現実を受け入れないように下を向いた。


 痛いのは嫌だ、耳に届く獣の唸り声は近くなってくる。


 もうだめだ、そう思った時、周囲が明るくなった。


 何が起こったのか、確認するため顔を上げる。


 見れば後方から光の柱が通り過ぎていった。


 


 その光が通った地面は抉れている、その直線状にいた魔物は上半身を失くしていた。


 誰かが助けてくれたのだろうか、そう思い振り返る。


 そこにいたのは人ではなかった。



 足は四本で目は一つ、背中から飛び出た丸い砲台のような物が白い煙を上げている。


 



 「人間、取引をしよう」


 その謎の物体はこちらに近づきながら人の言葉を喋った。

 何が起こったか分からず、呆然とその動く物体を観察する。


 そいつは赤い瞳を輝かせながら、胴の部分を一回転させこちらを見た。


 「お前を守る、だから魔石よこせ」


 四本足の動く機械が、目の前の魔物を殲滅していた。

ここまでお読み頂き有難うございました。

七章は完成してから投稿します、しばらくお待ちください。


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