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60 曲がる剣

 カイネルを周りにいた黒角族達が押さえようとする。

 だが男は黒角族をするりと交わしながら前進してきた。

 すれ違い様に一太刀入れている。


 そうして黒角族の包囲を抜けて最短距離で僕の前まで現れた。

 振りかぶっている細長い剣を振り下ろそうとしている。


 「クロムウェル様!」


 フォールゥが金切り声を上げているが無視をして後方へと飛び、屋根の上に着地した。

 『怪傑のネックレス』は僕の身体能力を底上げしている。

 男の動きは素早かったが今の僕を捉えられる程ではない。


 しかし今の一撃に違和感があった、一瞬剣の軌道が変わったかと思えば振りかぶった剣が目の前まで伸びてきた様に見えたのだ。

 あの剣は魔道具なのかもしれない。


 屋根の上に降り立ち襲ってきた男を観察する。

 ふらふらと揺れているが体調が悪いわけではなさそうだ、あの独特のリズムから繰り出される剣の一撃は鍔ぜり合うのは難しいだろう。

 斬って捨てるタイプの戦い方だ。


 今も黒角族達が男を押さえようと動いているが捕まる気配は無い。

 フォールゥなどは顔を真っ赤にして男を捕らえようとしている。

 動きが単調だから簡単に見切られている。


 あれではやられる。


 見殺しにするのも気分が悪いから屋根から降り、男の攻撃が届きそうな所まで移動する。


 それを見た男は黒角族の合間を抜けてこちらに寄ってきた。


 今度は逃げない、迎え撃つ。

 少し触っただけで能力の底はしれないが『怪傑のネックレス』にはそれが出来るだけの能力がある。


 男はこちらが降りてきたことチャンスと思ったのか笑みを浮かべながら迫ってくる。


 男が剣を振る、体の中心を捉える早い斬撃。

 その斬撃を体を横にし、最小限の動きで交わす。


 だが急に剣の軌道が変わったかと思うとこちらの顔目掛けて剣が伸びてきた。


 「死ね!小僧!」


 剣先は脳天目掛けて延びてくる、だが怪傑のネックレスが一際輝いたかと思うと首を強引に捻り、剣の一撃をかわす。


 カイネルが目を見開き驚いているのが分かる。


 そうして既に抜いていた『深淵狼の短剣』で斬りつける。


 カイネルの剣がまるで蛇のように曲がりくねる、そうして『深淵狼の短剣』での一撃を受けようとした、だが『深淵狼の短剣』は男の長剣を切り裂き、剣先が地面に落ちる。


 そのまま短剣を突き出しカイネルを仕留めようと一歩踏み出す。


 「なんだと!」


 驚きの表情から困惑の表情へ変わったカイネルは、腰に差してあったもう一本の剣を抜き、こちらに切りかかってくる。


 その剣も曲がりくねり、こちらの脳天目掛けて剣の切っ先が迫ってくる。


 まともに打ち合う気は無い、そもそも剣を合わせることすら難しいのだ、わざわざ相手の土俵に上がる必要は無い。


 再び後ろに飛び、屋根の上に着地した。


 「降りて来い小僧!」


 お望みどおり屋根から下りる。

 今度はこちらから切り込んだ。


 『深淵狼の短剣』を振りかぶり男へと迫る。

 男は飄々とした様子でナイフを躱そうとした。


 躱される、そう思った瞬間ナイフの軌道が変わった。

 体を無理やりに動かす感触、それと共に躱される軌道だったナイフでの一撃はまた男の剣を綺麗に引き裂いた。


 「なっ」


 再び男が困惑の表情を浮かべる、体の節々が痛いが効果は絶大だった。。

 これが『怪傑のネックレス』の力なのだろう。

 こちらの意図を読んで最善の動きを持ち主にさせる魔道具。


 剣を失ったカイネルを押さえるのは容易だった、黒角族が四方から飛び掛り男を取り押さえる。


 カイネルは諦めたのか抵抗らしきことはしなかった。

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