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59 魔道具 『怪傑のネックレス』

 「この魔道具どうやって使うの」


 受け取った白金貨を懐に大事そうにしまう少女に問いかける。


 「えっとそれは……」


 分からないのだろうか、様子を見るに使った事すらないのかもしれない。

 ネックレスを改めて観察する。


 

 ネックレスのトップに丸い空洞が空いている。

 その部分を強く押し込むと軽く沈み込んだ。

 ここに魔石をいれればいいのだろうか。


 「誰か魔石を持っていない?」


 そう言うと後ろに控えていた黒角族の一人が自身が持っていた斧から魔石を取り外す。


 「どうぞクロムウェル様、こちらをお使いください」


 そういって魔石を渡してきた。


 「ありがとう、使わせてもらうよ」


 受け取った魔石をペンダントにある空洞に押し込む。

 カチリという音と共に魔石がペンダントに嵌まり込んだ。


 首からネックレスを下げるが特に何かが起きる気配は無い。


 何か発動条件があるはずなのだが。


 そう思いながら先程押し込んだ魔石の部分を軽く押す。

 すると先程よりも魔石が深くペンダントの奥へと沈み込んでいく。


 そうして体に変化が訪れた。


 体が軽い。


 一歩だけ足を踏み出してみる。

 踏み込んだその一歩がとても力強いのだ。


 以前『風神の腕輪』を装備して時のような力強さがある。


 そうして軽い浮遊感も合った。

 ためしにその場で飛び跳ねてみる。


 すると軽く付近の屋根を飛び越えるくらいの勢いがあった。


 そうして下りるときにはフワッとした浮遊感と共に地面に下りる。

 その上、下りたときに音すら立てない。


 ためしに地面を思い切り蹴ってみた、音が全くしない。


 その後も色々な動作を試してみる、とにかく動作の一つ一つが俊敏なのだ。


 持っていたナイフで軽く素振りをしてみる。

 自分の動きなのに目で追えない、気がついたらナイフを振り抜いていた。


 以前にみたキアラの剣速より速いかもしれない。



 確かにこれを使えば確かに暗殺くらい簡単にこなせる気がする。

 何が何でも手に入れようとしていたゴロツキ達の気持ちも分かる。


 「このネックレス、名前はなんていうの」


 「分からない、ブリッグはそれを聞く前に亡くなったから」


 分からないか、でも名前なんてどうでもいいか。

 もし無理に名前を付けようとするならば怪傑と呼ばれた人物が使っていたのだから『怪傑のネックレス』でいい。



 その後もネックレスがどんな効果を生み出すか色々試してみる。

 腕を振ったり飛び跳ねたり、走ってみたり。


 それを見ていたゴロツキの一人が声を上げる。


 「やっぱり怪傑の使ってた魔道具じゃねーか!おい小僧!それを渡せ!」



 まだ言うか。

 渡すわけないだろう、いくら払ったと思っているんだ。



 「だいたいこんな物手に入れて何に使うんだ、暗殺でもするのか?」


 「ハウゼントゥルム相手に必要なんだよ!あいつら最近どんどん勢力を広げている!幹部の奴らを暗殺でもしなければこの勢いは止まらない!」



 ハウゼントゥルム?

 最近何処かでその名前を聞いた気がする、何処だっただろうか。


 説明を求めようとフォールゥ達の方を見るがどうも皆一様に気まずそうにしている。



 「は、ハウゼントゥルム」


 少女に居たってはその名を聞いた途端顔を真っ青にしている。


 そんなに凄い組織なのだろうか。



 色々試してネックレスの効果はだいたい分かった。

 もうこの場を後にしていいかもしれない。



 そうして歩き出そうとすると見知らぬ人物が少し離れた位置に陣取っているのが見えた。


「仲間が世話になっているようだな」


 男は細長い長剣を抜いており、剣を持っていない左手はだらりと下げながらゆらゆらと揺れていた。


 「カイネル!いいところに来た!」


 捉えた男の一人が長剣を持った男をみてそう叫ぶ。

 

 「そこの子供、ネックレスを渡してもらおうか」


 そう言ってカイネルと呼ばれた男は剣を振りかぶりながらこちらに向かって突っ込んできた。

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